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東大数理院試過去問解答例(2021B06)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2021B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2021B06

$\mathbb{C}^2$に追いて点$(\pm z,0)$と点$(0,\pm z)$(複号任意)を同一視して得られる商集合$X$に商位相を入れ、$p:\mathbb{C}^2\twoheadrightarrow X$を自然な剰余とする。ここで$X$の開集合$Y:=X\backslash\{p(0,0)\}$を考える。

  1. $Y$の整係数ホモロジー群を求めなさい。
  2. $X$の点$p(0,0)$$\mathbb{R}^4$の開集合と同相な開近傍を持たないことを示しなさい。

以下位相空間$A,B$に対して、$A\simeq B$$A$$B$が同相であること、$A\approx B$$A$$B$がホモトピー同値であることを指す。

  1. まずホモトピー同値$\mathbb{C}^2\backslash\{(0,0)\}\approx S^3$があり、ここから$S^3$の適切な同値関係$\sim$を考えることで、ホモトピー同値$Y\approx S^3/\sim$が得られる。ここで$S^3$に定まった同値関係で同一視されているのは$S^3$に埋め込まれた二つの部分集合$T_1:=\{(x,0)\in S^3\}\simeq S^1$及び$T_2:=\{(0,y)\in S^3\}\simeq S^1$内の点のみである。$T_1\sqcup T_2$の充分小さい中身の詰まったトーラスと同相な近傍を$U$とし、$V:=S^3\backslash(T_1\sqcup T_2)$とおく。このとき$Y=(U/\sim)\cup V$である。このとき$(U/\sim)\cap V\simeq U\cap V\approx T^2\sqcup T^2$及び$(U/\sim)\approx S^1$及び$V\approx T^2$である。以上からMayer-Vietoris完全列
    \begin{array}{cccccc} \to&0&\to&0&\to&H_3(Y,\mathbb{Z})\\ \to&\mathbb{Z}^2&\to &\mathbb{Z}&\to &H_2(Y,\mathbb{Z})\\ \to&\mathbb{Z}^4&\to &\mathbb{Z}^3&\to &H_1(Y,\mathbb{Z})\\ \to &\mathbb{Z}^2&\to &\mathbb{Z}^2&\to &\mathbb{Z}&\to&0 \end{array}
    が得られる。ここで$H_1((U/\sim)\cap V,\mathbb{Z})\to H_1(U/\sim,\mathbb{Z})\oplus H(V,\mathbb{Z})$は適切な基底を取ることで行列
    $$ \begin{pmatrix} 2&0&2&0\\ 1&0&0&1\\ 0&1&1&0\\ \end{pmatrix}  $$
    で表現される。また$H_2((U/\sim)\cap V,\mathbb{Z})\to H(V,\mathbb{Z})$は適切な基底を取ることで行列
    $$ \begin{pmatrix} 1&1\\ \end{pmatrix} $$
    で表現される。以上から
    $$ {\color{red}H_i(Y,\mathbb{Z})\simeq\begin{cases} \mathbb{Z}&(i=0,2,3)\\ \mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}&(i=1)\\ 0&(\text{if else}) \end{cases}} $$
    である。
  2. 背理法で示す。所望の条件を満たす近傍を$U$が取れたとする。$U$を充分小さく取ることで$U$$4$次元単位球体と同相になるように取ることができる。(1)からMayer-Vietoris完全列
    $$ \begin{array}{cccccc} &&&\cdots&\to&H_4(X,\mathbb{Z})\\ \to&\mathbb{Z}&\to&\mathbb{Z}&\to &H_3(X,\mathbb{Z})\\ \to&0&\to&\mathbb{Z}&\to &H_2(X,\mathbb{Z})\\ \to&0&\to&\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}&\to &H_1(X,\mathbb{Z})\\ \to&\mathbb{Z}&\to&\mathbb{Z}^2&\to &\mathbb{Z}&\to &0 \end{array} $$
    が得られる。ここで$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$の生成元は$U\backslash\{p(0,0)\}$上の閉路で代表されるが、このときこの閉路は$X$に於いて一点ホモトープになるから、上記完全列の$1$次の列の完全性(つまり$\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to H_1(X,\mathbb{Z})$の単射性)に反する。よって所望の$U$は存在しない。
投稿日:222
更新日:225

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佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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