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大学数学基礎解説
文献あり

q-級数についてのまとめ1

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はじめに

本稿では数学的な厳密性を欠く議論が存在するかもしれないが,そういった部分に関しては適宜スルーして頂きたい.
また,基本的に断りが無ければ|q|<1であると仮定する.

q-Pochhammer記号

今後使っていく記号を先んじて定義しておく.

q-Pochhammer記号(q-Pochhammer symbol)

正の整数nに対し,次のような記号を定義する:
(a)n=(a;q)n=(1a)(1aq)(1aqn1)(a)=(a;q)=limn(a;q)n(a)0=1
これらの記号をq-Pochhammer記号(q-Pochhammer symbol)という.
また,一般に実数rに対しては,
(a)r=(a)/(aqr)
と定義される.

これらのことを踏まえて次の定理を示すことが本稿の目的である.

q-二項級数定理

q-二項級数定理(q-binomial series theorem)

|q|<1, |t|<1のとき,
1+n=1(1a)(1aq)(1aqn1)tn(1q)(1q2)(1qn)=n=01atqn1tqn
が成り立つ.

上の定理はq-Pochhammer記号を用いると,
n=0(a)ntn(q)n=(at)(t)
と書くことができる.

An=An(a,q)として,
F(t)=n=01atqn1tqn=n=0Antn
という式を考える.
ここで,
(1t)F(t)=(1at)n=11atqn1tqn=(1at)n=01atqn+11tqn+1=(1at)n=01a(tq)qn1(tq)qn=(1at)F(tq)
であり,A0=F(0)=1であることに注意して上の式のtnの係数を比較すると,
AnAn1=qnAnaqn1An1
すなわち,
An=1aqn11qnAn1
が分かる.よってこの式を繰り返し用いて,
An=(1aqn1)(1aqn2)(1a)A0(1qn)(1qn1)(1q)=(a)n(q)n
が分かる.これを元の式に代入することによって定理の主張を得る.

上の定理で,a=qα(α:非負整数)とおいて,q10とする極限操作を考えると,
1+n=1(α+n1n)tn=(1t)α
という式が得られる.この式は,二項級数定理として知られている.

参考文献

[1]
George E. Andrews, The Theory of Partitions, Cambridge Mathematical Library, Cambridge University Press, 1998, pp. 17-18
投稿日:2023620
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ぱに
ぱに
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幼少期から数が好きでした.そして気づいたら,qの虜になっていました. 基本的には自分の学んだことの整理の意味も兼ねて記事を書きます.

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  1. はじめに
  2. $q$-Pochhammer記号
  3. $q$-二項級数定理
  4. 参考文献