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指数級数の部分和\sum1/(3k)!の計算とその一般化

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次の級数を計算することを考えます.
k=01(3k)!=?
指数関数のベキ級数展開
ex=k=0xkk!
から,
k=01k!=e,k=01(2k)!=e+e12=cosh1
が成り立つことは直ちにわかりますが,今回の級数はこれらほど簡単に求められそうにないです.

微分方程式による解法

関数
S(x)=k=0x3k(3k)!
を考えます.S(x)の形がわかれば,x=1とすることで知りたい級数の値が求まります.S(x)を微分してみると
S(x)=k=1x3k1(3k1)!,S(x)=k=1x3k2(3k2)!
となります.なお,項別微分は,微分する前の級数が収束半径(各点xRで絶対収束する級数k=0xk/k!の部分和であることから明らか)なため,正当化されます.そこで,辺々足してみると
S(x)+S(x)+S(x)=1+k=1(x3k2(3k2)!+x3k1(3k1)!+x3k(3k)!)=ex
となりますが,これは解き方がよく知られた常微分方程式の形をしていますね.斉次化した方程式
S(x)+S(x)+S(x)=0
の一般解が,特性方程式1+t+t2=0の根t=ω,ω¯を用いて
S(x)=C1eωx+C2eω¯x
と書けるので,もとの方程式の一般解は,特殊解S(x)=ex/3との和
S(x)=13ex+C1eωx+C2eω¯x
で書けます.次に,初期条件S(0)=1,S(0)=0から連立方程式
13+C1+C2=1,13+C1ω+C2ω¯=0
を作ると,明らかにC1=C2=1/3が解になっています(解と係数の関係ω+ω¯=1に注意).以上から
S(x)=13(ex+eωx+eω¯x)=13(ex+e(1/2+i3/2)x+e(1/2+i3/2)x)=13(ex+2ex/2cos3x2)
なので,とくにx=1として
k=01(3k)!=13(e+2ecos32)
がわかります.

留数定理による解法

別解として,留数定理を使ってやってみます.複素関数
f(z)=e1/zz(1z3)
を考え,各特異点における留数を計算してみましょう.
z=0:真性特異点
f(z)=1z(j=01j!1zj)(k=0(z3)k)=j=0k=01j!z3kj1
と級数に展開すれば,z1の係数はj=3kの部分であり,
Res[f;0]=k=01(3k)!
を得ます.知りたい級数がそのまま出てきましたね.
z3=1z=ei2πk/3=:ωk(k=0,±1):1位の極
分数関数の1位の極における留数の計算法を使って
Res[f;ωk]=limzωke1/z(zz4)=e1/ωk14ωk3=13eωk
(最後の等号はωk3=11/ωk=ωkを使った)
となります.
さて,留数定理によると,以上の留数の和は,4つの特異点をすべて囲むような円周C:|z|=2反時計回りが正)に沿ったfの線積分(を2πiで割ったもの)に等しいです.
線積分の計算は,変数変換により簡単になります.w=1/zとおくことで,積分路はC:|w|=1/2時計回りが正)になり,
Cf(z)dz=Cf(1/w)dzdwdw=Cwew1(1/w)3(1w2)dw=Cw2eww31dw=0
(最後の等号は,被積分関数がCの内側で正則であることから)
と計算できます.
以上から,
k=01(3k)!=k=0,±1Res[f;ωk]=13k=0,±1eωk=13(e+2ecos32)
となり,微分方程式による解法と同様の結果を得ました.

一般化

一般化として,pを3以上の整数,xを実数として
k=0xpk(pk)!
を計算します.上の2つの方法はどちらも一般化できそうですが,p=3のときとほぼ同じ労力で計算できる,留数定理による方法を使うことにします.(微分方程式による方法だと,任意定数を決めるところでp1次方程式を解くことになって大変そうなので,避けました.気の利いた方法を思いついた方は教えてださい!)
x0を固定し,複素関数
f(z)=ex/zz(1zp)
を考えます.各特異点における留数は次のようになります.
z=0:真性特異点
f(z)=1z(j=01j!(x/z)j)(k=0(zp)k)=j=0k=0xjj!zpkj1
より,j=pkの部分を取り出して
Res[f;0]=k=0xpk(pk)!
zp=1z=ei2πk/p=:αk(k=0,,p1):1位の極
Res[f;αk]=limzαkex/z(zzp+1)=ex/αk1(p+1)αkp=1pex/αk
また,円周C:|z|=2(反時計回りが正)に沿った線積分は,w=1/zと変数変換してC:|w|=1/2(時計回りが正)に沿った線積分にすることで
Cf(z)dz=Cf(1/w)dzdwdw=Cwexw1(1/w)p(1w2)dw=Cwp1exwwp1dw=0
となります.よって,留数定理から
k=0xpk(pk)!=k=0p1Res[f;αk]=1pk=0p1ex/αk=1pk=0p1excos2πkpcos(xsin2πkp))
(最後の等号は,オイラーの公式を使って虚部を捨てれば得られます.級数自体が明らかに実数なので,このようなことができます.なお,このことは みかん さんの返信で気づくことができました.)
以下,pの値で場合分けしてもう少し計算することにします.
p=2q1(q2)のとき.1の2q1乗根は1,e±i2πk/(2q1)(k=1,,q1)なので
k=0x(2q1)k((2q1)k)!=12q1(ex+k=1q1(exei2πk/(2q1)+exei2πk/(2q1)))=12q1(ex+2k=1q1excos2πk2q1cos(xsin2πk2q1))
p=2q(q2)のとき.1の2q乗根は±1,e±iπk/q(k=1,,q1)なので
k=0x2qk(2qk)!=12q(ex+ex+k=1q1(exeiπk/q+exeiπk/q))=1q(coshx+k=1q1excosπkqcos(xsinπkq))
p6が偶数のときは,さらに2パターンに分かれそうです.
p=4r+2(r1)のとき.1の4r+2乗根は±1,±e±iπk/(2r+1)(k=1,,r)なので
k=0x(4r+2)k((4r+2)k)!=14r+2(ex+ex+k=1r(exeiπk/(2r+1)+exeiπk/(2r+1)+exeiπk/(2r+1)+exeiπk/(2r+1)))=12r+1(coshx+2k=1rcosh(xcosπk2r+1)cos(xsinπk2r+1))

p=4r(r2)のとき.1の4r乗根は±1,±i,±e±iπk/(2r)(k=1,,r1)なので
k=0x4rk(4rk)!=14r(ex+ex+eix+eix+k=1r1(exeiπk/(2r)+exeiπk/(2r)+exeiπk/(2r)+exeiπk/(2r)))=12r(coshx+cosx+2k=1r1cosh(xcosπk2r)cos(xsinπk2r))

具体例

x=1とし,具体的なpで計算したものを書いておきます.
k=01k!=e
k=01(2k)!=cosh1
k=01(3k)!=13(e+2ecos32)
k=01(4k)!=12(cosh1+cos1)
k=01(5k)!=15(e+2e154cos10254+2e1+54cos10+254)
k=01(6k)!=13(cosh1+2cosh12cos32)
k=01(8k)!=14(cosh1+cos1+2cosh12cos12)
k=01(10k)!=15(cosh1+2cosh1+54cos10254+2cosh1+54cos10+254)

投稿日:2024223
更新日:202433
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