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大学数学基礎解説
文献あり

行列のテンソル積と基底の順序

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概要

r次行列As次行列Bの行列のテンソル積ABについて、このテンソル積を表現行列としてもつ順序基底はなんなのかよくわからなかったので計算した。

前提

線形空間や線形写像のテンソル積や元のテンソル積の計算を実行できる

テンソル積と順序基底

行列のテンソル積

行列のテンソル積

r次行列A=(aij)s次行列B=(bij)に対して、rs次行列ABを次のように定める:

(a11Ba21Ba1rBa21Ba22Ba2rBar1Bar2BarrB)=(a11b11a11b12a11b1sa12b11a1rb1sa11b21a11b22a11b1sa12b21a1rb2sa11bs1a11bs2a11bssa12bs1a1rb2sa21b11a21b12a21b1sa22b11a2rb1sar1bs1ar1bs2ar1bssar2bs1arrbss)
これをABの(行列の)テンソル積という。

2次行列と3次行列とかで実際に書いてみるのをおすすめします。

一般の行列の場合

s1×s2型行列とr1×r2型行列の行列のテンソル積も定義できるはずだけど省略。

ABを表現行列とする順序基底

V,Vを線形空間、(e1,e2,,er)(e1,e2,,es)をそれぞれの順序基底とする。あるV上の線形変換fを一つ考える。その線形写像についてこの順序基底による表現行列をAとする。同じように、V上の線形変換gから表現行列Bを得る。

それぞれの基底のそれぞれの元同士のテンソル積がなす集合{e1e1,e2e1,ere1,e1e2eres}VVはテンソル積VVの基底をなす。また、VV上の線形変換fgを考える。このとき、行列のテンソル積ABを表現行列に持つような基底の順番は何だろうか。

順序基底(e1e1,e1e2,e1es,e2e1eres)による表現行列はABである

計算すればよい。

としたいが、この計算を今後しなくてよいように簡単にメモをしておこう。今それぞれの順序基底と行列は次のような関係になっている。
f(eλ)=Aeλ=a1λe1+a2λe2++arλer=iaiλeig(eλ)=Beλ=b1λe1+b2λe2++bsλes=ibiλei
これを使ってfg(e1e2) を計算してみよう

fg(e1e2)=f(e1)g(e2)$=(iai1ei)(ibi2ei)=iiai1bi2(eiei)=iiai1bi2(eiei)

落ち着いて展開していく、以後eieiを省略して (eiei)と書く。

iiai1bi2(eiei)=a11b12(e1e1)+a11b22(e1e2)++a11bs2(e1es)(i=1)+a21b12(e2e1)+a21b12(e2e2)++a21bs2(e2es)(i=2)+ar1b12(ere1)+as1b22(ere2)++ar1bs2(eres)(i=r)(i=1)(i=2)(i=s)
順序基底((e1e1),(e1e2),,(eres))において(e1e2)は2番目のため、fg(e1,e2)の係数がなすたてベクトルは表現行列で2列目になる。表現行列の2列目の成分を以下に書きだす。

  • (1,2)成分はa11b12
  • (2,2)成分はa11b22
  • (3,2)成分はa11b32
  • (s,2)成分はa11bs2
  • (s+1,2)成分はa21b12
  • (s+2,2)成分はa21b22
  • (rs,2)成分はar1bs2

行列のテンソル積AB=(cλλ)と見比べると、
c12=a11b12 となり一致する。

トライ

順序基底((e1e1),(e2,e1),,(er,es))を考えて
iiai1bi2(eiei)
も書きくだして表現行列がどうなるかを見るのもよいと思う。

最後に

順序がない基底を考えて、その(λ,λ)成分をとるのは写像のように考えればいいじゃないかと思ったのですがそれをやると行列による表示を一つ定めたときとの整合性がよくわからなくなました。その結果、多様体上のベクトル束のテンソル積の共変微分を計算する手が止まりました。というのがこれを書いた背景です。

たぶん、理論的には行列のテンソル積の定義を変えればうまくいくと思いますが、そんなことをすると文献ごとにどちらの順序基底で計算しているかを都度考えることになりそうです。順序をあいまいにしておくのは計算の時に危なさそうです。今回の場合に限るとありえそうな順序付けは次のどちらかになりそうです。

  1. eieiたちのiを先に動かした順序
  2. eieiたちのiを先に動かした順序(上の計算で使った順序)

もし本当にすべての順序を無視して考えると(rs)!個の表示のバリエーションを同一視することになりそうです。計算を実行するときにはrs次行列の(rs)!個のバリエーションから整合性がとれる表示を一つ選べということになり私の頭にはおさまりそうにないです。

参考文献

投稿日:2024427
更新日:2024427
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