本稿では,関数列の一様収束と連続性・有界性に関わる以下の3つの命題を証明する:
簡単のため,本稿で関数といった場合は実数全体を定義域とする実数値関数を意味するものとする.
関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が関数$f$に一様収束するとは,
任意の$\varepsilon>0$に対して,ある$N\in\mathbb{N}$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$および$n\geq N$に対して$|f_n(x)-f(x)|<\varepsilon$
が成り立つことを言う.論理記号で書くと
$\forall\varepsilon>0, \exists N\in\mathbb{N}\ \text{s.t.}\ [\forall x\in\mathbb{R}, \forall n\in\mathbb{N}, |f_n(x)-f(x)|<\varepsilon]$
となる.
関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が関数$f$に一様収束するならば,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に各点収束することを示せ.
関数$f$が$a\in\mathbb{R}$において連続であるとは,
任意の$\varepsilon>0$に対して,ある$\delta>0$が存在して,任意の$x\in(a-\delta, a+\delta)$に対して$|f(x)-f(a)|<\varepsilon$
が成り立つことを言う.論理記号で書くと
$\forall\varepsilon>0, \exists\delta>0\ \text{s.t.}\ [\forall x\in(a-\delta, a+\delta), |f(x)-f(a)|<\varepsilon]$
となる.
また,$f$が任意の$a\in\mathbb{R}$において連続であるとき,$f$は連続であるという.
連続関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が関数$f$に一様収束するならば,$f$は連続である.
任意の$a\in\mathbb{R}$に対して,関数$f$が$a$において連続であることを示す.
$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に一様収束するから,任意の$\varepsilon>0$に対して,ある$N\in\mathbb{N}$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$および$n\geq N$に対して
$$
|f_n(x)-f(x)|<\frac{\varepsilon}{3}
$$
が成り立ち,特に
$$\tag{1}
|f_N(x)-f(x)|<\frac{\varepsilon}{3}
$$
である.さらに,$f_N$は連続であるから,ある$\delta>0$が存在して,任意の$x\in(a-\delta, a+\delta)$に対して
$$\tag{2}
|f_N(x)-f_N(a)|<\frac{\varepsilon}{3}
$$
が成り立つ.以上より,任意の$x\in(a-\delta, a+\delta)$に対して
\begin{eqnarray}
|f(x)-f(a)|
&=&|\{f(x)-f_N(x)\}+\{f_N(x)-f_N(a)\}+\{f_N(a)-f(a)\}| \\
&\leq&|f_N(x)-f(x)|+|f_N(x)-f_N(a)|+|f_N(a)-f(a)| \\
&\overset{(1)}{<}&\frac{\varepsilon}{3}+|f_N(x)-f_N(a)|+\frac{\varepsilon}{3} \\
&\overset{(2)}{<}&\frac{\varepsilon}{3}+\frac{\varepsilon}{3}+\frac{\varepsilon}{3} \\
&=&\varepsilon
\end{eqnarray}
となる.従って,$f$は$a$において連続である.
連続でない関数に各点収束するが,一様収束しない連続関数列の例を挙げよ.
関数$f$が有界であるとは,
ある$M>0$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$に対して$|f(x)|\leq M$
が成り立つことを言う.論理記号で書くと
$\exists M>0\ \text{s.t.}\ [\forall x\in\mathbb{R}, |f(x)|\leq M]$
となる.
三角関数$\sin x, \cos x$は有界であるが,$\tan x$は有界でない.
有界関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が関数$f$に一様収束するならば,$f$は有界関数である.
$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に一様収束するから,特に$\varepsilon=1$に対して,ある$N\in\mathbb{N}$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$および$n\geq N$に対して
$$
|f_n(x)-f(x)|<\varepsilon=1
$$
すなわち
$$
f_n(x)-1< f(x)< f_n(x)+1
$$
が成り立ち,特に
$$\tag{3}
f_N(x)-1< f(x)< f_N(x)+1
$$
である.さらに,$f_N$は有界であるから,ある$M>0$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$に対し
$$
|f_N(x)|\leq M
$$
すなわち
$$\tag{4}
-M\leq f_N(x)\leq M
$$
が成り立つ.$(3)$と$(4)$より,任意の$x\in\mathbb{R}$に対して
$$
-M-1< f(x)< M+1
$$
すなわち
$$
|f(x)|< M+1
$$
となる.従って,$f$は有界である.
有界でない関数に各点収束するが,一様収束しない有界関数列の例を挙げよ.
関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が一様有界であるとは,
ある$M>0$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$および$n\in\mathbb{N}$に対して$|f_n(x)|\leq M$
が成り立つことを言う.論理記号で書くと
$\exists M>0\ \text{s.t.}\ [\forall x\in\mathbb{R}, \forall n\in\mathbb{N}, |f_n(x)|\leq M]$
となる.
一様有界でない有界関数列の例を挙げよ.
有界関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が関数$f$に一様収束するならば,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は一様有界である.
$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に一様収束するから,特に$\varepsilon=1$に対して,ある$N\in\mathbb{N}$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$および$n\geq N$に対して
$$\tag{5}
|f_n(x)-f(x)|<\varepsilon=1
$$
が成り立つ.さらに,$f_n$は有界であるから,各$n\in\mathbb{N}$に対してある$M_n>0$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$に対し
$$\tag{6}
|f_n(x)|\leq M_n
$$
が成り立つ.いま,任意の$x\in\mathbb{R}$および$n\geq N$に対して
\begin{eqnarray}
|f_n(x)|
&=&|\{f_n(x)-f(x)\}+\{f(x)-f_N(x)\}+f_N(x)| \\
&\leq&|f_n(x)-f(x)|+|f_N(x)-f(x)|+|f_N(x)| \\
&\overset{(5)}{<}&1+1+|f_N(x)| \\
&\overset{(6)}{\leq}&2+M_N
\end{eqnarray}
であり,$n=1,2,\cdots,N-1$に対して$(6)$が成り立つことに注意すると,任意の$n\in\mathbb{N}$および$x\in\mathbb{R}$に対して
$$
|f_n(x)|\leq\max\{M_1,M_2,\cdots,M_{N-1},2+M_N\}
$$
となる.従って,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は一様有界である.
任意の$a\in\mathbb{R}$に対して,実数列$\{f_n(a)\}_{n\in\mathbb{N}}$が$f(a)$に収束することを示せばよい.
$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に一様収束するから,
任意の$\varepsilon>0$に対して,ある$N\in\mathbb{N}$が存在して,任意の$x\in\mathbb{R}$および$n\geq N$に対して$|f_n(x)-f(x)|<\varepsilon$
が成り立つ.よって,任意の$\varepsilon>0$に対して上記の$N\in\mathbb{N}$を選ぶことで,
任意の$n\geq N$に対して$|f_n(a)-f(a)|<\varepsilon$
となる.従って,$\{f_n(a)\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f(a)$に収束する.
関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$を
$f_n(x)=
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
nx+1 & \left(x\in\left(-\dfrac{1}{n},0\right)\right) \\
-nx+1 & \left(x\in\left[0,\dfrac{1}{n}\right)\right) \\
0 & \left(x\notin\left(-\dfrac{1}{n},\dfrac{1}{n}\right)\right)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$
で定義する.さらに,関数$f$を
$f(x)=\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
1 & (x=0) \\
0 & (x\neq0)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$
で定義する.このとき,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は連続関数列,$f$は連続でない関数であり,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に各点収束する.実際,任意の$a\in\mathbb{R}$に対して,
となる.しかし,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に一様収束しない.実際,任意の$N\in\mathbb{N}$に対して,$x=\dfrac{1}{2N}, n=N$とすると
$|f_n(x)-f(x)|=\left|f_N\left(\dfrac{1}{2N}\right)-f\left(\dfrac{1}{2N}\right)\right|=\left|-N\cdot\dfrac{1}{2N}+1-0\right|=\dfrac{1}{2}$
となる.
関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$を
$f_n(x)=
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
-n & (x\in(-\infty, -n]) \\
x & (x\in(-n, n)) \\
n & (x\in[n, -\infty))
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$
で定義する.さらに,関数$f$を$f(x)=x$で定義する.このとき,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は有界関数列,$f$は有界でない関数であり,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に各点収束する.実際,任意の$a\in\mathbb{R}$に対して,ある$N\in\mathbb{N}$が存在して,$n\geq N$ならば$a\in(-n,n)$すなわち$f_n(a)=a=f(a)$となる.しかし,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は$f$に一様収束しない.実際,任意の$N\in\mathbb{N}$に対して,$x=N+1, n=N$とすると
$|f_n(x)-f(x)|=|f_N(N+1)-f(N+1)|=|N-(N+1)|=1$
となる.
関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$を$f_n(x)=n\sin x$で定義する.このとき,$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$は有界関数列であるが,一様有界でない.実際,任意の$M>0$に対して,$x=\dfrac{\pi}{2}, n=\min\{m\in\mathbb{N}:m>M\}$とすると
$|f_n(x)|=\left|n\sin\dfrac{\pi}{2}\right|=n>M$
となる.