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指数に行列を含んだ積分

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指数に行列を含んだ積分

行列が指数に来る冪乗の動画はヨビノリさんも出してますが、「積分の問題であんまり見ないな〜」ってことで布教も兼ねてこの記事を書きました。

aは定数, mN+, F=(4x+a5x+a13xa+14xa+2)

I=0xme2x+F dx

う~ん、めんどくさそう。
正直、今回の問題は解答に出てくる途中式がキレイになるくらいで、他の計算は面倒です。それでも解いてみたい方はぜひどうぞ。

※解答のセクションに入るので、自力で解きたい方はスクロールしないでください。

解説

冪乗の処理

exのマクローリン展開より
ex=n0(1)nn!xn
xに行列Fを代入して
eF=n0(1)nn!Fn=n0(1)nn!(4x+a5x+a13xa+14xa+2)n(1)

Fnを求める

Fnを計算していきます。

二次単位行列をE:=(1001)とする。

ケイリー・ハミルトンの定理より得られる式

二次正方行列A:=(abcd)とするとき
A2(a+d)A+(adbc)E=O

これを使います。

スカラーλを用いて
det(FλE)=|4x+aλ5x+a13xa+14xa+2λ|
=(4x+aλ)(4xa+2λ)(5x+a1)(3xa+1)
=λ22λx2+1(2)


二次方程式 t22tx2+1=0t=1±xより
tn=(t22tx2+1)P(t)+C1t+C2(3)

t=1±xをそれぞれ代入すると

{(1+x)n=(1+x)C1+C2(1x)n=(1x)C1+C2{C1=(1+x)n(1x)n2xC2=(1+x)(1x)n(1x)(1+x)n2x
an=(1+x)n, bn=(1x)nとすると
C1=12x(anbn), C2=1+x2xbn1x2xan(4)と表せる。

ケイリー・ハミルトンの定理より (2)の式のλFに置き換えて
F22F(x2+1)E=Oである。
また(3), (4)より

Fn=C1F+C2E
=12x(anbn)F+(1+x2xbn1x2xan)E
=F(1x)E2xanF(1+x)E2xbn

eFを求める

(1)より
eF=n0(1)nn!Fn
=F(1x)E2xn0(1)nn!anF(1+x)E2xn0(1)nn!bn

an=(1+x)n, bn=(1x)nより
n0(1)nn!an=n0(1)nn!(1+x)n=e1+x
n0(1)nn!bn=n0(1)nn!(1x)n=e1x
だから
eF=F(1x)E2xe1+xF(1+x)E2xe1x=e2x[{F(1x)E}ex{F(1+x)E}ex]
eF=e2x((5x+a1)ex(3x+a1)ex(5x+a1)(exex)(3x+a1)(exex)(3x+a1)ex+(5x+a1)ex)

Iを計算する

I=0xme2x+F dx
=0xme2xe2x((5x+a1)ex(3x+a1)ex(5x+a1)(exex)(3x+a1)(exex)(3x+a1)ex+(5x+a1)ex) dx
=e20xm1((5x+a1)ex(3x+a1)e3x(5x+a1)(exe3x)(3x+a1)(exe3x)(3x+a1)ex+(5x+a1)e3x) dx

ここで次の積分を解きます。
{a, b}Z,a0,b1のとき
J(a,b)=0xaebx dx
J(a,b)=0(tb)aet dtb=1ba+10taet dt
J(a,b)=Γ(a+1)ba+1=a!ba+1


I=e20xm1((5x+a1)ex(3x+a1)e3x(5x+a1)(exe3x)(3x+a1)(exe3x)(3x+a1)ex+(5x+a1)e3x) dx
積分を行列の中に分配して、これをJでそれぞれ表す
I=e2(I11I12I21I22)
とすると
I11=5J(m,1)+(a1)J(m1,1)3J(m,3)(a1)J(m1,3)
I12=5J(m,1)+(a1)J(m1,1)5J(m,3)(a1)J(m1,3)
I21=3J(m,1)(a1)J(m1,1)+3J(m,3)+(a1)J(m1,3)
I22=3J(m,1)(a1)J(m1,1)+5J(m,3)+(a1)J(m1,3)
ここでJ(m,1), J(m1,1), J(m,3), J(m1,3)の値はそれぞれ
J(m,1)=m!, J(m1,1)=(m1)!, J(m,3)=m!3m+1, J(m1,3)=(m1)!3m
となり、これを代入して
I11=5m!+(a1)(m1)!m!3m(a1)(m1)!3m
I12=5m!+(a1)(m1)!5m!3m+1(a1)(m1)!3m
I21=3m!(a1)(m1)!+m!3m+(a1)(m1)!3m
I22=3m!(a1)(m1)!+5m!3m+1+(a1)(m1)!3m

元のIに代入して、式を整理すると
I=e2(5m!+(a1)(m1)!m!3m(a1)(m1)!3m5m!+(a1)(m1)!5m!3m+1(a1)(m1)!3m3m!(a1)(m1)!+m!3m+(a1)(m1)!3m3m!(a1)(m1)!+5m!3m+1+(a1)(m1)!3m)
I=e(m1)!2((513m)m+(a1)(113m)(553m+1)m+(a1)(113m)(3+13m)m(a1)(113m)(3+53m+1)m(a1)(113m))
I=e(m1)!23m+1(3(53m1)m+3(a1)(3m1)5(3m+11)m+3(a1)(3m1)3(3m+1+1)m3(a1)(3m1)(3m+2+5)m3(a1)(3m1))


計算が思ったよりも重くてちゃんとした検算ができてませんので、あとの検算は後世の人に託します。

投稿日:2024421
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  1. 指数に行列を含んだ積分
  2. 解説
  3. 冪乗の処理
  4. $F^n$を求める
  5. $e^F$を求める
  6. Iを計算する