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exp(x) のフーリエ変換を意味付けしてみる

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$$\newcommand{diff}[0]{\,\mathrm{d}} \newcommand{erfc}[0]{\operatorname{erfc}} \newcommand{EStau}[0]{\mathcal{ES}_\tau} \newcommand{HStau}[0]{\mathcal{HS}_\tau} \newcommand{lrangle}[2]{\langle #1,\,#2 \rangle} \newcommand{setexpr}[2]{\left\{#1 :\; #2 \right\}} \newcommand{varIm}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{varRe}[0]{\operatorname{Re}} $$

はじめに

かなり前になるが Twitter(当時) で 「$e^x$ が何らかの意味でフーリエ変換できるとしたらどういうものになるか?」が話題になっていた。その時でっち上げた意味付けを整理して紹介する。
本記事の目標は形式的に公式をあてはめて得られる $\mathcal{F}[e^x](z)=\delta(z+i/(2\pi))$ を正当化することである。そのため初歩的な 複素解析 シュワルツ超関数 の知識を前提とする。また簡単のため関数の定義域は1次元 ($\mathbb{R}$$\mathbb{C}$ の部分集合) とする。

テスト関数の空間 ES, HS

$e^x$$\delta(z+i/(2\pi))$ を超関数として扱うために、まずテスト関数の空間を決める。

$\tau:\; 0<\tau<\infty$ を固定する。関数 $\phi\in C^\infty$ で、任意の $m,n\in\mathbb{N}$ に対し
$ p_{m,n}(\phi):= \sup \setexpr{|e^{2\pi yx} \phi^{(m)}(x)|}{x\in\mathbb{R},\,|y|\leq (1-2^{-n})\tau} <\infty$
となるものの全体を $\EStau$ とおく。

また、帯状領域 $\setexpr{z\in\mathbb{C}}{|\varIm z|<\tau}$ 上の正則関数 $\psi$ で、任意の $m,n\in\mathbb{N}$ に対し
$ q_{m,n}(\psi):= \sup \setexpr{|z^m \psi(z)|}{|\varIm z|\leq (1-2^{-n})\tau} <\infty$
となるものの全体を $\HStau$ とおく。

$\EStau$ 上に半ノルムの族 $ p_{m,n}$ により次のような距離 $d$ を定めて距離空間とする。
$$d(\phi_1, \phi_2):= \sum_{m,n} \frac{2^{-m-n-1} p_{m,n}(\phi_1-\phi_2)}{1+ p_{m,n}(\phi_1-\phi_2)} $$ $\HStau$ にも同様の距離を定める。

$\EStau$ 上の関数列 $\phi_j$$\phi\in\EStau$ に収束するための必要十分条件は、各 $m,n\in\mathbb{N}$ それぞれに対して $j\to\infty$ のとき $ p_{m,n}(\phi_j-\phi)\to 0$ が成り立つことである。 $\HStau$ についても同様である。

距離の決め方から明らか。

$\EStau$, $\HStau$ は上記で定めた距離 $d$ について完備である。つまり $\EStau$, $\HStau$ は半ノルムの族の定める フレシェ空間 である。

$\EStau$ については割愛し $\HStau$ について示す。 $\psi_j\in\HStau$$(\psi_j)$ が半ノルム $ q_{m,n}$ についてコーシー列をなす、つまり $j,k\to\infty$ のとき $ q_{m,n}(\psi_j-\psi_k)\to 0$ であるとする。 $(z^m \psi_j)$ は閉領域 $|\varIm z|\leq (1-2^{-n})\tau$ の上の関数として一様コーシー列をなすから、この閉領域で定義されたある関数 $\psi_{m,n}^*$ に一様収束する。しかも各 $z^m \psi_j$ は有界な正則関数であるから極限 $\psi_{m,n}^*$ も有界かつ正則である。 $\psi_{m,n}^*$ の決め方から、領域 $|\varIm z|<\tau$ 上で定義された共通の $\psi^*$ が存在して $\psi_{m,n}^*=z^m \psi^*$ となり、 $\psi^*\in\HStau$ が成り立つ。

$\EStau$, $\HStau$ は集合としては シュワルツ空間 $\mathcal{S}$ に含まれ、 $\mathcal{S}$ の稠密な線形部分空間となっている。しかしここで $\EStau$, $\HStau$ に定めた位相は $\mathcal{S}$ の相対位相よりも強いものである。

  • $1/\cosh x\in\mathcal{ES}_{1/(2\pi)}\cap\mathcal{HS}_{\pi/2}$
  • $e^{-x^2}\in(\bigcap_{\tau>0}\EStau)\cap(\bigcap_{\tau>0}\HStau)$
  • $C_c^\infty \subsetneq (\bigcap_{\tau>0}\EStau)\setminus(\bigcup_{\tau>0}\HStau)\cup\{0\}$

$\EStau$ 上の微分作用素 $\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}:\; \EStau\to\EStau$$\phi\mapsto\phi'$ によって定めると $\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}$ は連続である。 $\HStau$ 上でも同様である。

$\EStau$ 上では $ p_{m,n}(\phi')= p_{m+1,n}(\phi)$ より明らか。 $\HStau$ 上では $|\varIm z|\leq(1-2^{-n})\tau$ のときコーシーの積分表示より $$ |z^m \psi'(z)| =\left|\frac{1}{2\pi i}\oint_{|w-z|=2^{-n-1}} \frac{w^m \psi(w)}{(w-z)^2}\diff w\right| \leq 2^{n+1} q_{m,n+1}(\psi) $$ より $ q_{m,n}(\psi')\leq 2^{n+1} q_{m,n+1}(\psi)$ であるから $\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}$$\HStau$ の位相で連続である。

$\EStau$$\HStau$ はフーリエ変換・逆変換によって互いに移りあう。なおフーリエ変換の定義には複数の流儀があるが、ここでは次のものを採用する。$$ \hat{f}(\xi):=\mathcal{F}[f](\xi):=\int_{-\infty}^\infty e^{-2\pi ix\xi} f(x)\diff x$$ $$ \mathcal{F}^{-1}[g](x):=\int_{-\infty}^\infty e^{2\pi ix\xi} g(\xi)\diff\xi$$

$\phi$ のフーリエ変換を $\hat{\phi}$ とすると $\phi\in\EStau\iff\hat{\phi}\in\HStau$, $\psi\in\HStau\iff\hat{\psi}\in\EStau$ が成り立つ。しかもこの対応は同相写像である。

$\phi\in\EStau$ とする。 $|\eta|<\tau$ のとき $$ \hat{\phi}(\xi+i\eta)=\int_{-\infty}^\infty e^{-2\pi ix(\xi+i\eta)} \phi(x)\diff x $$ は収束して正則関数となる。さらに $|\eta|\leq(1-2^{-n})\tau$ のときは $\delta:=2^{-n-1}\tau$ とおくと $$ \begin{aligned} (\xi+i\eta)^m \hat{\phi}(\xi+i\eta) =& \frac{1}{(2\pi i)^m} \int_{-\infty}^\infty e^{-2\pi ix(\xi+i\eta)} \phi^{(m)}(x)\diff x \\ =& \frac{1}{(2\pi i)^m} \int_{-\infty}^0 e^{-2\pi ix\xi+2\pi x\delta} e^{2\pi x(\eta-\delta)} \phi^{(m)}(x) \diff x \\ &+ \frac{1}{(2\pi i)^m} \int_0^\infty e^{-2\pi ix\xi-2\pi x\delta} e^{2\pi x(\eta+\delta)} \phi^{(m)}(x) \diff x \end{aligned}$$ $$ \begin{aligned} \left|(\xi+i\eta)^m \hat{\phi}(\xi+i\eta)\right| \leq& \frac{ p_{m,n+1}(\phi)}{(2\pi)^m} \int_{-\infty}^0 e^{2\pi x\delta} \diff x + \frac{ p_{m,n+1}(\phi)}{(2\pi)^m} \int_0^\infty e^{-2\pi x\delta} \diff x \\ =& \frac{2 p_{m,n+1}(\phi)}{(2\pi)^{m+1}\delta} = \frac{2^{n+2} p_{m,n+1}(\phi)}{(2\pi)^{m+1}\tau} \end{aligned}$$ $$ q_{m,n}(\hat{\phi}) \leq c_{m,n} p_{m,n+1}(\phi) $$ よって $\hat{\phi}\in\HStau$ であり、かつ写像 $\phi\mapsto\hat{\phi}$ は連続である。

次に $\psi\in\HStau$ とする。 $|y|\leq(1-2^{-n})\tau$ のとき $$ \hat{\psi}(\xi)=\int_{-\infty}^\infty e^{-2\pi iz\xi}\psi(z)\diff z $$ $$ \begin{aligned} e^{2\pi y\xi}\hat{\psi}^{(m)}(\xi) =& \int_{-\infty}^\infty (-2\pi iz)^m e^{-2\pi i(z+iy)\xi}\psi(z)\diff z \\ =& \int_{-\infty-iy}^{\infty-iy} (-2\pi iz)^m e^{-2\pi i(z+iy)\xi}\psi(z)\diff z \\ =& (-2\pi i)^m \int_{-\infty-iy}^{\infty-iy} e^{-2\pi i(z+iy)\xi} \frac{\tau^2 z^m+z^{m+2}}{\tau^2+z^2} \psi(z)\diff z \end{aligned} $$ $$ \begin{aligned} \left|e^{2\pi y\xi}\hat{\psi}^{(m)}(\xi)\right| \leq& (2\pi)^m \int_{-\infty-iy}^{\infty-iy} \frac{\tau^2 |z|^m+|z|^{m+2}}{|\tau^2+z^2|} |\psi(z)|\diff z \\ \leq& (2\pi)^m \left(\tau^2 q_{m,n}+ q_{m+2,n}\right) \int_{-\infty}^\infty \frac{\diff x}{|\tau^2+(x-iy)^2|} \\ \leq& (2\pi)^m \left(\tau^2 q_{m,n}+ q_{m+2,n}\right) \int_{-\infty}^\infty \frac{\diff x}{\tau^2+(1-2^{-n})^2\tau^2+x^2} \\ \leq& \frac{(2\pi)^m \pi}{\tau\sqrt{1-(1-2^{-n})^2}} \left(\tau^2 q_{m,n}+ q_{m+2,n}\right) \end{aligned} $$ $$ q_{m,n}(\hat{\psi}) \leq c'_{m,n}\left(\tau q_{m,n}(\psi)+\tau^{-1} q_{m+2,n}(\psi)\right) $$ よって $\hat{\psi}\in\EStau$ であり、かつ写像 $\psi\mapsto\hat{\psi}$ は連続である。

フーリエ逆変換についても同様であるから以上の逆も成り立ち、 $\phi\mapsto\hat{\phi}$, $\psi\mapsto\hat{\psi}$ は同相写像となる。

超関数の空間 ES', HS'

テスト関数の空間が良い性質を持つことが分かったので、シュワルツの 緩増加超関数 と同じ方法で超関数を定義する。

$\EStau$ 連続的双対空間 $\EStau'$ で表す。つまり、$\EStau$ から $\mathbb{C}$ への線型汎関数 $S:\;\EStau\to\mathbb{C}$ で、 $\EStau$ の位相で連続であるものの全体がなすベクトル空間を $\EStau'$ とする。 $S\in\EStau'$$\phi\in\EStau$ に作用させたもの $S(\phi)$$\lrangle{S}{\phi}$ とも表す。 $\EStau'$ の位相としては通常は 強位相 をとる。$\HStau'$ も同様に定める。

$\alpha\in\mathbb{C},\; |\varIm\alpha|<\tau$ のとき、$$ \lrangle{e^{2\pi i\alpha x}}{\phi} := \int_{-\infty}^\infty e^{2\pi i\alpha x}\phi(x) \diff x $$ と定めると $e^{-2\pi i\alpha x}\in\EStau$ である。

簡単のため $\alpha$ は純虚数であるとして $\alpha=-ia$ とおく。
まず $a>0$ の場合を考える。$(1-2^{-n})\tau\geq a$ なる $n$ をとると、$$ \begin{aligned} |\lrangle{e^{2\pi ax}}{\phi}| \leq& \int_{-\infty}^0 e^{2\pi ax}|\phi(x)|\diff x + \int_0^\infty e^{2\pi (1-2^{-n})\tau x}|\phi(x)|\diff x \\ \leq& p_{0,0}(\phi) \int_{-\infty}^0 e^{2\pi ax}\diff x + p_{0,n+1}(\phi) \int_0^\infty e^{-2\pi\cdot2^{-n-1} \tau x}\diff x \\ =& \frac{ p_{0,0}(\phi)}{2\pi a}+\frac{2^{n+1} p_{0,n+1}(\phi)}{2\pi\tau} \end{aligned} $$ よって $\lrangle{e^{2\pi ax}}{\phi}$ は well-defined で、 $\EStau$ の位相で連続である。 $a=0$, $a<0$ の場合も同様である。

$\alpha\in\mathbb{C},\; |\varIm\alpha|<\tau$ のとき、$$ \lrangle{\delta_\alpha}{\psi} := \psi(\alpha) $$ と定めると $\delta_\alpha\in\HStau'$ である。

$(1-2^{-n})\tau\geq|\varIm\alpha|$ なる $n$ をとると $|\lrangle{\delta_\alpha}{\psi}|\leq q_{0,n}(\psi)$ であるからこれは $\HStau$ の位相で連続である。

$\delta_\alpha$$\delta(z-\alpha)$ とも表す。これが $\HStau$ 上のディラックのデルタ関数である。シュワルツ空間 $\mathcal{S}$ と同様に $\HStau$ でもデルタ関数はガウス関数の分布を狭くした極限として考えることができる。

$\alpha\in\mathbb{C},\; |\varIm\alpha|<\tau$ のとき、$$ f_{\alpha,\sigma^2}(z):=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-(z-\alpha)^2/(2\sigma^2)}$$ $$ \lrangle{f_{\alpha,\sigma^2}}{\psi}:=\int_{-\infty}^{\infty} f_{\alpha,\sigma^2}(z)\psi(z)\diff z $$ と定めると $f_{\alpha,\sigma^2}\in\HStau'$ であり、$\sigma\to 0$ のとき $f_{\alpha,\sigma^2}$$\delta_\alpha$ に強収束する。

被積分関数は $|\varIm z|<\tau$ の範囲で正則で $\varRe z\to\pm\infty$ の極限で十分速く0に収束するから、積分路を $i \varIm\alpha$ だけ平行移動することができる。すると $$ \begin{aligned} \lrangle{f_{\alpha,\sigma^2}}{\psi} =& \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\int_{-\infty+i \varIm\alpha}^{\infty+i\varIm\alpha} e^{(z-\alpha)^2/(2\sigma^2)} \psi(z) \diff z \\ =& \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2/2}\psi(\alpha+\sigma x)\diff x \end{aligned} $$ $(1-2^{-n})\tau\geq|\varIm\alpha|$ なる $n$ をとると $|\lrangle{f_{\alpha,\sigma^2}}{\psi}|\leq q_{0,n}(\psi)$ だから $f_{\alpha,\sigma^2}\in\HStau'$ である。$\sigma\to 0$ の極限をとるとルベーグの収束定理より $\lrangle{f_{\alpha,\sigma^2}}{\psi}\to\psi(\alpha)$ だから $f_{\alpha,\sigma^2}$$\delta_\alpha$ に弱収束する。さらにこの収束が強収束であることを示す。 $\sigma^{1/2}<2^{-n-2}\tau$ として積分区間を $[-\sigma^{-1/2},\,\sigma^{-1/2}]$ とそれ以外に分割すると、計算は割愛するが $$ |\lrangle{f_{\alpha,\sigma^2}-\delta_\alpha}{\psi}| \leq \left\{ 2\erfc((2\sigma)^{-1/2})+2^{n+2}\sigma^{1/2}\right\}q_{0,n+1}(\psi) $$ が示される。 $\HStau$ 上の任意の 有界集合 $B\subseteq\HStau$ を1つ固定する。 $\sup_{\psi\in B} q_{0,n+1}(\psi)<\infty$ であるから、$\sigma\to 0$ の極限をとると、 $\psi\in B$ の範囲内で $\lrangle{f_{\alpha,\sigma^2}-\delta_\alpha}{\psi}$ は 0 に一様収束する。 $B$ は任意であったから、これは $f_{\alpha,\sigma^2}$$\delta_\alpha$ に強収束することを意味する。

いまの議論から分かるように、 $\delta_\alpha\in\HStau'$ は直観的には $\psi\in\HStau$$z=\alpha$ での値を 鞍点法 で拾ってくるような作用素である。

超関数のフーリエ変換

超関数の空間 $\EStau'$, $\HStau'$ の上でフーリエ変換を定義する。これも要領はシュワルツの緩増加超関数 $\mathcal{S}'$ の場合と同じである。

$S\in\EStau'$ のフーリエ変換 $\hat{S}:\;\HStau\to\mathbb{C}$$\lrangle{\hat{S}}{\psi}:=\lrangle{S}{\hat{\psi}}$ で定める。同様に、 $T\in\HStau'$ のフーリエ変換 $\hat{T}:\;\EStau\to\mathbb{C}$$\lrangle{\hat{T}}{\phi}:=\lrangle{T}{\hat{\phi}}$ で定める。 $\hat{S}$, $\hat{T}$$\mathcal{F}[S]$, $\mathcal{F}[T]$ とも表す。

$S\in\EStau'\Rightarrow\hat{S}\in\HStau'$, $T\in\HStau'\Rightarrow\hat{T}\in\EStau'$ が成り立つ。しかもこの対応は $\EStau'$, $\HStau'$ の強位相で同相である。

$S\in\EStau'$ とする。 $\psi\mapsto\hat{\psi}$, $\hat{\psi}\mapsto\lrangle{S}{\hat{\psi}}$ の対応はともに連続だから $\psi\mapsto\lrangle{S}{\hat{\psi}}$ の対応も連続であり、従って $\hat{S}\in\HStau'$ である。

$B$$\HStau$ の任意の有界集合とすると $\hat{B}:=\setexpr{\hat{\psi}}{\psi\in B}$$\EStau$ の有界集合で、 $S$ が0に強収束すれば $\lrangle{\hat{S}}{\psi}=\lrangle{S}{\hat{\psi}}$ は各 $B$ 上で一様に0に収束するから、 $\hat{S}$$\HStau'$ の強位相で0に収束する。従って写像 $S\mapsto\hat{S}$$\EStau'$, $\HStau'$ の強位相で連続である。

次に、$T\in\HStau'$ に対して写像 $\mathcal{F}^*[T]:\;\EStau\to\mathbb{C}$$\lrangle{\mathcal{F}^*[T]}{\phi}:=\lrangle{T}{\mathcal{F}^{-1}[\phi]}$ で定める。すると先ほどと同様の議論により $\mathcal{F}^*[T]\in\EStau'$ が示される。定義から $\mathcal{F}^*[\mathcal{F}[S]]=S$, $\mathcal{F}[\mathcal{F}^*[T]]=T$ であるから $\mathcal{F}^*$$\mathcal{F}$ の逆像である。さらに写像 $T\mapsto\mathcal{F}^*[T]$$\EStau'$, $\HStau'$ の強位相で連続であることも分かる。連続な逆像が存在するので写像 $S\mapsto\hat{S}$ は同相写像である。

$T\in\HStau'$ から $\hat{T}$ への写像も同様である。

上記の議論で得られた $\mathcal{F}$ の逆像を超関数のフーリエ逆変換といい、 $\mathcal{F}^{-1}$ で表す。

これで準備が揃ったので、最初の目標であった $e^x$ のフーリエ変換を計算する。

$\alpha\in\mathbb{C}$, $\varIm\alpha<\tau$ のとき、$$ \mathcal{F}[e^{2\pi i\alpha x}]=\delta_\alpha $$

$$ \begin{aligned} \lrangle{\mathcal{F}[e^{2\pi i\alpha x}]}{\psi} =&\lrangle{e^{2\pi i\alpha x}}{\hat{\psi}} \\ =&\int_{-\infty}^{\infty} e^{2\pi i\alpha x}\hat{\psi}(x) \diff x \\ =&\mathcal{F}^{-1}[\hat{\psi}](\alpha)=\psi(\alpha)=\lrangle{\delta_\alpha}{\psi} \end{aligned} $$ より示された。

$\alpha=-i/(2\pi)$ を代入すると冒頭の式が得られる。

おわりに

テスト関数の空間を適当に差し替えることでシュワルツ超関数の枠組みをうまくカスタマイズ(?)することができた。この手法がどこまで通用するのか自分もよく分かっていないが、有用なものをご存じの方は教えてほしい。

追記

奏理音ムイ(Vtuber)様 (@mui_kanarine) から、よく似た設定で distribution の具体的な標準形まで求めている 荷見守助先生の論文 を紹介いただきました。この場を借りて感謝いたします。

投稿日:2023818
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