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東大数理院試過去問解答例(2022B04)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2022B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2022B04

$2$変数関数体$F=\mathbb{F}_p(x,y)$及びその部分体
$$ K=\mathbb{F}_p(x^p-x,x^{p-1}y^p-y) $$
をとり、$F$$K$上のGalois閉包を$L$とおく。
(1) 拡大次数$[F:K]$を求めなさい
(2) 拡大次数$[L:K]$を求めなさい
(3) $L/K$の部分体$E$で、$[E:K]=p$かつ$F\nsubseteq E$なるものの個数を求めなさい。

  1. まず$x$$K$-係数多項式$T^p-T-(x^p-x)$の根であり、この多項式の根は$x+a$($a\in\mathbb{F}_p$)で尽くされている。また$K$$y=0$を代入すると$x^p-x$で生成されるような有理式からなっているから$x\notin K$であることと合わせて$[K(x):K]=p$を得る。次に$K(x)=\mathbb{F}_p(x,y^p-\frac{y}{x^{p-1}})$$y$
    $$ f=T^p-\frac{1}{x^{p-1}}T-(y^p-\frac{y}{x^{p-1}}) $$
    の根であり、その根は$y+\frac{a}{x}$($a\in\mathbb{F}_p$)で尽くされる。先ほどと同様の議論を$x=1$について行うことで$y$$K(x)$に含まれないことがわかるから$[F:K(x)]=p$である。以上から$[F:K]={\color{red}p^2}$が得られる。
  2. ここで多項式
    $$ F_i=T^p-\frac{1}{(x+i)^{p-1}}T-\frac{x^{p-1}y^p-y}{(x+i)^{p-1}} $$
    を考える。ここで多項式$T^p-T=(x^{p-1}y^p-y)$の根を$\alpha$とすると、多項式$F_i$の根は
    $$ T=\frac{xy+i\alpha}{x+i} $$
    である。ここで$L$$K$上の多項式
    $$ F=\prod_{i=0}^{p-1}F_i $$
    の最小分解体であるから、$L= K(x,y,\alpha)$である。よって$[L:K]={\color{red}p^3}$がわかる。
  3. $G$の元は
    $$ \sigma_{i,j,k}=\left(\begin{array}{ccc} x&\mapsto& x+i\\ y&\mapsto& \frac{xy+i\alpha}{x+i}+\frac{j}{x+i}\\ \alpha&\mapsto& j+\alpha \end{array}\right) $$
    の型をしている。特にこの群は全ての元の位数が$p$である。ここで$K$$\sigma_{0,0,1}$で生成される部分群$H$の固定体であるから、これを含まない位数$p^2$の部分群$S$の個数を考えれば良い。
    ここで$\sigma_{1,0,0}$で生成される部分群を$N_1$とおき、$\sigma_{0,1,0}$で生成される部分群を$N_2$とおく。この中心$C(G)$は(非可換群の中心による剰余は巡回群にならないことを考慮すると)$N_2$である。ここで位数$p^2$の部分群$S$$C(G)$を含まないとすると、このとき$G$$S$$C(G)$で生成されるが、これは$G$が非可換であることに矛盾する。よって$S$$N_2$を部分群に持つ。よって$G$の位数$p^2$の部分群は
    $$ \frac{p^3-p}{p^2-p}=p+1 $$
    個である。ここで$H$$C(G)$との合成によって生成する群の分を引くことで条件を満たす群$S$${\color{red}p}$個であることがわかる。
投稿日:20231017

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投稿者

佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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