こんにちは。このシリーズでは高校生以上を対象とした群論の解説をしていきたいと思います。そもそも群論のMathlogを見に来ている時点で,群論に関する知識は持っている方が多いと思いますが,懇切丁寧にわかりやすい解説を目指したいと思います。誤植・数学的な間違い等はコメントまたはTwitterのDMなどでお願いします。
この章では,群論を学ぶために必要な基礎知識について学習します。大学1年生の教養数学などで学ぶものなので先取りしておいて損はありません。


集合$A$の任意の元に対してそれぞれ集合$B$の元をただ1つずつ指定する規則$f$があるとき,$f$を$A$から$B$への 写像 といい,下の記法で表す。
$$ f:A\to B$$
このとき,$A$を$f$の定義域,$B$を$f$の終域という。
また,元の対応関係を $a\mapsto f(a)$ と表し,写像と合わせて次のように表すことが多い。
$$
\begin{array}{ccc} f \ \ \colon&A & \longrightarrow & B \\& ⫙ & & ⫙ \\ &a & \longmapsto & f(a)
\end{array} \qquad
$$
表示の都合上 $f:A\ni a\mapsto f(a)\in B$ と書くこともある。






集合$A$を日本国民全員,集合$B$を日本国民の名前全体とする。
このとき,名前を対応させる規則 $f:A\ni x\mapsto \text{($x$の名前)}\in B$ は写像である。
集合$A=\{g(x)\mid g(x)=a_nx^n+a_{n-1}a^{n-1}+\dots+a_1x+a_0\ (\text{$a_i$ はすべて実数})\}$,集合$B$を実数全体とする。
このとき,最高次の係数を対応させる規則 $f:A\ni g(x)\mapsto a_n\in B$ は写像である。

集合$A$を高校生全員,集合$B$を部活全体とする。
このとき,部活を対応させる規則 $f:A\ni x\mapsto (\text{$x\,$の所属する部活})\in B$ は写像でない。
集合$A$を0以上の実数,集合$B$を実数全体とする。
このとき,平方根を対応させる規則 $f:A\ni x \mapsto (\text{$x\,$の平方根})\in B$ は写像でない。


次の規則のうち,写像であるものをすべて選べ。
(1) $A,B$を実数全体とする。$f:A\ni x\mapsto (\text{$x$を四捨五入した値})\in B$
(2) $A,B$を実数全体とする。$f:A\ni x\mapsto (\text{$\sin y=x$ となる $y $ })\in B$
(3) $A$を自然数全体,$B$を干支全体とする。$f:A\ni n\mapsto (\text{西暦$\,n\,$年の干支})\in B$



次の記号は以下のような集合を指す。
$\N$:自然数の集合 $(=\{0,1,2,\dots\})$
$\Z$:整数全体の集合 $(=\{\dots,-2,-1,0,1,2\,\dots\} )$
$\Q$:有理数全体の集合 $(=\{a/b \mid a,b\in\Z,b\neq 0\})$
$\R$:実数全体の集合
$\C$:複素数全体の集合 $(=\{a+bi \mid a,b\in \R\})$






$f:A\to B$ を写像とする。
(1) $a\in A$ で $f(a)=b$ のとき,$b$は$a$の像である という。
また,$a$は$b$に「行く」などともいう。
(2) 部分集合 $S\subset A,T\subset B$ に対し,
$$ f(S)=\{f(a) \mid a\in S\ \}\ ,\ f^{-1}(T)=\{a\in A \mid f(a)\in T\ \} $$
とおき,$f(S)$ を $S$の像 ,$f^{-1}(T)$ を $T$の逆像 という。





$A=\{1,2,3,4\},B=\{a,b,c,d\}$とし,$f:A\to B$が以下を満たす写像とする。
$$ f(1)=a,f(2)=b,f(3)=b,f(4)=c$$
このとき,$A$の部分集合 $S=\{2,3,4\}$ の像は $f(S)=f(\{2,3,4\})=\{b,c\}$
$B$の部分集合 $T=\{a,b\}$ の逆像は $f^{-1}(T)=f^{-1}(\{a,b\})=\{1,2,3\}$
$B$の部分集合 $U=\{d\}$ の逆像は $f^{-1}(U)=f^{-1}(\{d\})=\varnothing$


$f:A\to B$ を写像とする。
(1) $f(a)=f(a') \implies a=a'$ が成り立つとき,$f$は 単射 であるという。
(2) 任意の$b\in B$ に対し,$f(a)=b$ となる $a\in A$ があるとき,$f$は 全射 であるという。
(3) $f$が単射かつ全射のとき,$f$は 全単射 であるという。
(4) 集合$A$から集合$B$への全単射写像があるとき,$A$と$B$は 1対1に対応する という。


$\R_{>0}$ を正の実数の集合とする。$f:\R\ni x\mapsto x^2\in\R_{>0}$ は写像である。
つまり,$f(x)=x^2\ (\text{$x$ は実数全体をとる})$ は写像である。





$\R_{>0}$ を正の実数の集合とする。$f:\R_{>0}\ni x\mapsto x^2\in\R_{>0}$ は写像である。
つまり,$f(x)=x^2\ (x>0)$ は写像である。




$f(a)=f(a')$ となる $a,a'\in\R_{>0}$ を考える。
このとき,$f(x)=x^2$ であるから,$a^2=a'{}^2$ となる。
ゆえに,$a^2-a'{}^2=(a+a')(a-a')=0$ である。
ここで,$a,a'\in\R_{>0}$ であるから,$a,a'?>0$ すなわち $a+a'>0$ を得る。
したがって,$a-a'=0$ となり,$a=a'$ である。
以上より,$f(a)=f(a')$ ならば $a=a'$ が成り立つので,$f$は単射である。$\qed$

$\R_{>0}$ を正の実数の集合とする。$f:\R_{>0}\ni x\mapsto x^2\in\R$ は写像である。
つまり,$f(x)=x^2\ (x>0)$ は写像である。





$b\in \R_{>0}$ を任意にとる。ここで,$b>0$ であるから,$a=\sqrt{b}\in\R_{>0}$ が存在する。
このとき,$f(a)=f(\sqrt{b})=(\sqrt{b})^2=b$ が成り立つ。よって,全射。$\qed$


$f:A\to B$ を全単射な写像とする。このとき,
$$ f^{-1}:B\in b\mapsto (f(a)=b \text{ となる $a$ })\in A$$
は写像となり,$f$の 逆写像 または 逆関数という。

まず,$f$は全射であるから,任意の$b\in B$に対して $f(a)=b$ となる$a\in A$は存在する。すなわち,任意の$B$の元に対して必ず$f^{-1}$の対応先が存在する。
また,$f$は単射であるから,$f(a)=b$ となる$a\in A$はただ1つである。よって,$f^{-1}$の対応先の一意性も示された。
したがって,$f^{-1}$は写像である。$\qed$


指数関数$f:[0,\infty)\in x \mapsto 2^x\in[0,\infty)$ は全単射で,逆写像が存在する。
これは,対数関数 $f^{-1}(x)=\log_2(x)$ である。
$f:[-\pi,\pi]\ni x \mapsto \sin{x}\in[-1,1]$ とすれば全単射で,逆写像が存在する。その逆写像を,$f^{-1}(x)=\arcsin(x)\ (x\in[-1,1])$ という。(読み方はアークサイン)
(注)$f^{-1}(x)=\sin^{-1}{x}$ と表すこともあるが,指数と勘違いしやすいので非推奨。
例えば,$f\qty(\dfrac{1}{2})=\dfrac{\pi}{6},f(0)=0,f(-1)=-\pi$ である。