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大学数学基礎解説
文献あり

「代数学の基本定理」の証明

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補題

代数学の基本定理の証明を行う.証明の方針は,野村隆昭先生の「複素関数論講義」(共立出版)を参考にした.

KCをコンパクト集合とし,fK上の連続関数とする.このとき,像f(K)もコンパクトである.

f(K)が有界閉集合であることを示せばよい.

f(K)が有界でないなら,点列{zn}K(n=1,2,)で,|f(zn)|となるものが存在する.Kは有界なので,Bolzano-Weierstrassの定理から,部分列{zn}が存在して,あるz0Cに収束する.Kは閉集合ゆえ,z0Kである.関数fは連続ゆえ,|f(znk)||f(z0)|となるが,これは{zn}の取り方に反する.ゆえに,f(K)は有界集合である.

また,w0Cl(f(K))として,f(zn)w0となる点列znKをとる.fは連続ゆえ,あるαC が存在して,znαf(α)=w0となる.Kは閉集合ゆえ,αKだから,w0=f(α)f(K).したがって,f(K)は閉集合である.

Cl(f(K))f(K)の閉包を表す.

補題1と同じ仮定で,|f|Kで最大値も最小値もとる.

|f|の像|f|(K)Rに含まれる有界閉集合である.したがって,a0:=inf|f|(K),b0:=sup|f|(K)はともに有限値であり,しかも|f|(K)に属する.明らかに,a0|f|の最小値,b0|f|の最大値である.

C上の多項式P(z)の絶対値|P(z)|は,Cにおいて最小値をとる.

P(z)が定数のときは明らか.n1とし,P(z)=anzn++a1z+a0(an0)とおく。z0のとき,
|P(z)|=|zn||an+an1z+a1zn1+a0zn||z|n(|an||an1||z||a0||z|n)
であるから,zとして,|P(z)|を得る.ゆえに,
L>0s.t.|z|>L|P(z)|>|P(0)|
集合{zC:|z|1}は有界閉集合,すなわちコンパクト集合なので,補題2より|P(z)|はこの集合上で最小値mをもち,m|P(0)|であるから,このmC全体における|P(z)|の最小値である.

代数学の基本定理

代数学の基本定理

P(z)C係数のn(1)次多項式とする.P(z)は重複も込めて,ちょうどn個の根をもつ.

背理法

P(z)C0にならないと仮定する.このとき,補題3により,|P(z)|はあるaCで正の最小値をもつ.

さて,Q(z):=P(z+a)P(a)とおくと,|Q(z)|z=0で最小値1をもつ.

ここで,Q(z)=1+bzk+(高次の項)(0bC)とする.1bk乗根を1個選んでωとする.Q(tω) (tR)を考えると,Q(tω)=1tk+o(tk) (t0)となるので,
limt+01|Q(tω)|tk=limt+01(1tk+o(tk))(1tk+o(tk))tk(1+|Q(tω)|)=limt+02tk+o(tk)tk(1+|Q(tω)|)=limt+02+o(1)1+|Q(tω)|=21+1=1.
ゆえにtが十分小のとき,1|Q(tω)|>0,すなわち|Q(tω)|<1である.これは,|Q(z)|の最小値が1であることに矛盾する.

したがって,任意のn次多項式P(z)(ただしn1)はCに根をもち,P(α)=0となるαCがあることがわかる.因数定理よりP(z)=(zα)R(z)と書けることがわかり,(n1)次の多項式R(z)に再び今の議論を適用する.そしてこの議論を繰り返して次数を下げていくことにより,P(z)が,重複も込めて,ちょうどn個の根をもつことがわかる.

参考文献

[1]
野村隆昭, 複素関数論講義, 共立出版, 2021
投稿日:15
更新日:15
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大学で主に数学や教育学を学んでいます。このブログでは、数学や数学教育にまつわる日々の学びや考えを発信していくつもりです。趣味は和太鼓/和楽器の演奏🥁

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