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ζ(1)はγなのか?

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$$\newcommand{bm}[0]{\boldsymbol} \newcommand{o}[2]{\ordi{#1}{#2}{}} \newcommand{ok}[2]{\ordi{}{#1}{#2}} \newcommand{ordi}[3]{\frac{d #1^{#3}}{d #2^{#3}}} \newcommand{p}[2]{\part{#1}{#2}{}} \newcommand{part}[3]{\frac{\partial #1^{#3}}{\partial #2^{#3}}} \newcommand{pk}[2]{\part{}{#1}{#2}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{Res}[0]{\operatorname{Res}} $$

はじめに

どうもこんにちは、🐟️🍊みかん🍊🐟️です。今回は個人的に好きな話題、Riemannゼータ関数の$s=1$における値がEuler--Mascheroni定数に「なる」という話をしていこうと思います。この記事ではRiemannゼータ以外に(名前をつけて)ゼータ関数を用いないので、ゼータといえばRiemannゼータのことを指します。今回の記事は厳密さを捨てて議論の大筋が分かるように簡明にしました。

$\zeta(1)$は古典的な意味の和でも発散(調和級数)することは非常によく知られていますが、解析接続を行った後の値もゼータ値$\zeta(s)$$s=1$で留数1の一位の極をもつために発散します。それ故に、「調和級数は正規化ができない級数」として認知している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いくつかの方法で無理矢理和を求めることができます。ここではある方法で調和級数の「値」を求めることにしていきます。本記事では和空間との連繋を考え、無限級数の和について、むしろ(古典的な意味ではなく)正規化した値をもってその和と見なすことにします。

調和級数の「求値」

Cauchyの主値を用いる

一班手頃なのがCauchyの主値を用いる方法です。まず、ゼータ関数は、Stieltjes定数を用いて次のようにLeurant展開されます。

$$ \zeta(1+s)=\frac1s+\sum_{n\ge0}\frac{\gamma_n}{n!}(-s)^n $$

証明はここでは省略しますが、これにより$\zeta(1)$のCauchy主値が$\gamma$になることが分かります。

少し違う和を考える

次の関数を定義します。

(Mercator zeta)

右辺の和が古典的な意味で収束するとき、
$$ \xi(s)=\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^s+1} $$

名前の由来はMercator級数の積分表示からきていますが、本記事では$\xi$で書くので混乱しないと思います。大まかな考えで行くと、これを解析接続して$s=1$を入れて$1$を加えることで上手く計算できないか、ということになります。因みに、簡単な計算(ほとんど留数定理を繰り返し用いているだけ)により正の整数値の特殊値は求まって、

$$ \xi(2m)=-\frac12+\frac\pi{2m}\sum_{k=1}^m e^{i\pi\frac{2k-1}{2m}}\operatorname{cot}\left(\pi e^{i\pi\frac{2k-1}{2m}}\right) $$

のように計算することもできます。(これ以上計算する気力はありませんでした)(誰かやって...😭)

さて、もとの定義をDigamma関数を用いて計算することを考えます。$\zeta_k$$-1$の原始$k$乗根とおくことで、次のように無理矢理変形することができます。次の式変形は正整数でなければ通用しませんが、上手く改良すれば一般の複素数にも刺るので細かいことは気にしないで行きましょう。

\begin{aligned} \xi(s)&=\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^s+1}\\ &=-\frac1s\sum_{n=1}^\infty\sum_{k=1}^s\frac{\zeta_s^k}{n-\zeta_s^k}\\ &=\frac1s\sum_{k=1}^s\zeta_s^k\psi(1-\zeta_s^k)\\ \end{aligned}

厳密な理論は(長ったらしいので)書きませんが、本来はHankel積分路を利用するなどして解析接続するような動作が必要になります。面倒なのでここでは記事にしません。(まず図を入れるのが面倒...)ここで、両辺$1$の場合を考えると

\begin{aligned} \xi(1) &=-\psi(2)\\ &=\gamma-1 \end{aligned}

と計算されるので、両辺に$1$を加えることで、結果的に

$$ \zeta(1)=\sum_{n=1}^\infty\frac1n=\gamma $$

を形式的に求めることができました。(解析接続自体の等式は先に述べた形で大方あっていますが、$s$が一般の複素数の時に困ってしまうので、適切に式を変形してやる必要がありこの記事の本題から逸れるので省略します)

非常に直感的な導出にも関わらず、先のと同じ値が出てきましたね。不思議ですね。

Digamma関数の級数展開

結果的に、次の積分等式が成立します。(初めから解析接続たあとのことを考えているので、積分の収束性については一旦パス)

$$ \int_0^\infty x^{s-1}\psi(x+1)dx=-\zeta(-s)\Gamma(s) $$

計算ミスしてたらすみません。従って、RMTを逆に利用することで次の級数展開を得ます。

$$ \psi(x+1)=-\sum_{k=1}^\infty\zeta(k)(-x)^{k-1} $$

この結果は大まかにみれば既知ですね。しかし、明らかに$\psi(1)$$\zeta(1)=\infty$であるのは不合理なので、真に等号を成り立たせるためには$\zeta(1)=\gamma$とせざるを得なくなります。あまりきれいな論法な気はしませんが、やっぱりここでも$\zeta(1)$がEuler--Mascheroni constantが出てきました。不思議ですね。

おわりに

本記事では調和級数に対して無理矢理有限値を与えるということをしてみました。不可解な解析接続で得られる等式はいくつかありますが、個人的に好きなものはこれです。上手く考えると「確かに直感的にもそうかも...」みたいなやり方もあるみたいなので少し考えてみても面白いかもしれません。

$$ \int_{-\infty}^\infty e^xdx=0 $$

解析接続を施した後の結果は「等式ではない」とする人が多いですが、このような和の正規化については僕の数学力を越えるくらいかなり深い理論が形成されていて、どうやら無理矢理正当化するような議論が展開されていたりするみたいですね。

この記事で、和空間のような強力な理論をもってしても正当化できないとか、解析接続した結果に合致しない、Collatz予想の反例等ありましたらお知らせください。

投稿日:20231023

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投稿者

怠惰なB1らしいです.どうしてB1になってしまったのであろうか

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