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大学数学基礎解説
文献あり

数学初心者が写像について学びを深める……

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$$\newcommand{dom}[0]{\mathop{\mathrm{dom}}} \newcommand{ran}[0]{\mathop{\mathrm{ran}}} $$

自己紹介とこの記事を書くことに至ったきっかけ

初めまして.悪い人と申します.2024年時点で地の底で数学科B2をやっています.

この度初めてMathlogに対して記事を投稿するということを行いますので,バカみたいな間違いを犯している可能性もありますから,その際はどうか優しくご指摘をいただければ幸いです.

さて,本題に移ります.集合論の写像について学んでいるとふと不満が沸き上がってきたのですよ.

写像$f:A \to B$とし,$A$の部分集合$P_1, P_2, P$$B$の部分集合$Q$に対して,
\begin{align} f(P_1 \cap P_2) & \subset f(P_1) \cap f(P_2),\\ f^{-1}(f (P)) & \supset P,\\ f(f^{-1}(Q)) & \subset Q. \end{align}
そして,逆の包含関係が成り立つためには上二つは単射で,一番下のは全射でなければならない,と.
そして,大体逆像に関してはイコールで成り立っている…….

ぼく「Huh?」

この悩みを少しでも減らしたい! ということで,写像の一般化としての対応を考えることで,このことについて考察してみたわけです.

色々ネットで調べてみると,写像の一般化はなんやかんやあって二項関係で考えれるよ~みたいな記述がよくあったんですが,よくわからなかったので今回は二項関係のことは考えず,あくまで写像の一般化として考えていきたいと思います.

写像を一般化してみる

対応

二つの集合$A,B$があるとする.このとき,対応$\Gamma:A \to B$を次のように定める.
・任意の$A$の元$a$に対し$B$の部分集合$B'$が存在して,$\Gamma(a)=B'$となる.
このとき,集合$A$始集合,集合$B$終集合ということにする.

いくつか注意を述べます.

まず,写像というのは終集合の一つの元のみ持つ部分集合を返しているというよりも,終集合のある一つの元を返していると解釈されるのが一般的なため,その齟齬に注意せずに安易にこれが写像の一般化であると言ってしまうのはヤバそうです.

また,$B$の部分集合として$\varnothing$を取って,$\Gamma(a)=\varnothing$となってもよいです.これは写像との違いの一つと言えるでしょう.

次に,対応の像について定義しておきます.

対応の像

対応$\Gamma:A \to B$があるとする.
$a \in A$に対する$B$の部分集合$\Gamma(a)$を対応$\Gamma$による$a$という.
さらに,$A$の空でない部分集合$A'$に対して$\Gamma(A')=\{b \in B \ | \ {}^\exists a \in A', b \in \Gamma(a)\}$と定め,これを対応$\Gamma$による$A'$という.
ただし,$\Gamma(\varnothing) = \varnothing$と規約する.

ここで,容易にわかるとおり,$\Gamma(\{a\})=\Gamma(a)$であることに注意します.
念のため確認しておくと,
\begin{align} \Gamma(\{a\}) & = \{b \in B \ | \ {}^\exists a' \in \{a\}, b \in \Gamma(a') \} \\ & = \{ b \in B \ | \ b \in \Gamma(a) \}\\ & = \Gamma(a). \end{align}

さて,わかりやすさのため対応の例について考えてみましょう.

対応の具体例

対応$f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$を以下のように定める.
$f(x) = \{y \in \mathbb{R} \ | \ x^2+ y^2=1 \}.$
このとき,$ f(\frac{1}{2}) = \{ \frac{\sqrt{3}}{2}, -\frac{\sqrt{3}}{2} \}$となる.また,$f(2)=\varnothing$となる.
開区間$(0,2)$$f$による像$f((0,2))=\{ y \in \mathbb{R} \ | \ {}^\exists x \in (0,2), y \in f(x) \}$を考えると$f((0,2))=(-1,1)$となる.

次に考えていくことは,対応がどういう状況で写像になるのかということです.
先ほど安易に対応を写像の一般化と見なすのはヤバそうだと注意しましたが,とはいえ対応の始集合の全ての元に対して一元集合を返すものを考えれば,それは写像と同一視できそうですね.

もしかしたら今から定義していく色々な言葉は普通に使われる文脈とは違った意味で定義をしていることがあるかもしれません.

今回ばかりはそういうものだと思ってください.

さて,左全域・右全域であるということについて定義したいと思います.

左全域・右全域

対応$\Gamma:A \to B$があるとする.
$\dom (\Gamma) = \{ a \in A \ | \ \Gamma(a) \neq \varnothing\}$$\Gamma$定義域と言うことにする.
また,$\ran (\Gamma)=\Gamma(A)$$\Gamma$値域と言うことにする.

$\dom (\Gamma)=A$の場合,$\Gamma$左全域的対応であるといい,単に左全域ということにする.
$\ran (\Gamma)=B$の場合,$\Gamma$右全域的対応全射であるといい,単に右全域ということにする.

左全域というのは任意の$A$の元$a$に対して$\Gamma(a)$は空集合でないということを意味します.すなわち,写像であるための必要条件です.
一方,右全域というのは任意の$B$の元$b$に対してある$A$の元$a$が存在して$b \in \Gamma(a)$ということで,これは全射な写像の必要条件と言えそうですね.

左全域・右全域の具体例

対応$f:[0,\infty) \to \mathbb{R}$を以下のように定める.
$f(x)=\{y \in \mathbb{R} \ | \ x=y^2 \}$.
このとき,$\dom(f)=\{x \in [0,\infty) \ | \ f(x) \neq \varnothing\}$を考えると,$\dom(f) = [0, \infty)$となる.したがって,対応$f$は左全域である.
また,$\ran(f) = f([0,\infty)) = \{y \in \mathbb{R} \ | \ {}^\exists x \in [0,\infty), y \in f(x) \}$を考えると,$\ran(f) = \mathbb{R}$となる.したがって,対応$f$は右全域でもある.

次に,左一意・右一意について定義していきます.

左一意・右一意

対応$\Gamma:A \to B$があるとする.
${}^\forall a, a' \in A, [\Gamma(a) \cap \Gamma(a') \neq \varnothing \implies a = a']$が成り立つとき,$\Gamma$左一意的対応単射であるといい,単に左一意ということにする.

${}^\forall a \in A, \exists b \in B, [\Gamma(a) \neq \varnothing \implies \Gamma(a) = \{b\}]$が成り立つとき,$\Gamma$右一意的対応部分写像であるといい,単に右一意ということにする.

左一意というのは単射な写像の一般化になっています.$\Gamma(a) \cap \Gamma(a') \neq \varnothing$というのは,もし$\Gamma$が写像なら(一元集合の共通部分が空でないということは同じ一元集合であるということなので)$\Gamma(a)=\Gamma(a')$ということですから,単射の一般化であると言えそうです.
一方で,部分写像というのは空集合にならないものは一元集合を返すということですから,写像であるための必要条件と言えそうですね.

左一意の具体例

対応$f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$を以下のように定める.
$f(x)=\{y \in \mathbb{R} \ | \ x= \sin y\}$.

このとき$f(1)=\{\frac{\pi}{2}+2n\pi \ | \ n \in \mathbb{Z}\}$, $ f(-1)=\{-\frac{\pi}{2}+2n\pi \ | \ n \in \mathbb{Z}\}$, $x \in (-1,1)$ ならば$f(x) = \{\arcsin x + 2n \pi \ | \ n \in \mathbb{Z}\}\cup\{-\arcsin x + (2n+1)\pi \ | \ n \in \mathbb{Z}\}$, $x \notin [-1,1]$ならば$f(x) = \varnothing$となっている.

$\mathbb{R}$の任意の元$x, x$に対し,$x \neq x'$であるとき,$f(x) \cap f(x') = \varnothing$となっているから,対偶を取れば$f$は左一意的とわかる.

右一意の具体例

対応$f : \mathbb{R} \to \mathbb{R}$を以下のように定める.
$f(x)=\{y \in \mathbb{R} \ | \ y = \ln x\}$.
ここで,$\mathbb{R}$の任意の元$x$に対し$x \leq 0$なら$f(x) = \varnothing$, $0 < x$なら$f(x) = \{\ln x\}$となる.したがって,$f$は右一意的(部分写像)であることがわかる.

さて,写像というのは左全域な部分写像(左全域的かつ右一意的な対応)であると言えるわけです.
ここでは逆にこれを定義としてしまいます.

写像

対応$\Gamma:A \to B$が写像であるとは,左全域的かつ右一意的な対応のことである.

必要のため,対応が等しいということについての定義をしておきます.

対応の相等

$\Gamma:A \to B, \Delta: C \to D$が等しいということを以下のように定める.
$A = C, B = D$
${}^\forall a \in A, \Gamma(a) = \Delta(a)$
このとき,$\Gamma = \Delta$と表す.

また,写像における逆写像だとか,逆像という概念に関して,逆対応というものについて定義します.

逆対応

$\Gamma:A \to B$に対し逆対応$\Gamma^{-1}$を次のように定める.
$\Gamma^{-1}:B \to A$である.
$b \in B$に対し$\Gamma^{-1}(b)=\{a \in A \ | \ b \in \Gamma(a)\}$

おそらく本来ならば逆対応の条件を満たす二つの対応を取った時それは等しくなるから,一意に存在するという証明をしなければならないところですが,その証明はここでは省略します.

逆対応の像について,$B' \subset B$に対し,$\Gamma^{-1}(B') = \{a \in A \ | \ {}^\exists b \in B', a \in \Gamma^{-1}(b) \} = \{a \in A \ | \ B' \cap \Gamma(a) \neq \varnothing\} $となっていることについて注意しておきます.
写像の逆対応の像について$\Gamma(a)$は一元集合となりますから,これを一つの元と同一視すると,$B' \cap \Gamma(a) \neq \varnothing$という条件は$\Gamma(a) \in B'$となり,逆像の定義と同一視することができます.

さて,逆対応に関する命題として2つのことが言えますので確認しておきます.

逆対応の逆対応は元々の対応と一致する.
すなわち,対応$\Gamma$ に対して,$(\Gamma^{-1})^{-1} = \Gamma $が成り立つ.

対応$\Gamma:A \to B$があるとする.
まず逆対応の逆対応と元々の対応について,その始集合,終集合は一致する.
また任意の$a \in A$に対して,
\begin{align*}   (\Gamma^{-1})^{-1}(a) & = \{b \in B \ | \ a \in \Gamma^{-1}(b)\}\\   & = \{b \in B \ | \ b \in \Gamma(a)\}\\   & = \Gamma(a). \end{align*}
したがって,$(\Gamma^{-1})^{-1} = \Gamma$が成立する.$\square$

(1). 左全域な対応の逆対応は右全域.
(2). 右全域な対応の逆対応は左全域.
(3). 左一意な対応の逆対応は右一意.
(4). 右一意な対応の逆対応は左一意.

(1). $\Gamma:A \to B$を左全域な対応とする.
\begin{align*}   \ran (\Gamma^{-1}) & = \{a \in A  \ | \ {}^\exists b \in B, a \in \Gamma^{-1}(b)\}\\   & = \{a \in A \ | \ {}^\exists b \in B, b \in \Gamma(a)\}\\   & = \{a \in A \ | \ \Gamma(a) \neq \varnothing\}\\   & = A. \end{align*}
すなわち,$\Gamma^{-1}:B \to A$は右全域な対応である.

(2). $\Gamma:A \to B$を右全域な対応とする.
\begin{align*}   \dom (\Gamma^{-1}) & = \{b \in B \ | \ \Gamma^{-1}(b) \neq \varnothing\}\\   & = \{b \in B \ | \ {}^\exists a \in A, b \in \Gamma(a)\}\\   & = B. \end{align*}
すなわち,$\Gamma^{-1}:B \to A$は左全域な対応である.

(3). $\Gamma:A \to B$を左一意な対応として,${}^\forall b \in B, \Gamma^{-1}(b) \neq \varnothing$と仮定する.
すると,$a \in \Gamma^{-1}(b)$となる$a \in A$が存在して,$b \in \Gamma(a)$である.

もし$a' \in \Gamma^{-1}(b)$であったとすると,$b \in \Gamma(a')$である.
$\Gamma$が左一意的であるから,$\Gamma(a) \cap \Gamma(a') \neq \varnothing$ゆえ,$a = a'$

したがって,$\Gamma^{-1}(b)$は一元集合$\{a\}$となる.
すなわち,$\Gamma^{-1}:B \to A$は右一意的となる.

(4). $\Gamma:A \to B$を右一意的な対応として,${}^\forall b, b' \in B, \Gamma^{-1}(b) \cap \Gamma^{-1}(b') \neq \varnothing$と仮定する.
すると$a \in \Gamma^{-1}(b) \cap \Gamma^{-1}(b')$となる$a \in A$が存在して,$b \in \Gamma(a), b' \in \Gamma(a)$である.

$\Gamma$は右一意な対応であるから,$\Gamma(a) \neq \varnothing$ゆえ,$\Gamma(a)$は一元集合であるから,$b = b'$でなければならない.
したがって,$\Gamma^{-1}:B \to A$は左一意的となる.$\square$

写像の定義と逆対応の命題を考えれば,逆像というのは右全域的かつ左一意的な対応の像であるということが言えそうですね.
また,ある写像に関して,逆写像が存在するというのは逆対応が左全域的かつ右一意的な対応になるために,元々の写像が右全域的かつ左一意的な写像でなければならなくて,結果として左全域・右全域・左一意・右一意の全てを満たすこととなるんですね.

最後に,集合論の写像で学んだ不満というのを少しだけ解消していきたいと思います.

対応$\Gamma:A \to B$があるとする.
$A_1, A_2, A'$$A$の任意の部分集合とする.

(1). $A_1 \subset A_2 \implies \Gamma (A_1) \subset \Gamma (A_2)$
(2). $\Gamma (A_1 \cup A_2) = \Gamma (A_1) \cup \Gamma (A_2)$
(3). $\Gamma (A_1 \cap A_2) \subset \Gamma (A_1) \cap \Gamma (A_2)$
(4). $\Gamma$が左一意 $\Longleftrightarrow \Gamma (A_1 \cap A_2) \supset \Gamma (A_1) \cap \Gamma (A_2)$
(5). $\Gamma$が左全域 $\Longleftrightarrow \Gamma^{-1} (\Gamma (A')) \supset A'$
(6). $\Gamma$が左一意 $\Longleftrightarrow \Gamma^{-1} (\Gamma (A')) \subset A'$

以下例えば$P \subset Q$を示すときの「$P$から元を任意に取る」というのは,$P= \varnothing$である場合は明らかに$P \subset Q$であるから,$P \neq \varnothing$として$P$から元を取ったものだとする.

(1). $b \in \Gamma(A_1)$とすると,${}^\exists a \in A_1, b \in \Gamma (a)$
$A_1 \subset A_2$より,${}^\exists a \in A_2, b \in \Gamma (a)$である.
したがって,$b \in \Gamma(A_2)$

(2). まず,$b \in \Gamma(A_1 \cup A_2)$とする.
このとき,${}^\exists a \in A_1 \cup A_2, b \in \Gamma(a)$

もし$a \in A_1$である場合には,$b \in \Gamma(A_1)$
もし$a \in A_2$である場合には,$b \in \Gamma(A_2)$
いずれにせよ,$b \in \Gamma(A_1) \cup \Gamma(A_2)$となる.

一方,$b \in \Gamma(A_1) \cup \Gamma(A_2)$とする.
もし,$b \in \Gamma(A_1)$である場合には,${}^\exists a_1 \in A_1, b \in \Gamma(a_1)$
${}^\exists a_1 \in A_1 \cup A_2, b \in \Gamma(a_1)$であるから,$b \in \Gamma(A_1 \cup A_2)$となる.

もし,$b \in \Gamma(A_2)$である場合には,${}^\exists a_2 \in A_2, b \in \Gamma(a_2)$
${}^\exists a_2 \in A_1 \cup A_2, b \in \Gamma(a_2)$であるから,$b \in \Gamma(A_1 \cup A_2)$となる.

いずれにせよ,$b \in \Gamma(A_1 \cup A_2)$となる.
以上より,$\Gamma(A_1 \cup A_2) = \Gamma(A_1) \cup \Gamma(A_2)$がわかる.

(3). $b \in \Gamma (A_1 \cap A_2)$とする.
すなわち,${}^\exists a \in A_1 \cap A_2, b \in \Gamma(a)$である.

${}^\exists a \in A_1, b \in \Gamma(a)$であり,${}^\exists a \in A_2, b \in \Gamma(a)$であるということだから,$b \in \Gamma(A_1) \cap \Gamma(A_2)$である.

(4). $[\implies]$:$\Gamma$を左一意とする.
$b \in \Gamma(A_1) \cap \Gamma(A_2)$を任意に取る.
すると,${}^\exists a_1 \in A_1, b \in \Gamma(a_1), {}^\exists a_2 \in A_2, b \in \Gamma(a_2)$である.
つまり,$b \in \Gamma(a_1) \cap \Gamma(a_2)$である.

よって$\Gamma(a_1) \cap \Gamma(a_2) \neq \varnothing$であって,$\Gamma$が左一意だから$a_1 = a_2$となる.
したがって,$a=a_1=a_2$とすれば,${}^\exists a \in A_1 \cap A_2, b \in \Gamma(a)$ゆえ,$b \in \Gamma(A_1 \cap A_2)$
すなわち,$\Gamma(A_1 \cap A_2) \supset \Gamma(A_1) \cap \Gamma(A_2)$

$[\impliedby]$:$\Gamma(A_1 \cap A_2) \supset \Gamma(A_1) \cap \Gamma(A_2)$とする.
$\Gamma(a) \cap \Gamma(a') \neq \varnothing$を満たす$a, a' \in A$を任意に取る.

ここで仮定より,$\Gamma(a) \cap \Gamma(a') = \Gamma(\{a\}) \cap \Gamma(\{a'\}) \subset \Gamma(\{a\} \cap \{a'\})$
$a \neq a'$と仮定すると,$\Gamma(\{a\} \cap \{a'\}) = \Gamma(\varnothing) = \varnothing$となって,$\Gamma(a) \cap \Gamma(a') = \varnothing$となる.
これは$\Gamma(a) \cap \Gamma(a') \neq \varnothing$と矛盾するから,$a = a'$である.

以上より,$\Gamma$は左一意となる.

(5). $[\implies]$:$\Gamma$を左全域として,$a \in A'$を任意に取る.

$a \in A$であって,$\Gamma$が左全域だから,$\Gamma(a) \neq \varnothing$である.
$a \in A'$ゆえ,$a'=a$とすれば,${}^\exists a' \in A' \Gamma(a') \cap \Gamma(a) \neq \varnothing$である.
\begin{align*}   & {}^\exists a' \in A' \Gamma(a') \cap \Gamma(a) \neq \varnothing,\\   \Longleftrightarrow & {}^\exists b \in B, {}^\exists a' \in A', b \in \Gamma(a'), b \in \Gamma(a),\\   \Longleftrightarrow & {}^\exists b \in B, b \in \Gamma(A'), a \in \Gamma^{-1}(a),\\   \Longleftrightarrow & {}^\exists b \in \Gamma(A'), a \in \Gamma^{-1}(b),\\   \Longleftrightarrow & a \in \Gamma^{-1}(\Gamma(A')). \end{align*}
したがって,$A' \subset \Gamma^{-1}(\Gamma(A'))$を満たす.

$[\impliedby]$:$A' \subset \Gamma^{-1}(\Gamma(A'))$として,$a \in A$を任意に取る.

もし$\Gamma(a) = \varnothing$と仮定すると,
\begin{equation*}   \{a\} \subset \Gamma^{-1}(\Gamma(\{a\})) = \Gamma^{-1}(\Gamma(a)) = \Gamma^{-1}(\varnothing) = \varnothing \end{equation*}

となって,$\{a\} = \varnothing$となるが,これは矛盾である.
したがって,$\Gamma(a) \neq \varnothing$である.

すなわち,$\Gamma$は左全域である.

(6). $[\implies]$:$\Gamma$を左一意として,$a \in \Gamma^{-1}(\Gamma(A'))$を任意に取る.
\begin{align*}   & a \in \Gamma^{-1}(\Gamma(A')),\\   \Longleftrightarrow & {}^\exists b \in \Gamma(A'), a \in \Gamma^{-1}(a),\\   \Longleftrightarrow & {}^\exists b \in B, b \in \Gamma(A'), b \in \Gamma(a),\\   \Longleftrightarrow & {}^\exists b \in B, {}^\exists a' \in A', b \in \Gamma(a') \cap \Gamma(a),\\   \Longleftrightarrow & {}^\exists a' \in A', \Gamma(a') \cap \Gamma(a) \neq \varnothing. \end{align*}
ここで,$\Gamma$が左一意だから,$a=a'$となる.
よって,$a \in A'$となるから,$\Gamma^{-1}(\Gamma(A')) \subset A'$

$[\impliedby]$:$\Gamma^{-1} (\Gamma (A')) \subset A'$とする.

$\Gamma$が左一意であることを示すために,$\Gamma(A_1) \cap \Gamma(A_2) \subset \Gamma(A_1 \cap A_2)$を示す.
$b \in \Gamma(A_1) \cap \Gamma(A_2)$を任意に取る.

ここで,$i=1,2$として,$\Gamma^{-1}(b) \subset \Gamma^{-1}(\Gamma(A_i))$を示す.
$a \in \Gamma^{-1}(b)$を任意に取る.

すると${}^\exists b \in \Gamma(A_i), a \in \Gamma^{-1}(b)$であるので,$a \in \Gamma^{-1}(\Gamma(A_i))$である.
よって,$\Gamma^{-1}(b) \subset \Gamma^{-1}(\Gamma(A_i))$である.
仮定より,$\Gamma^{-1} (\Gamma (A_i)) \subset A_i$ゆえ,$\Gamma^{-1}(b) \subset A_i$
したがって,$\Gamma^{-1}(b) \subset A_1 \cap A_2$

このとき,$a \in \Gamma^{-1}(b)$なら$a \in A_1 \cap A_2$ゆえ,${}^\exists a \in A_1 \cap A_2, b \in \Gamma(a)$である.
すなわち,$b \in \Gamma(A_1 \cap A_2)$
以上より,$\Gamma(A_1) \cap \Gamma(A_2) \subset \Gamma(A_1 \cap A_2)$ゆえ,$\Gamma$は左一意となる.$\square$

反例的なモノ1

対応$f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$を以下のように定める.
$f(x) = \{y \in \mathbb{R} \ | \ y = x^2\}$.

このとき$A$の部分集合として$A_1=[-2,-1], A_2=[1,2]$を取る.
$A_1 \cap A_2 = \varnothing$なので,$f(A_1 \cap A_2) = \varnothing$である.
一方で,$f(A_1)=[1,4], f(A_2)=[1,4]$なので,$f(A_1) \cap f(A_2) = [1,4]$である.

よって$f(A_1 \cap A_2) \not\supset f(A_1) \cap f(A_2) $となる$A_1, A_2$が存在するので,命題3 (4)より$f$は左一意でない.

反例的なモノ2

対応$f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$を以下のように定める.
$f(x) = \{y \in \mathbb{R} \ | \ y = \sqrt{x}\}$.

このとき$A$の部分集合として$A'=[-1,2]$を取る.
すると,$f([-1,2])=[0,\sqrt{2}]$$f^{-1}([0,\sqrt{2}])=[0,2]$である.
すなわち,$f^{-1}(f(A')) \not\supset A'$となる$A'$が存在するので,命題3 (5)より$f$は左全域ではない.

反例的なモノ3

対応$f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$を以下のように定める.
$f(x) = \{y \in \mathbb{R} \ | \ y=\sqrt{9-x^2} \}$.

このとき$A$の部分集合として$A'=[1,2]$と取る.
すると,$f([1,2])=[\sqrt{5}, 2 \sqrt{2}]$$f^{-1}([\sqrt{5}, 2 \sqrt{2}])=[-2,-1]\cup [1,2]$となる.
すなわち,$f^{-1}(f(A')) \not\subset A'$となる$A'$が存在するので,命題3 (6)より$f$は左一意でない.

以下の系は,命題3のそれぞれ$\Gamma$$\Gamma^{-1}$と置き換えたりしつつ,命題1,2を適用すれば導けます.(具体的な証明は省略)

命題3

対応$\Gamma:A \to B$があるとする.
$B_1, B_2, B'$$B$の部分集合とする.

(1). $B_1 \subset B_2 \implies \Gamma^{-1} (B_1) \subset \Gamma^{-1} (B_2)$
(2). $\Gamma^{-1} (B_1 \cup B_2) = \Gamma^{-1} (B_1) \cup \Gamma^{-1} (B_2)$
(3). $\Gamma^{-1} (B_1 \cap B_2) \subset \Gamma^{-1} (B_1) \cap \Gamma^{-1} (B_2)$
(4). $\Gamma$が右一意 $\Longleftrightarrow \Gamma^{-1} (B_1 \cap B_2) \supset \Gamma^{-1} (B_1) \cap \Gamma^{-1} (B_2)$
(5). $\Gamma$が右全域 $\Longleftrightarrow \Gamma (\Gamma^{-1} (B')) \supset B'$
(6). $\Gamma$が右一意 $\Longleftrightarrow \Gamma (\Gamma^{-1} (B')) \subset B'$

以上のことを考えると,命題3 系(4)から,写像の逆像の共通部分と共通部分の逆像は等しいというのは,写像が右一意な対応になってるから言えるんですね.

おわりに

命題3について,写像であるという厳しい条件のものに限らずに,対応でも同じようなことが言えそうだということがわかりました.
そもそも写像ってなんなんだろ~っていうところから集合論の教科書に書いてあったよくわからん式について考察を深めることで,色々学びになりました.
それではまたいつか~.

参考文献

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