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応用数学解説
文献あり

【量子情報理論】フォンノイマンエントロピーとシャノンエントロピーの関係

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はじめに

フォン・ノイマンエントロピーとシャノンエントロピー関係について説明する。まずはじめにそれぞれの定義をおさらいしよう。

それぞれの定義

フォン・ノイマンエントロピー(von Neumannエントロピー)

フォン・ノイマンエントロピー$H(\rho)$は密度演算子$\rho$を用いて以下で定義される。
$$ H(\rho):=- \Tr \rho \log \rho $$

シャノン・エントロピー(Shannonエントロピー)

シャノン・エントロピーとは確率変数$X$における確率を$p_i$としたとき以下で定義される。

$$ H(X):=- \sum_i p_i \log p_i $$

それぞれの関係

フォンノイマンエントロピーは量子状態におけるシャノンエントロピーである。実際に密度演算子を固有値分解することでシャノンエントロピーの形式に戻すことができる。

導出過程の確認の前準備(必要な定義や定理の確認)

導出過程に必要な定義や公式について整理する。

密度演算子

密度演算子とは以下を満たす演算子のことである
$$ \rho >0 ,\Tr \rho =1 $$

この密度演算子を固有値分解してあげた形が以下である。

密度演算子(固有値分解した形で表現したもの)

$$ \rho = \sum_i p_i\ketbra{\psi_i}{\psi_i} $$

演算子の関数

正規演算子$A=\sum_{k=i}^{d}a_k \ketbra{\phi_k}{\phi_k}$としたとき$f(A)$
$$ f(A):=\sum_{k=1}^{d}f(a_k) \ketbra{\phi_k}{\phi_k} $$
になる。

これのイメージとしては関数は固有値にしか反応しないことを意味する。
この演算子の関数より
$\log \rho = \sum_{k=1}^{d}\log (p_i) \ketbra{\phi_k}{\phi_k}$であることに注意する。

トレースの性質

トレースの性質としていかが成り立つ。
$$ \Tr (\ket{\psi}\bra{\phi}) = \braket{\phi}{\psi} $$

導出過程

\begin{align} H(\rho)&:=- \Tr \rho \log \rho\\ & =- \Tr \sum_{i=1}^d p_i\ketbra{\psi_i}{\psi_i} (\sum_{k=1}^{d}\log (p_k) \ketbra{\psi_k}{\psi_k})\\ &= - \Tr\sum_{i=1}^d \sum_{k=1}^{d} p_i \log (p_k) \ketbra{\psi_i}{\psi_i} \ketbra{\psi_k}{\psi_k}\\ &= -\Tr \sum_{i=1}^d \sum_{k=1}^{d} p_i\log (p_k) \ket{\psi_i} \braket{\psi_i}{\psi_k} \bra{\psi_k}\\ &=-\Tr \sum_{i=1}^d p_i\log (p_i) \ketbra{\psi_i}{\psi_i}\\ &=- \sum_{i=k}^dp_i \log (p_i) \Tr \ketbra{\psi_i}{\psi_i}\\ &=-\sum_{i=1}^d p_i\log (p_i) \braket{\psi_i}{\psi_i}\\ &=-\sum_{i=1}^d p_i\log (p_i)\\ &= H(X) \end{align}
したがって、フォンノイマンエントロピーからシャノンエントロピーを導出できた。

参考文献

[1]
石坂 智 著・ 小川 朋宏 著・ 河内 亮周 著・ 木村 元 , 量子情報科学入門 第2版, 共立出版, 2024
投稿日:1日前
OptHub AI Competition

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投稿者

大学院生

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