東大数理の院試(1997年度専門問4)の解答です.自分が作った解答は ここ に置いてあります.代数の問題も数問解いてありますが,それだけをpdfにまとめて公開する気がしないので,ここで個別に書いておくことにします.
pを素数,Lをp元体Fp上の一変数有理関数体Fp(T)とする.S∈LをS=∑k=1pTk(p−1)=Tp−1+T2(p−1)+⋯+Tp(p−1)とし,KをLの部分体Fp(S)とする.
LのK上の拡大次数[L:K]を求めよ.
LはKのガロア拡大であることを示せ.
ガロア群Gal(L/K)の位数pの部分群はただ一つであることを示し,その部分群に対応する中間体を求めよ.
(1)f(X)=Xp(p−1)+⋯+X2(p−1)+Xp−1−SはTを根に持つ.fはSの1次式だからK[X]=Fp[X](S)において既約.よってfはTのK上の最小多項式だから,[L:K]=degf=p(p−1).
(2)f(X)=Xp−1(Xp(p−1)−1)Xp−1−1−S=Xp−1(Xp−1−1)pXp−1−1−S=Xp−1(Xp−1−1)p−1−S=(Xp−X)p−1−Sである.また任意のa∈Fp×,b∈Fpに対し((aT+b)p−(aT+b))p−1=(aTp+b−(aT+b))p−1=(Tp−T)p−1=Sだからf(aT+b)=0. これと|Fp××Fp|=(p−1)p=degfよりf(X)=∏(a,b)∈Fp××Fp(X−(aT+b)).よってTのL-共役元はaT+bで,これらは全てLの元だからL/Kは正規かつ分離的.従ってL/Kは Galois 拡大.
(3)G=Gal(L/K)とおくと|G|=degf=p(p−1)である.Gのp-Sylow 部分群の個数をnとおくと,Sylow の定理よりn≡1modpかつn∣p(p−1). 第1式より(n,p)=1だからn∣(p−1). よってn<pなのでn=1である.その部分群をHとおく.{σb(T)=T+b;b∈Fp}はGの部分群で位数はpだから,これがHである.(2) の計算からTp−T∈LHなので Fp(Tp−T)⊂LH. 一方S=(Tp−T)p−1より[LH:K]=[L:K][L:LH]=|G||H|=p−1=[Fp(Tp−T):K]だから,LH=Fp(Tp−T).
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