0

逆写像の2つの定義の同値性の証明

33
0

はじめに

 タイトル通り,逆写像の2つの定義の証明をします(最初に写像の諸概念を定義します).

写像の諸概念の定義

写像

 AB を集合とする.Aの各元に対してBの元を対応させる規則をAからBへの写像といい,fがAからBへの写像であることを f:AB と書く.
 写像 f:AB に対して,Aを定義域といい,Bを終域という.PA に対して {f(x)xP}Bf(P) と書き,特に f(A)fの値域という.

逆像

 fAからBへの写像とし,QB に対して {xAf(x)Q}A を,fによるQの逆像といい,f1(Q)で表す.

全射

 fAからBへの写像とする.f(A)=B が成り立つとき,fAからBへの全射であるという.
 言い換えると,yBxAy=f(x) が成立することである.

単射

 fAからBへの写像とする.x,xA(f(x)=f(x)x=x) が成り立つとき,fAからBへの単射であるという.
 言い換えると,yf(A)!xA{x}=f1({y}) が成立することである.
 この2つの同値性は,

   x,xA(f(x)=f(x)x=x)
    yB(xAy=f(x)!xAy=f(x))
    yB(yf(A)!xAy=f(x))
    yB(yf(A)!xAxf1({y}))
    yB(yf(A)!xA{x}=f1({y}))
    yf(A)!xA{x}=f1({y})

より分かる.

全単射

 写像 f:AB が全射かつ単射であるとき,fAからBへの全単射であるという.

逆写像の2つの定義,その同値性

逆写像(定義その1)

 f:AB を全単射とする(このとき,各yBに対して y=f(x) なる xA がただ1つ存在する).yB に対してこのような xA を対応させるBからAへの写像をfの逆写像といい,f1で表す.

逆写像(定義その2)

 写像 f:AB に対して次の条件を満たす写像 g:BA を写像fの逆写像という.
gf=idAfg=idB

逆写像の定義

 上2つの逆写像の定義は同値である.

 定義6は全単射fに対する定義であるのに対し,定義7は一般の写像fに対する定義であるから,この2つが同値であるというのは,一見すると真偽以前の問題があるように思える.しかし,実際には定義7のfは全単射であることが示されるのでよい.

 定義6の条件を満たす写像 f1:BA が定義7の条件を満たすことを示す.
任意の xA に対して,
f1f(x)=f1(f(x))=x(s.t. f(x)=f(x))=x
であり,任意の yB に対して,
ff1(y)=f(f1(y))=f(x(s.t. f(x)=y))=y
であるから,示された.

 逆に,定義7の条件を満たす写像 g:BA が定義6の条件を満たすことを示す.
 まず,fが全単射であることを示す.全射であることは,yB を任意にとると,fg=idB より f(g(y))=y なので,x=g(y) とおけば f(x)=y が成立することよりよい.単射であることは,x1x2Af(x1)=f(x2) を満たすとすると,gf=idA より
x1=g(f(x1))=g(f(x2))=x2
であるのでよい.
 fは全単射であるから,f1:BA;yx(s.t. y=f(x)) が存在する.g=f1 を示す.写像の合成に関する結合法則より
g=gidB=g(ff1)=(gf)f1=idAf1=f1
となるのでよい(idB=ff1 は第1段落中の証明と同様に示される).

投稿日:51
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Ceadeus
Ceadeus
2
1303
情報系の学部1年生です。 数学科ではありませんが、数学科のカリキュラムに則って勉強していこうと思っています。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 写像の諸概念の定義
  3. 逆写像の2つの定義,その同値性