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【相対論】Killingベクトル場を電磁ポテンシャルと見なせるという話

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 Killingベクトル場は時空の等長対称性の生成子ですが、Ricci flat時空では電磁ポテンシャルと見なすこともできるというWaldによる有名な話があります。

source freeな電磁場

 電磁ポテンシャルを$A_a$とするとき、電磁場$F=dA$がsource freeであるとき$\nabla^aF_{ab}=0$を満たすので、$A_a$
\begin{align} \nabla^aF_{ab}&=\nabla^a\nabla_aA_b-\nabla^a\nabla_bA_a\\ &=\square A_b-\nabla_b\nabla_aA^a-R^a_{~cab}A^c\\ &=\square A_b-\nabla_b\nabla_aA^a-R_{cb}A^c \end{align}
を満たします。ここでLorentz gauge $\nabla_aA^a=0$を取ると
$$ \square A_a-R_a^{~b}A_b=0 $$
となります。つまりこの方程式を満たすdiv freeな1-formはsource freeな電磁場の電磁ポテンシャルと見なすことができます。

Ricci flatだと$\square A=0$は電磁波の方程式です。Ricci flatでない場合はRicci曲率が散乱項のようになることが分かります。

Killingベクトル場を電磁ポテンシャルと見なす

 Killingベクトル場$\xi$$\nabla_a\xi_b+\nabla_b\xi_a=0$を満たすので$\nabla_a\xi^a=0$となります。さらに
\begin{align} &\nabla_a\nabla_b\xi_c-\nabla_b\nabla_a\xi_c=-R^d_{~cab}\xi_d\\ &\nabla_a\nabla_b\xi^b-\nabla_b\nabla_a\xi^b=-R^{db}_{~~~ab}\xi_d\\ &\nabla^b\nabla_b\xi_a=-R_{da}\xi^d\ (\because\ \nabla_a\xi^a=0,\ \nabla_a\xi_b+\nabla_b\xi_a=0)\\ &\square A_a+R_a^{~b}A_b=0 \end{align}
となります。従ってRicci flatならば、$\xi_a$はsource freeの電磁場の電磁ポテンシャルと見なせます。

4D Minkowskiで$xy$平面の回転のKillingベクトル場$\xi=-y\partial_x+x\partial_y$に対して、電磁ポテンシャルを$A={}^\flat\xi$とすると、$F=dA=2dx\wedge dy$となりこれは$z$方向の磁場を表しています。

遊び方

 Ricci flatな時空$(M,g)$とKillingベクトル場$\xi$を準備すれば簡単にcurved時空での電磁放射について考察することができます。

投稿日:2023105
更新日:318

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Submersion
Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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