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東大数理院試過去問解答例(2024A03)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2024A03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2024B03

標準的な内積の入った線型空間$\mathbb{R}^n$を考える。以下の条件を満たす自然数$m$として最大のものを求めなさい。

  • 任意の相異なる$i,j$に対して$v_i・v_j<0$であるような$v_1,\cdots,v_m\in\mathbb{R}^n$が存在する。

このような自然数を$N(n)$とする。まず$N(n)\leq n+1$であることを背理法で示す。条件を満たすような$v_1,\cdots,v_{n+2}$が存在したとする。このとき
$$ \sum_{i=1}^{n+2}a_iv_i=0 $$
を満たすような$(a_1,\cdots,a_{n+2})$全体の集合$W$を考える。この集合は次元$\geq2$の線型空間であるから、$W$の元$a=(a_1,\cdots,a_{n+2})$で、$a_i>0$を満たすような$i$$a_j<0$を満たすような$j$が一つ以上存在するようなものを取ることができ、これを一つ固定する。いま
$$ I=\{i|a_i>0\} $$
$$ J=\{j|a_j<0\} $$
と置いたとき等式
$$ \sum_{i\in I}a_iv_i=\sum_{j\in J}(-a_j)v_j $$
が成り立つ。この元を$v$と置いたとき
$$ \begin{split} v・v&=\left(\sum_{i\in I}a_iv_i\right)・\left(\sum_{j\in J}(-a_j)v_j\right)\\ &=\sum_{(i,j)\in I\times J}(-a_ia_j)v_i・v_j&<0 \end{split} $$
となり、内積の正定値性に矛盾する。以上から$N(n)\leq n+1$である。

次に$N(n)\geq n+1$であることを帰納法によって示す。$n=1$のときは$v_1=1,v_2=-1$とすればよい。次に$\mathbb{R}^n$に於いて条件を満たす$v_1,\cdots,v_{n+1}$が取れたとする。このとき正の実数$\varepsilon$
$$ \epsilon<\sqrt{\min_{i,j}\left\{|v_iv_j|\middle|i\neq j\right\}} $$
を満たすようにとり、$\mathbb{R}^{n+1}$の元$w_i$$i=1,\cdots,n+1$に対しては
$$ w_i:=(v_i,\varepsilon) $$
と定義し、そして
$$ w_{n+2}:=(0,\cdots,0,-\varepsilon) $$
と定義する。このとき$w_1,\cdots,w_{n+2}$は所望の条件を満たしている。

以上から$N(n)={\color{red}n+1}$である。

投稿日:612
更新日:811
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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