この記事は参考文献 [1] 第 2 章 Fundamental groups in topology を参考にさせていただきました。
以下、$G$ を群、$Y$ を位相空間とします。
$G$ は $Y$ に左から作用しているとする。$G$ の作用が $\text{even}$ であるとは、任意の $y\in Y$ に対して次の条件 $(*)$ を満たす $Y$ における $y$ の開近傍 $U$ が存在することをいう:
$(*)$ $g,\ g'\in G$ に対して $g\neq g'$ ならば $gU \cap g'U = \emptyset$
$G$ の作用は $Y$ 上に同値関係を定める。$y\in Y$ の同値類
$$ G(y):=\lbrace gy\mid g\in G\rbrace$$
を $y$ の $G$ 軌道という。$Y$ の部分集合 $S$ に対して $G(S) := \lbrace G(s)\mid s\in S \rbrace$ と書くことにする。
同値関係による商位相空間 $Y/G = \lbrace G(y) \mid y\in Y\rbrace$ が定義される。この位相は標準全射 $$ p_G:Y\to Y/G,\ y\to G(y)$$ が連続となるような最も細かい位相である。
ここからは連続な作用を考えるため $G$ を位相群とします。また、$e$ を $G$ の単位元とします。
$G$ が $Y$ へ連続に作用しているとき、$g\in G$ に対して $Y\to Y,\ y\mapsto gy$ は同相写像である。よって標準全射 $p_G:Y\to Y/G$ は開写像である。
次の命題は参考文献 [1] Lemma 2.1.7 を参考にさせていただきました。
$G$ は $Y$ に左から連続かつ $\text{even}$ に作用しているとする。 このとき、$(Y,\ p_G)$ は $Y/G$ 上の被覆である。
各 $y\in Y$ に対して $\text{even}$ の条件 $(*)$ を満たす $y$ の開近傍 $U$ をとることができる。このとき $p_G(U)$ は $G(y)$ の被覆近傍であり、$\lbrace gU\rbrace_{g\in G}$ が被覆近傍のシートの族である。
任意の $G(y)\in Y/G$ をとる。$G$ の $Y$ への作用は $\text{even}$ であるから、$(*)$ の条件を満たす$y$ の開近傍 $U$ が存在する。$V:=p_G(U)=G(U)$ とおく。$V$ が被覆近傍であることを示す。
まず $p^{-1}(V) = \displaystyle \bigcup_{g\in G}gU$ であり、各 $gU$ は互いに共通部分を持たない。次に $p_G$ の $gU$ への制限は $gU$ から $V$ への全射連続開写像である。そこで $p_G$ が単射であることを示す。$G(u) = G(u')\ (u,\ u'\in U)$ ならば $g_0u=u'$ となるような $g_0\in G$ が存在する。よって $u'\in U\cap g_0U$ となるから $\text{even}$ の条件より $g_0 = e$ となる。ゆえに $p_G$ の ${gU}$ への制限は単射である。したがって $V$ は $G(y)$ の被覆近傍であり、$\lbrace gU\rbrace_{g\in G}$ は $V$ のシートの族である。