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素数計数関数とチェビシェフ関数の関係まとめ

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はじめに

 この記事では素数計数関数
π(x)=px1,Π(x)=n=11nπ(x1n)
とチェビシェフ関数
ϑ(x)=pxlogp,ψ(x)=n=1ϑ(x1n)
の相互関係についてまとめていきます。

π(x)Π(x)ϑ(x)ψ(x)の関係

反転公式

π(x)=n=1μ(n)nΠ(x1n),ϑ(x)=n=1μ(n)ψ(x1n)

 メビウス関数の性質
d|nμ(d)={1n=10n1
から
n=1μ(n)nΠ(x1n)=n=1μ(n)nm=11mπ(x1mn)=l=11l(n|lμ(n))π(x1l)=11π(x11)=π(x)n=1μ(n)ψ(x1n)=n=1μ(n)m=1ϑ(x1mn)=l=1(n|lμ(n))ϑ(x1l)=ϑ(x11)=ϑ(x)
とわかる。

近似関係

Π(x)=π(x)+O(π(x12)),ψ(x)=ϑ(x)+O(ϑ(x12))
特に
Π(x)=π(x)+O(xlogx),ψ(x)=ϑ(x)+O(x)
が成り立つ。

 x1n<2つまりlog2x<nにおいて
π(x1n)=ϑ(x1n)=0
となることに注意すると
Π(x)=π(x)+12π(x12)+n=3log2x1nπ(x1n)π(x)+12π(x12)+log2xπ(x13)=π(x)+12π(x12)+O(x13logx)=π(x)+O(π(x12))ψ(x)=ϑ(x)+ϑ(x12)+n=3log2xϑ(x1n)ϑ(x)+ϑ(x12)+log2xϑ(x13)=ϑ(x)+ϑ(x12)+O(x13log2x)=ϑ(x)+O(ϑ(x12))
がわかる。
 また素数定理
π(x)xlogx,ϑ(x)x
に注意すると主張を得る。

 ちなみに素数定理を用いなくても
π(x)=O(x),ϑ(x)=O(xlogx)
くらいの評価はできるので
Π(x)=π(x)+O(x),ψ(x)=ϑ(x)+O(xlogx)
といった式は得られます。

π(x)ϑ(x)Π(x)ψ(x)の関係

 素数計数関数とチェビシェフ関数はアーベルの総和公式を用いることで非常に綺麗な関係を持つことが確かめられます。

アーベルの総和公式

 数列{an}C1級関数fについてA(x)=Nnxanとおいたとき
Nnxanf(n)=A(x)f(x)NxA(t)f(t)dt
が成り立つ。

Nnxanf(n)=Nnxan(f(x)nxf(t)dt)=A(x)f(x)Nx(Nntan)f(t)dt=A(x)f(x)NxA(t)f(t)dt
とわかる。

相互関係その一

π(x)=ϑ(x)logx+2xϑ(t)tlog2tdt,Π(x)=ψ(x)logx+2xψ(t)tlog2tdt
ϑ(x)=π(x)logx2xπ(t)tdt,ψ(x)=Π(x)logx2xΠ(t)tdt

qn={1n=p0otherwise ,rn={1kn=pk0otherwise
とおいたとき
π(x)=2nxqnΠ(x)=2nxrnϑ(x)=2nxqnlognψ(x)=2nxrnlogn
が成り立つことに注意するとアーベルの総和公式からわかる。

 ちなみに
Λ(n)=rnlogn={logpn=pk0otherwise
のことをフォン・マンゴルト関数と言います。

相互関係その二

 上で示した相互関係は、面白いことに、素数定理π(x)Li(x),ϑ(x)xと非常に相性の良い関係式となっています。そのことは以下の式を見てみるとすぐにわかると思います。

π(x)Li(x)=ϑ(x)xlogx+0xϑ(t)ttlog2tdt
ϑ(x)x=(π(x)Li(x))logx0xπ(x)Li(t)tdt

 これはΠ(x)Li(x)ψ(x)xについても同様の式が言えます。

Li(x)=0x(t)logtdt=xlogx+0xdtlog2t

x=0xlogulogudu=logx0xdulogu0xlogxlogulogudu=Li(x)logx0x1loguux1tdtdu=Li(x)logx0x1t0t1logududt=Li(x)logx0xLi(t)tdt
と変形できることからわかる。

 なお
0xdtlog2t
t=1付近の積分で発散するので上の式は厳密には正しくなく、実際には
Li(x)=xlogx2log2+2xdtlog2t+Li(2)
と変形して
π(x)Li(x)=ϑ(x)xlogx+2xϑ(t)ttlog2tdt+2log2Li(2)
とするべきだと思います(x<2においてϑ(x)=0であることに注意する)。

漸近挙動の相互関係

 素数計数関数は
limxπ(x)Li(x)=1
を満たすことが知られています。これを素数定理と言います。
 またリーマンゼータ関数の非自明な零点の実部が常にΘ以下であれば
π(x)=Li(x)+O(xΘlogx)
が成り立つことが知られています(そのことについては この記事 にて解説しています)。特にΘの最小値としてΘ=12が取れる、ということをリーマン予想と言うのでした。
 これらの漸近挙動はΠ(x),ϑ(x),ψ(x)にも同様の結果が成り立ち、またそれらはそれぞれ同値であることが示せます。

素数定理

π(x)Li(x)Π(x)Li(x)ϑ(x)xψ(x)x

 π(x)Π(x)ϑ(x)ψ(x)の関係については
Π(x)π(x)=O(x),ψ(x)ϑ(x)=O(xlogx)
からわかる。
 またπ(x)ϑ(x)の関係についてはϑ(x)xならば
π(x)=ϑ(x)logx+2xϑ(t)tlog2tdtxlogx+O(2xttlog2tdt)=Li(x)+O(xlog2x)
が成り立ち、またπ(x)Li(x)xlogxならば
ϑ(x)=π(x)logx2xπ(t)tdtx+O(2xtlogttdt)=x+O(xlogx)
が成り立つことからわかる。

リーマン予想

π(x)=Li(x)+O(xΘlogx)Π(x)=Li(x)+O(xΘlogx)ϑ(x)=x+O(xΘlog2x)ψ(x)=x+O(xΘlog2x)

 π(x)Π(x)ϑ(x)ψ(x)の関係についてはやはり
Π(x)π(x)=O(x),ψ(x)ϑ(x)=O(xlogx)
からわかる。
 またπ(x)ϑ(x)の関係については
π(x)Li(x)=ϑ(x)xlogx+0xϑ(t)ttlog2tdt=O(xΘlog2x)logx+O(0xtΘlog2ttlog2tdt)=O(xΘlogx)+O(xΘ)=O(xΘlogx)
および
ϑ(x)x=(π(x)Li(x))logx0xπ(x)Li(t)tdt=O(xΘlogx)logx+O(2xtΘlogttdt)=O(xΘlog2x)+O(logx2xtΘ1dt)=O(xΘlog2x)+O(xΘlogx)=O(xΘlog2x)
のようにしてわかる。

投稿日:2024122
更新日:2024125
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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