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大学数学基礎解説
文献あり

デデキント環のイデアルの大きさと円周

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整数の中で$3$の倍数はどれくらいたくさんあるでしょうか。

$\mathbb{Z}$$3\mathbb{Z}$は濃度としては等しいですが、$3\mathbb{Z}$$\mathbb{Z}$$\dfrac{1}{3}$を占めると考えるのも自然なように思えます。その逆数$3$は剰余環$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$の位数になっています。

この発想を一般化してデデキント環におけるイデアル$\mathfrak{p}^n$の大きさを見てみましょう。$\mathbb{R}^2$におけるある図形と結びつけると、不思議なことにいい感じになります。

$\mathfrak{p}$進付値と「同心円モデル」

$\mathfrak{p}$進付値の入ったデデキント環を「同心円の集まり」として眺めてみましょう。

設定

$A$をデデキント環、$\mathfrak p$$A$$(0)$でない素イデアルとします。
さらに、1の仮定1.1.2にならって$A$の商体の標数は$0$とし、$(0)$でない任意のイデアル$I\subset A$に対して$A/I$は有限集合とします。

この状況下で、$q=|A/\mathfrak p|$とおき、$A$$\mathfrak p$進付値を

$|x|_{\mathfrak p}=q^{-\operatorname{ord}_{\mathfrak p}(x)}$

で定めます。ただし$|0|_{\mathfrak{p}}=0$と定めます。

もしあなたがデデキント環を知らなければ、$A=\mathbb{Z}$$\mathfrak{p}=(p)\quad$($p$は素数)とし、

$\operatorname{ord}_{\mathfrak p}(k)=$($k$の素因数分解に現れる$p$の個数)として読み続けても大丈夫です。

このとき$q=|\mathbb{Z}/(p)|=p$であり、$|k|_{\mathfrak p}=p^{-\operatorname{ord}_{\mathfrak p}(k)}$となります。

$k$$p$で割ることができる回数が多いほど、$|k|_{\mathfrak{p}}$は小さくなります。ちなみに$|k|_{\mathfrak{p}}$は特殊な絶対値のようなものと思っていいです。


半径$q^{-m}$の円として見る

整数$m\ge0$に対して
$ S_m=\{x\in A\mid |x|_{\mathfrak p}=q^{-m}\} $
とおきます。これはある意味、$0$を中心とした円ですね。
デデキント環の理論により、
$ \mathfrak p^n = \{x\in A\mid \operatorname{ord}_{\mathfrak p}(x)\ge n\}\cup\{0\} $
なので、
$ \mathfrak p^n = \displaystyle\bigcup_{m=n}^{\infty}S_m\cup\{0\} $
となります。
特に$A=\displaystyle\bigcup_{m=0}^{\infty}S_m\cup\{0\} $なので、$A$全体は半径が$1,q^{-1},q^{-2},...$の円を集めたもの(および$\{0\}$)になっています。
!FORMULA[48][36647][0]のイメージ $A$のイメージ


$\mathbb R^2$で模型を作る

そこで、$\mathbb R^2$の中に$S_m$に対応する図形
$ T_m=\{x\in\mathbb R^2\mid \|x\|=q^{-m}\} $
を考えます。これは半径$q^{-m}$の円周です。
さらに
$ D_n=\bigcup_{m=n}^{\infty}T_m\cup\{0\} $
とおきます。
これは原点へ向かって縮んでいく無限個の同心円です。

$S_m$$T_m$$\mathfrak{p}^n$$D_m$がそれぞれ対応します。しかしこの対応には幾何学的に厳密な意味があるわけではないことに注意が要ります。ちょっとした遊び心で、あくまでも模型として$\mathbb{R}^2$内の図形を考えています。
上の図1も、$A$の要素の位置関係を正確に表現したものではありません。


円周長を計算する

さて、$D_n$に含まれる円周の長さの総和を$l_n$とします。($\{0\}$の長さは0としましょう。)
すると
$ l_n = \displaystyle\sum_{m=n}^{\infty}2\pi q^{-m} $
です。
これは等比級数の和なので
$ l_n = 2\pi\dfrac{q^{-n}}{1-q^{-1}} $
となります。
特に
$ l_0 = 2\pi\dfrac1{1-q^{-1}} $
です。
したがって
$ \dfrac{l_n}{l_0} = \dfrac{1}{q^n} $
となります。


2つの割合の一致

今、デデキント環の理論により

$ |A/\mathfrak p^n|=q^n $

です(1命題1.8.6(2))。

なので、$\mathfrak{p}^n$$A$の中で$\dfrac{1}{q^n}$の割合を占めると思うことができます。

ここでは次のように考えました。

$M$は有限可換群で$N$はその部分群とする。このときラグランジュの定理により$N$$M$に占める割合は$\dfrac{|N|}{|M|}=\dfrac{1}{|M/N|}$となります。

この議論を参考にして、$\mathfrak{p}^n$$A$に占める割合を$\dfrac{1}{|A/\mathfrak{p}^n|}$と思うことにします。

一方、上の円周模型において、$A$に対応する図形$D_0$の長さが$l_0$で、$\mathfrak{p}^n$に対応する図形$D_n$の長さが$l_n$でした。先ほど見たように
$ \dfrac{l_n}{l_0} = \dfrac1{q^n} $
なので、これは$\mathfrak{p}^n$$A$の中で占める割合とぴったり一致しています!

おわりに

デデキント環$A$の構造をうまく$\mathbb{R}^2$の図形に対応させることで、$\mathfrak{p}^n$$A$に占める割合が円周の長さの割合に一致することを見ました。これはまったくの偶然という気がしますが、面白いですね。

ところで、デデキント環は円つまりリングの集まり……あれ、もしかして、これが環(ring)という名前の由来でしょうか?これもただの偶然だと思いますか?

参考文献

[1]
雪江明彦, 整数論2 代数的整数論の基礎, 日本評論社, 2013
投稿日:3日前
更新日:2日前
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