まずはAtiyah&Macdonald『可換代数入門』命題3.7を証明抜きで紹介します。
M,NをA加群とするときS−1A加群の同型写像f:S−1M⊗S−1AS−1N→S−1(M⊗AN)が存在して、次の式を満たすものがある。f((m/s)⊗(n/t))=(m⊗n)/st
特にpを素イデアルとするとき、Ap加群として次の同型が成り立つ。Mp⊗ApNp≅(M⊗AN)p
今回示すのはこれに似た以下の命題です。
可換環Bが準同型f:A→BによりA代数とみなせるとする。MをA加群、qをBの素イデアルとする。このときBq加群として以下の同型が成り立つ。Bq⊗AM≅(B⊗AM)qまた、p=f−1(q)とするとこれはAの素イデアルで、Ap加群として以下の同型が成り立つ。Bq⊗AM≅B⊗AMp≅(B⊗AM)p
Bq加群として、(B⊗AM)q≅Bq⊗BB⊗AM≅Bq⊗AMAp加群として、(B⊗AM)p≅B⊗AMp≅B⊗AAp⊗AMしたがって、B⊗AAp≅Bqを示せばよい。
ϕ:B×Ap→Bq;ϕ((b,a/s))=bf(a)/f(s)と定義する。a/sとa′/s′が同値なら、あるt∈A−pがあり、(as′−a′s)t=0であるから、(f(a)f(s′)−f(a′)f(s))f(t)=0が成り立つ。よって、ϕはwell-definedである。またϕはA双線形であるから、g:B⊗AAp→Bq;ϕ(b⊗a/s)=bf(a)/f(s)が引き起こされる。次にh:Bp→B⊗AAp;h(b/s)=b⊗(1/t)と定義する。ただしt∈Apはf(t)=sとなる任意の元である。t,t′∈Apをf(t)=f(t′)=sとなる任意の元とすると、b⊗(1/t)=b⊗(t′/tt′)=bs⊗(1/tt′)=b⊗(1/t′)だから、hはwell-definedである。g,hは互いに逆写像の関係にある。よって、B⊗AAp≅Bq(また明らかに、この同型はAp代数の同型でもある。)
B⊗AMが(B,A)複加群であることの面白さが如実に表れている命題になったかと思います。証明してみて、改めてテンソル積の有用性を感じました。最後まで閲覧ありがとうございました。
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