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現代数学解説
文献あり

Foata全単射

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n次対称群の元σ[n]:={1,2,,n}の順列σ(1)σ(2)σ(n)と同一視する. 前回の記事 で, 転倒数とmajor indexが等分布であるという以下の等式を示した.
σSnqinv(σ)=σSnqmaj(σ)
この等式により, 順列の中のinv(σ)=kのものとmaj(σ)=kのものの個数は等しいので, それらの間に直接全単射を構成するような証明ができることが期待される. それを与えるのがFoata全単射である.

Foata全単射

順列の間の写像ϕを順列の長さに関して再帰的に定義する. まず, 長さ2以下の順列に対しては, ϕ(σ):=σと定める. 長さn1の順列全体にϕが定まっているとする. 順列σ=a1anに対して, an1<anならば, 全てのanより小さいϕ(a1an1)の要素の後ろに|を挿入し, an1ならば, 全てのanより大きいϕ(a1an1)の要素の後ろに|を挿入する. それを行った後, 末尾にanを挿入する. そのようにして順列が|によっていくつかのブロックに分けられたものが得られる. 各ブロックにおいて, b1bmbmb1bm1と変換して|を取り除いたものをϕ(a1an)と定める.

定義が複雑なので, 具体例で計算してみる. [8]の順列をσ=71283645とする. まず,
ϕ(71)=71
である. 1<2であるから, 2より小さい1の後ろに|を入れる.
71|2
各ブロックは71,2であり, それぞれに対して, 7117,22となって,
ϕ(712)=172
となる. 次に, 2<8であるから, 8より小さい1,7,2の後ろに|を入れる.
1|7|2|8
これより,
ϕ(7128)=1728
となる. 次に8>3なので, 3より大きい全ての要素の後ろに|を入れる.
17|28|3
これより,
ϕ(71283)=71823
以下, 同様の計算を続けると,
ϕ(712836)=172836ϕ(7128364)=7182634ϕ(71283645)=17283645
となる.

Foata(1968)

ϕは順列の間の全単射であり, 任意の順列σに対して,
maj(σ)=inv(ϕ(σ))
が成り立つ.

まず, 上の定義を逆にたどることによってϕの逆写像が与えられることを示す. 長さn1までの順列に逆写像が与えられているとする. 長さnの順列a1anに対して, a1<anならば, a1an1の中で, anより小さいaiの前に|を挿入し, a1>anならば, anより大きいaiの前に|を挿入することによってa1an1がいくつかのブロックに分けられる. 各ブロックにおいて, b1bmb2bmb1と変換したものをc1cn1とするとき, ϕ1(a1an)=ϕ1(c1cn1)anによって定まる. 後半を示す. n=1のときは明らか. nに関する帰納法で示す. 長さn1の順列に対して成り立っているとして, σ=a1anとする. 仮定より, c1cn1=ϕ(a1an1)と書くと,
maj(a1an1)=inv(c1cn1)
である. cn1>anのとき, ciの中でanより大きいものの後ろに|を挿入してできる各ブロックはb1bmbmb1bm1となり, この部分でϕ(a1an)の転倒数は元の順列と比べてm1だけ増加する. また末尾にanが加わることによって, 転倒数はブロックの数だけ増加することになる. よって転倒数は全体でn1だけ増加する. 一方, cn1=an1>anより, major indexもn1だけ増加する. よって,
maj(a1an)=inv(ϕ(a1an))
である. 次に, cn1<anのとき, ciの中でanより小さいものの後ろに|を挿入してできるブロックはb1bmbmb1bm1となり, この部分で転倒数はm1だけ減少する. また, 末尾にanが加わることによって転倒数はn1からブロックの数を引いた数だけ増加する. よってこれらを合わせると転倒数は変わらないことが分かる. 一方, cn1=an1<anより, major indexも変わらない. よってこの場合も
maj(a1an)=inv(ϕ(a1an))
が成り立つことが分かる.

降下集合をDes(σ):={1in1;σ(i)>σ(i+1)}とする.

Foata-Schützenberger(1978)

ϕをFoata全単射とするとき, 任意の順列σSnに対して,
Des(σ1)=Des(ϕ(σ)1)
が成り立つ.

Des(σ1)σの中でiより前にi+1が並んでいるような1in1の個数である. よって, σ の中でiより前にi+1が並んでいるとき, ϕ(σ)においてもiより前にi+1が並んでいることを示せばよい. ϕの計算において, |を入れるときに, iの後ろに|が入ることと, i+1の後ろに|が入ることが同値になる. i,i+1の順番が入れ替わるのは, iの後ろに|が入りi+1の後ろには|が入らない必要があるが, その場合が起こりえないことを意味している.

これより, 以下のようなMacMahonの等式の精密化が得られる.

任意のS[n1]に対して,
σSnDes(σ1)=Sqinv(σ)=σSnDes(σ1)=Sqmaj(σ)
が成り立つ.

参考文献

[1]
Dominique Foata, On the Netto Inversion Number of a Sequence, Proceedings of the American Mathematical Society, 1968, 236-240
[2]
Dominique Foata, Marcel-Paul Schützenberger, Major Index and Inversion Number of Permutations, Math. Nachr, 1978, 143-159
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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