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大学数学基礎解説
文献あり

作用素で漸化式を解く

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こんにちは,itouです.

導入

微分の世界の作用素と差分の世界の作用素には以下の対応がある.

数列($n$の関数)$a_n$であって,多項式係数漸化式
\begin{align} &L=\sum_{k=0}^{s}f_kN^k\\ &La_n=0 \end{align}
($f_k$$n$の多項式,$N$$Na_n=a_{n+1}$なる演算子.なお$N^{-1}a_n=a_{n-1}$.)
に対し,指数型母関数

\begin{align} y=\sum_{n\geq 0}\frac{a_n}{n!}x^n \end{align}

が満たす微分方程式が対応する.

変数$n$変数$x$
$N$$D=\dv{x}$
$n$オイラー作用素$\vartheta=x\dv{x}$
$nN^{-1}$$x$(をかける作用素)

それぞれ見ていく.
\begin{align} Dy&=\sum_{n\geq 1}\frac{a_n}{(n-1)!}x^{n-1}\\ &=\sum_{n\geq 0}\frac{a_{n+1}}{n!}x^n\\ &=\sum_{n\geq 0}\frac{Na_{n}}{n!}x^n \end{align}

\begin{align} \vartheta y&=\sum_{n\geq 1}\frac{a_n}{(n-1)!}x^{n}\\ &=\sum_{n\geq 1}\frac{na_{n}}{n!}x^n\\ &=\sum_{n\geq 0}\frac{na_{n}}{n!}x^n \end{align}

\begin{align} xy&=\sum_{n\geq 0}\frac{a_n}{n!}x^{n+1}\\ &=\sum_{n\geq 0}\frac{na_{n-1}}{n!}x^n\\ &=\sum_{n\geq 0}\frac{nN^{-1}a_{n}}{n!}x^n \end{align}

したがって,以下のような対応が分かる.
\begin{align} L(n,N,nN^{-1})a_n=0 \longleftrightarrow L(\vartheta,D,x)y=0 \end{align}

\begin{align} a_n=\frac{(\alpha)_n(\beta)_n}{(\gamma)_n} \end{align}
とすると,
\begin{align} ((n+\gamma)N-(n+\alpha)(n+\beta))a_n=0 \end{align}
より,
\begin{align} \left((\vartheta+\gamma)D-(\vartheta+\alpha)(\vartheta+\beta) \right)y=0 \end{align}
$y$はガウスの超幾何級数である.上の式がガウスの超幾何微分方程式:
\begin{align} (x(1-x)D^2+\{\gamma-(\alpha+\beta+1)x\}D-\alpha\beta)y=0 \end{align}
に一致することは,
\begin{align} D\vartheta=(\vartheta-1)D \end{align}
に注意して計算するとわかる.

このようにして微分方程式と漸化式の世界をつなぐことができる.調和振動子を生成消滅演算子で解くことを漸化式の世界でも見てみよう.

調和振動子

調和振動子の解き方を軽く復習しておく.

ハミルトニアンは
\begin{align} \hat{H}=-\dv[2]{x}+\frac{1}{2}x^2 \end{align}
である.シュレディンガー方程式:
\begin{align} \hat{H}|\psi\rangle=E|\psi\rangle \end{align}
を生成消滅演算子を使って解こう.

消滅演算子$\hat{a}$,生成演算子$\hat{a}^\dagger$を以下のように定義する.
\begin{align} \hat{a}&:=\frac{1}{\sqrt{2}}(x+\dv{x})\\ \hat{a}^\dagger&:=\frac{1}{\sqrt{2}}(x-\dv{x}) \end{align}

交換関係:
\begin{align} [\dv{x},x]=\dv{x}x-x\dv{x}=1 \end{align}を用いると,

\begin{align} &\hat{a}\hat{a}^\dagger=H+\frac{1}{2}\\ &\hat{a}^\dagger\hat{a}=H-\frac{1}{2}\\ \end{align}
と計算できる.よって
\begin{align} H=\hat{a}^\dagger\hat{a}+\frac{1}{2} \end{align}
と交換関係
\begin{align} [\hat{a},\hat{a}^\dagger]=1 \end{align}

が分かる.

数演算子$\hat{N}$
\begin{align} \hat{N}:=\hat{a}^\dagger\hat{a} \end{align}
と定義する.
計算により数演算子がエルミート作用素であることはすぐに分かる.そのため,固有値は実数.固有値を$n$,固有関数を$|n\rangle$とする.つまり

\begin{align} \hat{N}|n\rangle=n|n\rangle. \end{align}
$\hat{N}$$\hat{a}|n\rangle,\hat{a}^\dagger|n\rangle $に作用しよう.

先の交換関係を用いると,
\begin{align} \hat{N}\hat{a}|n\rangle&=(n-1)\hat{a}|n\rangle\\ \hat{N}\hat{a}^\dagger|n\rangle&=(n+1)\hat{a}^\dagger|n\rangle \end{align}
がわかる.これは$\hat{a}|n\rangle$$|n-1\rangle$,$\hat{a}^\dagger|n\rangle$$|n+1\rangle$が定数倍の違いを除いて同じという意味.

内積を自然に定めて計算することで,その定数を見つけることができて,
\begin{align} \hat{a}|n\rangle&=\sqrt{n}|n-1\rangle\\ \hat{a}^\dagger|n\rangle&=\sqrt{n}|n+1\rangle\\ \end{align}

という訳で$\hat{a}|n\rangle$$1$だけ小さい固有値を対応させる.さて,$n$$\hat{a}|n\rangle $のノルムの2乗に等しいが,これは0以上.よって「1だけ小さくなる」の繰り返しには限界があり,つまり

\begin{align} \hat{a}|0\rangle=0 \end{align}
であればよい.これから固有値$n$が非負整数であったこともわかる.

上の式を解いて,
\begin{align} |0\rangle=Ae^{-\frac{x^2}{2}} \end{align}

一般に,
\begin{align} (\hat{a}^\dagger)^n|0\rangle=\sqrt{n!}|n\rangle \end{align}

漸化式へ

上でやったことを$n$の作用素にしよう.各種記号は混同して使う.

\begin{align} \hat{H}&:=-N^2+\frac{1}{2}(nN^{-1})^2\\ \hat{a}&:=\frac{1}{\sqrt{2}}(nN^{-1}+N)\\ \hat{a}^\dagger&:=\frac{1}{\sqrt{2}}(nN^{-1}-N) \end{align}

として上のように論理を展開すればよい.
なお,
\begin{align} Dx-xD=1 \end{align}

\begin{align} NnN^{-1}-n=1 \end{align}
に対応する.

結局,
\begin{align} &\hat{a}|0\rangle=0\\ &(\hat{a}^\dagger)^n|0\rangle=\sqrt{n!}|n\rangle \end{align}
を得る.

\begin{align} |0\rangle=s_n \end{align}

とおけば,$\hat{a}|0\rangle=0$
\begin{align} (nN^{-1}+N)s_n=ns_{n-1}+s_{n+1}=0. \end{align}
これはすぐに解くことができ,
\begin{align} &s_{2n}=(-1)^n(2n-1)!!s_0\\ &s_{2n+1}=(-1)^n(2n)!!s_1\\ \end{align}
したがって,$|n\rangle$も得られた.

参考文献

投稿日:711
更新日:718
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