ここでは東大数理の修士課程の院試の2015B07の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2015B07
定数をとる。ここで次元トーラス上のベクトル場及び関数を
によって定める。
- なるを全て求めなさい。
- 上で求めたのうち、のに於ける微分が実数でない固有値を持つようなものを全て求めなさい。
- ベクトル場の生成するフローについて、
を計算しなさい。 - フローは不動点以外の周期軌道を持たないことを示しなさい。
- である。
- まず
である。この行列はのとき
であり、のとき
であり、それ以外のときは対角行列である。以上からが虚数を固有値にもつのはのときである。 - 求める値は
であるから、求める値は
である。 - を自然な射影とする。まずをつの部分
に分ける。まずフローの像はのいずれかに含まれている。ここでこれらの集合の境界上では不動点以外の周期軌道を持たないから、以下の内部に不動点以外の周期軌道が存在しないことを示せば良い。まずに於いては全ての点では非正であり、に於いては非負である。一方はに於いては非負、に於いては非正であり、これがになるのはのときに限る。以上からのいずれかの内部に存在する全ての点についてはについて狭義単調減少である。よってが以外の周期軌道を持たない。以上からフローは不動点以外の周期軌道を持たない。