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大学数学基礎解説
文献あり

【相対論】Maxwell方程式をDirac方程式っぽく書く

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 Maxwell方程式をDirac作用素を使ってDirac方程式っぽく書くことについて説明します。微分形式をClifford代数と見なせばほぼ自明です。

 以下(M,g)を擬リーマン多様体とします。

Clifford form

 {ei}TpMの正規直交基底とし、{θi}をその双対基底とします。{γi}γiγj+γjγi=2ηijを満たすClifford代数の生成子とすると、θiγiにより外積代数Λ(TpM)はClifford代数Cl((TpM,η))とベクトル空間として同型です。代数としての同型は、θTpM, ηΛk(TpM)に対して、
θη=θη+ιθηηθ=(1)k(ηθιθη)
と定義して、Λ(TpM)全体に自然に拡張することでClifford積が得られます。この微分形式に入るClifford代数の積をと書いている文献もあります[2]。この対応により微分形式をClifford bundleの切断と見なしたものをClifford formなどと呼ぶことがあります。

Maxwell方程式をClifford formで書き換える

 FΩ2(M)をMaxwell場とします。すなわち
dF=0dF=j, (jΩ1(M))
を満たすとします。このときClifford formに対してDirac作用素を
D:=θiei
と定義します。さらにこれは
D=θiei+ιθiei=θiei(ιθiei)=dd
となるので、Maxwell方程式は
DF=j
となります。d:Ω2Ω3,d:Ω2Ω1であることを考えれば代数の同型より逆も成り立つのでこれらは同値な方程式であることがわかります。
ddは複素幾何ではHodge-de Rham operatorなどと呼ばれます。

一般のYang-Mills方程式をClifford formで書き換える

 Maxwell方程式はU(1)ゲージ理論におけるYang-Mills方程式であるが、非可換ゲージ理論においても同様の書き換えが可能です。GをLie群、gをそのLie環とし、P=P(M,G)M上の主G束、gAdGの随伴表現に関する同伴束とし、G不変なファイバー内積が存在するとします。Pの接続(ゲージ場)をAとし、F=dA+12[AA]Ω2(gAd)とします。上の議論でdΩ(gAd)に対する共変外微分dAに、d(dA)に、DDA=θieiAに置き換えると全く同様にBianchi恒等式dAF=0とYang-Mills方程式(dA)F=jDAF=jとできます。

参考文献

[1]
Philip Charlton, The Geometry of Pure Spinors, with Applications, D thesis
[2]
FABIO DI COSMO, et al, A HODGE - DE RHAM DIRAC OPERATOR ON THE QUANTUM SU(2), International Journal of Geometric Methods in Modern Physics 15.02 (2018): 1850030.
投稿日:2023926
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Submersion
Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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  2. Maxwell方程式をClifford formで書き換える
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