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東大数理院試過去問解答例(2014B08)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2014B08の解答例を解説していきます(ただし解説の都合で少し改変してあります)。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2014B08(改)

正整数$n$について$\zeta:=\exp\left(\frac{i2\pi}{n}\right)$とおく。ここで$3$次元球面$S^3:=\{(z_1,z_2)\in\mathbb{C}^2||z_1|^2+|z_2|^2=1\}$上の同値関係$(z_1,z_2)\sim(z_1',z_2')$
$$ \exists a\in\mathbb{Z}\textsf{ s.t. }(z_1',z_2')=(\zeta^az_1,\zeta^az_2) $$
を満たすこととして定める。ここで自然な商写像$\pi:S^3\twoheadrightarrow S^3/\sim$及び$A:=\{(z_1,z_2\in S^3)|z_2\in\mathbb{R}\}$を考える。

  1. 整係数ホモロジー群$H_\ast(\pi(A);\mathbb{Z})$を求めなさい。
  2. $n=3$のとき、連続写像$r:S^3/\sim\to \pi(A)$で、$r|_{\pi(A)}=\mathrm{id}_{\pi(A)}$であるようなものは存在しないことを示しなさい。
  1. まず$A$$2$次元球面である。まず$n$が偶数$2s$であったとする。このとき$A$上の点$(x,y)$及び$(z,w)$が同値であるための条件は$(x,y)=\pm(z,w)$を満たすことである。よって$\pi(A)=S^2/\{\pm1\}=\mathbb{R}P^2$であり、これによって
    $$ {\color{red}H_\ast(\pi(A);\mathbb{Z})=\left\{\begin{array}{cc} \mathbb{Z}&(\ast=0)\\ \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}&(\ast=1)\\ 0&(\textsf{if else}) \end{array}\right.} $$
    がわかる。一方$n$が奇数のとき$\pi(A)$$S^2$と同相であるから、
    $$ {\color{red}H_\ast(\pi(A);\mathbb{Z})=\left\{\begin{array}{cc} \mathbb{Z}&(\ast=0,2)\\ 0&(\textsf{if else}) \end{array}\right.} $$
    である。
  2. まず$S^3/\sim$はレンズ空間$L(3;1)$であるから、そのホモロジー群は
    $$ H_\ast(S^3/\sim;\mathbb{Z})=\left\{\begin{array}{cl} \mathbb{Z}&(i=0,3)\\ \mathbb{Z}/3\mathbb{Z}&(i=1)\\ 0&(\textsf{if else}) \end{array}\right. $$
    である。ここである$r:S^3/\sim\to \pi(A)$で、$\pi(A)\subseteq S^3/\sim\xrightarrow{r}\pi(A)$
    恒等写像になるようなものが存在したとすると、このとき
    $$ H_2(\pi(A);\mathbb{Z})\to H_2(S^3/\sim;\mathbb{Z})\to H_2(\pi(A);\mathbb{Z}) $$
    も恒等写像になるが、$H_2(\pi(A);\mathbb{Z})=\mathbb{Z}$である一方$H_1(S^3/\sim;\mathbb{Z})=0$であるから、このようなことは起こり得ない。よって所望の$r$は存在しない。
投稿日:223
更新日:223

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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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