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ミンコフスキーの不等式を1から証明する

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Lp空間が距離空間の公理(三角不等式)を満たすことを示すのに必要な不等式について説明する。

ミンコフスキーの不等式とは

ミンコフスキーの不等式

1p<, x,yRnについて
||x||p:=(k=1n|xk|p)1p, ||y||p:=(k=1n|yk|p)1p
とするとき
||x+y||p||x||p+||y||p
が成り立つ。

見ての通りこれは

三角不等式

任意の実数x,yについて
|x+y||x|+|y|
が成り立つ。

の一般化となっている。
実際n=1, p=2とすれば上記の三角不等式が得られる。

証明

証明は以下の流れで行う。

  1. イェンゼンの不等式の証明
  2. ヤングの不等式の証明
  3. ヘルダーの不等式の証明
  4. ミンコフスキーの不等式の証明

1.イェンゼンの不等式の証明

イェンゼンの不等式

f(x)が凸関数のとき、任意のx1,,xn
λi0,i=1nλi=1を満たす任意のλ1,,λnについて
i=1nλif(xi)f(i=1nλixi)
が成り立つ。

数学的帰納法

(i) n=2のとき、λ1=λ, λ2=1λ (0λ1)とおける。
このときf(x)の凸性より、任意のx1,x2について
λf(x1)+(1λ)f(x2)f(λx1+(1λ)x2)
であり、これは示す不等式のn=2のときそのものである。
よってn=2のとき成立する。
(ii) n=kのとき、イェンゼンの不等式が成立すると仮定する。
i=1k+1λif(xi)=i=1kλif(xi)+λk+1f(xk+1)=Si=1kλiSf(xi)+λk+1f(xk+1)
ただし(0)S=i=1kλi(1)とする。
このときi=1kλiS=1であるから、λ1S,,λkSについて仮定より
Si=1kλiSf(xi)+λk+1f(xk+1)Sf(i=1kλiSxi)+λk+1f(xk+1)
となる。ここで、S+λk+1=k=1k+1λi=1である。
よってf(x)の凸性より、T=i=1kλiSxiとおくと
Sf(i=1kλiSxi)+λk+1f(xk+1)=Sf(T)+λk+1f(xk+1)f(ST+λk+1xk+1)=f(i=1k+1λixi)
よってn=k+1のときも成立する。

2.ヤングの不等式の証明

ヤングの不等式

正の実数a,b1より大きい1p+1q=1を満たす実数p,qについて
app+bqqab
が成り立つ。

イェンゼンの不等式を用いる

f(x)=exとおくと、f(x)=ex>0よりf(x)は凸関数である。
よってイェンゼンの不等式より
f(x)p+f(y)qf(xp+yq)  exp+eyqexpeyq
である。これにおいてx=ploga, y=qlogbとおくと
app+bqqab
とヤングの不等式を得る。

3.ヘルダーの不等式の証明

ヘルダーの不等式

1より大きい実数p,q1p+1q=1を満たすとき
||x||p||y||qk=1n|xk||yk|
が成り立つ。

ヤングの不等式を用いる

|xk|||x||p,|yk|||y||qは正の実数であるから、ヤングの不等式より
|xk|p||x||pp1p+|yk|q||y||qq1q|xk||yk|||x||p||y||q
これをk=1からnまで両辺を足し合わせると
1||x||pp1pk=1n|xk|p+1||y||qq1qk=1n|xk|p1||x||p||y||qk=1n|xk||yk|||x||pp||x||pp1p+||y||qq||y||qq1q1||x||p||y||qk=1n|xk||yk|1=1p+1q1||x||p||y||qk=1n|xk||yk|
||x||p||y||qk=1n|xk||yk|
とヘルダーの不等式を得る。

4.ミンコフスキーの不等式の証明

ミンコフスキーの不等式

1p, x,yRnについて
||x||p:=(k=1n|xk|p)1p, ||y||p:=(k=1n|yk|p)1p
とするとき
||x+y||p||x||p+||y||p
である。

ヘルダーの不等式を用いる

(i) ||x+y||pp1=0のとき
||x+y||p=0||x||p+||y||p
より成り立つ。
(ii) ||x+y||pp10のとき
||x+y||pp=k=1n|xk+yk|p=k=1n|xk+yk||xk+yk|p1()k=1n|xk||xk+yk|p1+k=1n|yk||xk+yk|p1
(三角不等式)
()の第一項は、ヘルダーの不等式より
k=1n|xk||xk+yk|p1||x||p|x+y|p1q (q=pp1)
で抑えられる。また、この右辺は
||x||p|x+y|p1pp1=||x||p{k=1n(|xk+yk|p1)q}1q=||x||p{(k=1n|xk+yk|p)1p}p1=||x||p||x+y||pp1
となる。さらに、()の第二項についても同様に評価できて
k=1n|yk||xk+yk|p1||y||p||x+y||pp1
以上より
||x+y||pp||x||p||x+y||pp1+||y||p||x+y||pp1
両辺を||x+y||pp1(0)で割って
||x+y||p||x||p+||y||p
とミンコフスキーの不等式を得る。

Done!
投稿日:20241113
更新日:20241113
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