本稿では、$7^2$、$7^3$などの$7$ の非負整数羃の面白いと思った性質について述べる。
なお、以降、$7$ の非負整数羃を「ナナベキ」と呼ぶことにする。
さっそく、まとめ。
ナナベキを順に計算してみる。
\begin{eqnarray}
\begin{array}{lcr}
7^0 &=& 1 \\
7^1 &=& 7 \\
7^2 &=& 49 \\
7^3 &=& 343 \\
7^4 &=& 2401 &\equiv& 1 \pmod{100}
\end{array}
\end{eqnarray}
このことから次の命題が成立する。
$n$を非負整数としたとき、
$$
7^n \equiv \begin{eqnarray}
\left\{\;
\begin{array}{rc}
1 &\pmod{100} \; \cdots \; n \equiv 0 \pmod{4} \\
7 &\pmod{100} \; \cdots \; n \equiv 1 \pmod{4} \\
49 &\pmod{100} \; \cdots \; n \equiv 2 \pmod{4} \\
43 &\pmod{100} \; \cdots \; n \equiv 3 \pmod{4} \\
\end{array}
\right.
\end{eqnarray} \;.
$$
平たく言うと、$7$ の $ 2$ 乗、$ 3$ 乗、... と $ 7$ の自然数乗を見ていったときに、下 $2$ 桁は $01$、 $07$、$49$、$43$ のいずれか、ということである。
命題1より、次の命題もすぐに導かれる。
連続する四つの非負整数による $7$ の羃乗数の和の下$2$桁は$00$である。
すなわち、$n$ を $n\geq0$ なる整数として、
$$
\sum_{k=0}^{3}7^{n+k} \equiv 0 \pmod{100} \;.
$$
たとえば、
$$
\begin{array}{lclcr}
7^0+7^1+7^2+7^3 &=& 1 + 7 + 49 + 343 &=& 400, \\
7^1+7^2+7^3+7^4 &=& 7 + 49 + 343 + 2401 &=& 2800, \\
7^4+7^5+7^6+7^7 &=& 2401 + 16807 + 117649 + 823543 &=& 60400, \\
\end{array}
$$
など。
(自然数 $m$ に素な) 自然数 $a$ の羃を $m$ で割ったときの余りは循環するが、一周回ってくるまでどれくらいか、という値を「$m$ を法とする $a$ の位数」と呼ぶ。
$m$ を法とする $a$ の位数 $\mathrm{ord}_m(a)$ とは、$a^v$が$m$ を法として $1$ と合同になるような最小の自然数 $v$ のことである。
$$
\mathrm{ord}_m(a) \overset{\text{def}}{\;=\;} \underset{v\,\in\, \mathbb{N}} {\operatorname{argmin}} \lbrace a^v \equiv 1 \pmod{m} \rbrace
$$
$a$ を $m$ で割ったときの余りは、$a$ を $m$ 進数表示したときの最終桁、とも言える。
$a$ を $m^2$ で割ったときの余りは、$\alpha m + \beta$ という形をとり、これは、$a$ を $m$ 進数表示したときの下$2$桁、とも言える。
同様に、$a$ を $m^k$ で割ったときの余りは、$a$ を $m$ 進数表示したときの下$k$桁、と言える。
そうすると、$m^k$ を法とする $a$ の位数$\mathrm{ord}_{m^k}(a)$ は「$a$ の冪乗数を $m$ 進数表示したときの下 $k$ 桁」が何種類あるのかを表している、と言える。
命題1 を位数の観点から捉えると、次のことが言える。
$\mathrm{ord}_{10}(7) = \mathrm{ord}_{100}(7) = 4 \;.$
この $4$ という値が、一般的な位数よりどれくらい小さいのか、ということを見ていく。
トーシェント関数 $\varphi(m)$ を用いると、$m$と互いに素な $a$ に対して、次のオイラーの定理が成り立つ。
$$ a^{\varphi(m)} \equiv 1 \pmod{m} \;. $$
位数の定義から、$ \mathrm{ord}_m(a) \leq \varphi(m) $、より詳しく言うと $\mathrm{ord}_m(a)$ は$ \varphi(m)$ の約数、すなわち
$ \mathrm{ord}_m(a) \mid \varphi(m)$ である。
一般的なトーシェント関数についての値は割愛するが、$10$ の冪乗についてのトーシェント関数は、$k$ を自然数として、次式で与えられる。
$$
\varphi(10^k) = 2^{k+1} \cdot 5^{k-1} = 4 \cdot 10^{k-1} \;.
$$
これとオイラーの定理を合わせると、次の命題が成り立つ。
$2$ と $5$ を素因数に含まない自然数 $a$ に対して、
$$
a^{4 \cdot 10^{k-1} } \equiv 1 \pmod{10^k} \; .
$$
すなわち、$a$ の冪乗数の下 $k$ 桁はたかだか $4 \cdot 10^{k-1}$ 種類以下、正確には$4 \cdot 10^{k-1}$ の約数である $\mathrm{ord}_{10^k}(a) $ 種類の下 $k$ 桁が出現する、ということである。
たとえば、$a = 3$ の場合、$\mathrm{ord}_{10}(3) = 4,\,\mathrm{ord}_{100}(3) = 40 $ である。
$k>2$ の場合の$10^k$ を法とした $7$ の位数を求めてみる。
$w_k$を、$m^k$ を法としたときの $a$ の位数とする。すなわち、$w_k = \mathrm{ord}_{m^k}(a)$。
このとき、$m^{k+1}$ を法とした合同を考えると、$0\leq b < m$ なる整数 $b$ を用いて、
$$
a^{w_k} \equiv bm^k + 1 \pmod{m^{k+1}},
$$
と表すことができる。
位数の定義より、$v< w$ ならば、$ a^v\not\equiv 1 \pmod{m^{k}}$ なので、自然数 $c$ を用いると、
$$
\begin{array}{l}
&a^{cw_k+v} = (a^{w_k})^c \cdot a^v \equiv 1^c \cdot a^v \equiv a^v \not\equiv 1 \pmod{m^{k}}, \\
\therefore &a^{cw_k+v} \not\equiv 1 \pmod{m^{k+1}}.
\end{array}
$$
つまり、$m^{k+1}$ を法とした位数 $w_{k+1} $ は、$m^k$ を法とした位数 $w_k$ の倍数になるはずである。
また、
$$
a^{cw_k} = (a^{w_k})^c \equiv (bm^k + 1)^c \pmod{m^{k+1}},
$$
二項展開を用いて
$$
a^{cw_k} \equiv (bm^k + 1)^c \equiv cbm_k+1\pmod{m^{k+1}}.
$$
したがって、$a^{cw_k}$ が $m^{k+1}$ を法として $1$ と合同になるには、$cbm_k$ が $0$ と合同である必要がある。
$b$ の値によらず、$c=m$ ならば$cbm_k \equiv 0 \pmod{m^{k+1}} $ なので、 $m^{k+1}$ を法とした位数 $w_{k+1}= \mathrm{ord}_{m^{k+1}}(a)$は $cw_k$ 以下である。
まとめると、次のようになる。
$m^k$ を法としたときの $a$ の位数を$w_k$とすると、$m^{k+1}$ を法としたときの $a$ の位数$w_{k+1}$ は、
$$
w_{k+1} = c w_k,
$$
と書ける。
ただし、$c$ は $1\leq c< m$ なる自然数である。
このことから、$w_k = \mathrm{ord}_{m^k}(a)$ がわかっているときには、自然数 $c$ を $1$ から順に試し、$(a^{w_k})^c \equiv 1 \pmod{m^{k+1}}$ となるものとして $\mathrm{ord}_{m^{k+1}}(a)$ を求めることができることがわかる。
$k>2$のときの $\mathrm{ord}_{10^k}(7) $を計算するために、次の${\large\varUpsilon}_k^n s$を定義する。
自然数 $k$、非負整数 $n$、$2$と$5$で割り切れない非負整数 $s$ に対して、${\large\varUpsilon}_k^n s$を次のように定義する。
$$
{\large\varUpsilon}_k^n s \overset{\text{def}}{\;=\;} 2^{k+n}\cdot5^k\cdot s + 1 = 2^ns\cdot10^k + 1
$$
${\large\varUpsilon}_k^n s$は、10進数表記したときに、$2^ns$のうしろに $k-1$ 個の $0$ と最後に $1$ をつけた数と言ってもよい。$s$ は素因数として $2$ も $5$ も含まないので、$2^ns$の末尾が $0$ になることはない。すなわち、${\large\varUpsilon}_k^n s - 1$の末尾に付く $0$ の個数はちょうど $k$ 個で 下 $k+1$ 桁目は $0$ でない。
また、定義より${\large\varUpsilon}_k^n s \equiv 1 \pmod{10^k}$ もあきらか。
ちなみに、
$$
7^4= 2401 = 24\cdot100+1 = 2^3\cdot3\times10^2+1 = {\large\varUpsilon}_2^3 3,
$$
である。
ここで、$({\large\varUpsilon}_k^n s)^c$ を計算してみる。
二項定理より、
$$
({\large\varUpsilon}_k^n s)^c = (2^ns\cdot10^k+1)^c \equiv c(2^ns\cdot10^k)+1 \pmod{10^{k+1}}\;.\\
$$
$s$は$5$を素因数に含まないので、
$$
({\large\varUpsilon}_k^n s)^c \equiv c(2^ns\cdot10^k)+1 \equiv \begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
2^ncs\cdot10^k+1 & \not\equiv 1 \pmod{10^{k+1}} &\dots\; c < 5 \\
5s\cdot10^{k}+1 & \not\equiv 1 \pmod{10^{k+1}} &\dots\; c = 5 \, \land\, n = 0 \\
2^{n-1}s\cdot10^{k+1}+1 &\equiv 1 \pmod{10^{k+1}} &\dots\; c = 5 \, \land\, n \geq 1 \\
\end{array}
\right.
\end{eqnarray} \;\;.
$$
つまり、次の性質が成り立つ。
$10^k$ を法としたときの $a$ の位数が$w_k$で、かつ、$a^{w_k} = {\large\varUpsilon}_k^n s$のとき、$10^{k+1}$ を法としたときの $a$ の位数 $w_{k+1}$ は、$n=0$ のとき $10w_k$、$n\geq 1 のとき $$5w_k$ である。
$n\geq 1$ のときの $({\large\varUpsilon}_k^n s)^5 $を計算してみる。
$$
\begin{array}{l}
({\large\varUpsilon}_k^n s)^5 &= (2^ns\cdot10^k+1)^5\\
&= (2^ns\cdot10^k)^5 + 5\cdot(2^ns\cdot10^k)^4 + 10\cdot(2^ns\cdot10^k)^3 + 10\cdot(2^ns\cdot10^k)^2 + 5\cdot(2^ns\cdot10^k) + 1\\
&= 2^{5n}s^5\cdot10^{5k} + 2^{4n-1}s^4\cdot10^{4k+1} + 2^{3n}s^3\cdot10^{3k+1} + 2^{2n}s^{2s}\cdot10^{2k+1} + 2^{n-1}s\cdot10^{k+1} + 1\\
&= 2^{n-1}( 2^{4n+1}s^4\cdot10^{4k-1} + 2^{3n}s^3\cdot10^{3k} + 2^{2n+1}s^2\cdot10^{2k} + 2^{n+1}s\cdot10^{2k+1} + 1)s\cdot10^{k+1} + 1\\
&= 2^{n-1}{\large\varGamma}_k^ns + 1.\\
\end{array}
$$
ここで、${\large\varGamma}_k^ns$ は、便宜的に次のように定義したものである。
$$
{\large\varGamma}_k^ns \overset{\text{def}}{\;=\;} 2^{4n+1}s^4\cdot10^{4k-1} + 2^{3n}s^3\cdot10^{3k} + 2^{2n+1}s^2\cdot10^{2k} + 2^{n+1}s\cdot10^{2k+1} + 1.
$$
この定義から ${\large\varGamma}_k^ns \equiv 1 \pmod{2} \;\land\; {\large\varGamma}_k^ns \equiv 1 \pmod{5} $ が言えるので、
$$
({\large\varUpsilon}_k^n s)^5 = 2^{n-1}{\large\varGamma}_k^ns + 1 = {\large\varUpsilon}_{k+1}^{n-1} {\large\varGamma}_k^ns.
$$
$7^k$ について適用してみると、$7^4= {\large\varUpsilon}_2^3 3 \;\land\;\mathrm{ord}_{10^2}(7) = 4 $であったから、命題7より、$n>0$の間は
$$
\begin{array}{l}
\mathrm{ord}_{10^2}(7) = 4 &\land& 7^4 = {\large\varUpsilon}_2^3 3, \\
\mathrm{ord}_{10^3}(7) = 5\cdot\mathrm{ord}_{10^2}(7) = 20 &\land& 7^{20} = (7^4)^5 = ({\large\varUpsilon}_2^3 3)^5 = {\large\varUpsilon}_{3}^{2} {\large\varGamma}_2^3 3, \\
\mathrm{ord}_{10^4}(7) = 5\cdot\mathrm{ord}_{10^3}(7) = 100 &\land& 7^{100} = (7^{20})^5 = ( {\large\varUpsilon}_{3}^{2} {\large\varGamma}_2^3 3)^5 = {\large\varUpsilon}_{4}^{1} {\large\varGamma}_{3}^{2} {\large\varGamma}_2^3 3, \\
\mathrm{ord}_{10^5}(7) = 5\cdot\mathrm{ord}_{10^4}(7) = 500 &\land& 7^{500} = (7^{100})^5 = ({\large\varUpsilon}_{4}^{1} {\large\varGamma}_{3}^{2} {\large\varGamma}_2^3 3)^5 = {\large\varUpsilon}_{5}^{0} {\large\varGamma}_{4}^{1} {\large\varGamma}_{3}^{2} {\large\varGamma}_2^3 3, \\
\end{array}
$$
となり、ここで $n=0$ となるので、$\mathrm{ord}_{10^6}(7) = 10\cdot\mathrm{ord}_{10^5}(7) = 5000$となる。
前節の結果と合わせてまとめると、次表のようになる。
$k$ | $A=10^k$ | $B_7=\mathrm{ord}_{10^k}(7)$ | $B_7/A$ | $B_\star=\varphi(10^k)$ | $B_\star/A$ | $B_7/B_\star$ |
---|---|---|---|---|---|---|
$1$ | $~~~~10$ | $ ~~4$ | $0.4~~$ | $~~~~4$ | $0.4$ | $1~~~~~$ |
$2$ | $~~~100$ | $ ~~4$ | $0.04~$ | $~~~40$ | $0.4$ | $0.1~~~$ |
$3$ | $~~1000$ | $ ~20$ | $0.02~$ | $~~400$ | $0.4$ | $0.05~~$ |
$4$ | $~10000$ | $ 100$ | $0.01~$ | $~4000$ | $0.4$ | $0.025~$ |
$5$ | $100000$ | $ 500$ | $0.005$ | $40000$ | $0.4$ | $0.0125$ |
$6$ | $1000000$ | $ 5000$ | $0.005$ | $400000$ | $0.4$ | $0.0125$ |
$7$ | $10000000$ | $ 50000$ | $0.005$ | $4000000$ | $0.4$ | $0.0125$ |
$\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ |
表の見かたであるが、たとえば、$k=4$ で言えば、$2$や$5$を素因数に含まない自然数の羃の下4桁は、$4000$種類あるのが普通だが、ナナベキに関しては $100$ 種類しか現れない、ということである。