自分用のノート
$↓^Px := \set{y \in P \setmid y \le x}$とする。
Boole代数について: https://mathlog.info/articles/D2eYWclDN66J4HYRKzW8
半順序集合$P$の部分集合$I$が$P$のイデアルであるとは、以下を満たすことをいう。
なぜこれをイデアルというのかを考えてゆく。
上半束$P$の部分集合$I$が$P$のイデアルであることは以下と同値。
[$I$が条件を満たす ⇒$I$は$P$のイデアル]
$\indent$[$I \not= \varnothing$]
$\dindent$仮定より成り立つ。
$\indent$[下方集合]
$\dindent$仮定より成り立つ。
$\indent$[共通上界をもつ]
$\dindent$$i,j \in I$を取る。
$\dindent$$z = i\vee j$と置けば、$z \in I$であり、$i \le z$かつ$j \le z$である。
[$I$が条件を満たす ⇐$I$は$P$のイデアル]
$\indent$[$I \not= \varnothing$]
$\dindent$仮定より成り立つ。
$\indent$[下方集合]
$\dindent$仮定より成り立つ。
$\indent$[結びで閉じる]
$\dindent$$i,j \in I$を取る。
$\dindent$$i,j$の上界$z \in I$を取る。
$\dindent$$i \vee j$は$i,j$の最小上界だから、$i \vee j \le z$
$\dindent$$I$は下方集合だから、$i \vee j \in I$
Boole代数とは、可補分配束のこと。
Boole代数は和を$x + y = (x \wedge \neg y) \vee (\neg x \wedge y)$、積を$\wedge$で入れることで可換環になる。
そこで、Boole代数の環としてのイデアルがどのような形をしているかを考えてみる。
Boole代数$B$に対し、部分集合$I$が環としてのイデアルであることは半順序集合のイデアルであることと同値。
[$I$が半順序集合のイデアル ⇔$I$が環のイデアル]
[⇒]
$\indent$[$I \not= \varnothing$]
$\dindent$仮定より成り立つ。
$\indent$[和で閉じる]
$\dindent$$i, j \in I$を取る。
$\dindent$$i+j = (i \wedge \neg j) \vee (\neg i \wedge j)$である。
$\dindent$ここで、$(i \wedge \neg j) \le i$であり、$I$は下方集合だから$(i \wedge \neg j) \in I$
$\dindent$同様に、$(\neg i \wedge j) \in I$
$\dindent$$I$は結びで閉じるから、$i+j \in I$
$\indent$[$B$倍で閉じる]
$\dindent$$i \in I$を取る。
$\dindent$$r \in B$を取る。
$\dindent$$ri = r \wedge i \le i$であり、$I$は下方集合だから、$ri \in I$
[⇐]
$\indent$[$I \not= \varnothing$]
$\dindent$仮定より成り立つ。
$\indent$[結びで閉じる]
$\dindent$$i, j \in I$を取る。
$\dindent$$i \vee j = i + j + ij$である。
$\dindent$$I$は環のイデアルだから、$ij \in I$であり、和でも閉じるから、$(i+j) + ij \in I$。
$\dindent$よって、$i \vee j \in I$。
$\indent$[下方集合である]
$\dindent$$i \in I$を取る。
$\dindent$$r \in B$を取る。($r \le i$)
$\dindent$$r \le i$だから、$r \wedge i = r$
$\dindent$$ri = r \wedge i = r$であり、$I$は環のイデアルだから、$r \in I$
イデアルの双対概念をフィルターという。
半順序集合$P$の部分集合$I$が$P$のフィルターであるとは、以下を満たすことをいう。
下半束$P$の部分集合$F$が$P$のフィルターであることは以下と同値。
最小元を持つ上半束$L$において、任意個のイデアルの共通部分はイデアルである。
$(I_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$を$L$のイデアルの族とする。
$I = \bigcap_{\lambda \in \Lambda}I_{\lambda}$と置く。
[$I \not= \varnothing$]
$\indent$全ての$\lambda \in \Lambda$に対し、$0 \in I_{\lambda}$であるから、$0 \in I$
[結びで閉じる]
$\indent$$i,j \in I$を取る。
$\indent$全ての$\lambda \in \Lambda$に対し、$i \vee j \in I_{\lambda}$であるから、$i \vee j \in I$
[下方集合]
$\indent$$i \in I$を取る。
$\indent$$r \in ↓^Li$を取る。
$\indent$全ての$\lambda \in \Lambda$に対し、$r \in I_{\lambda}$であるから、$r \in I$
$L$自身もイデアルであるから、最小元を持つ上半束においてイデアル全体は閉包系を成す。
よって、$L$の任意の部分集合に対しそれを含む最小のイデアルを取ることができる。
最小元を持つ上半束$L$とその部分集合$S$に対し、$S$を含む最小のイデアル$\gen{S}$は以下のような形をしている。
$$\gen{S} = \left\{ x \in L \mid \exists s_1, s_2, \cdots, s_n \in S; x \le s_1 \vee s_2 \vee \cdots \vee s_n \right\}$$
但し、$\gen{\varnothing} = \set{0}$と定める。
[$I = \gen{S}$は$L$のイデアル]
$\indent$[空でない]
$\dindent$$L$は最小元$0$を持つから、$S = \varnothing$のときは定義より$I = \{0\}$となり空ではない。
$\dindent$$S \neq \varnothing$のときは、任意の$s \in S$を取れば$s \le s$だから$s \in I$となり空ではない。
$\indent$[下方集合]
$\dindent$$x \in I$を取る。
$\dindent$$y \le x$なる$y \in P$を取る。
$\dindent$$x \in I$より、ある$s_1, \dots, s_n \in S$が存在して$x \le s_1 \vee \dots \vee s_n$となる。
$\dindent$推移律より$y \le x \le s_1 \vee \dots \vee s_n$だから、$y \in I$である。
$\indent$[結びで閉じる]
$\dindent$$x, y \in I$を取る。
$\dindent$定義より、$x \le s_1 \vee \dots \vee s_n$、$y \le t_1 \vee \dots \vee t_m$となる$S$の元が存在する。
$\dindent$$L$は上半束だから、$x \vee y$が存在する。
$\dindent$$x \vee y \le (s_1 \vee \dots \vee s_n) \vee (t_1 \vee \dots \vee t_m)$であり、右辺は$S$の有限個の元の結びであるから、$x \vee y \in I$である。
[$I$は$S$を含む最小のイデアル]
$\indent$各$s \in S$は$s \le s$を満たすため、$S \subset I$
$\indent$$S$を含むイデアルを$K$を取る。(少なくとも$L$が存在する。)
$\indent$$x \in I$を取る。
$\indent$定義より$x \le s_1 \vee \dots \vee s_n$($s_i \in S \subset K$)と表せる。
$\indent$$K$はイデアルであり有限個の結びで閉じるから、$s_1 \vee \cdots \vee s_n \in K$である。
$\indent$$K$は下方集合であるため、$x \le s_1 \vee \dots \vee s_n$より$x \in K$となる。
$\indent$よって、$I \subset K$
特に単項生成されたイデアルは$(x) = ↓^Lx$と表せる。
フィルターに関しても同様。
半順序集合$L$の増加列$(x_n)_{n \in \N}$に対し、
$I = \bigcup_{n \in \N}↓^Lx_n$は$L$のイデアル。
[$I \not= \varnothing$]
$\indent$明らか。
[下方集合]
$\indent$$i \in I$を取る。
$\indent$$r \in ↓^Li$を取る。
$\indent$ある$n \in \N$があって、$i \in ↓^Lx_n$であり、$r \in ↓^Lx_n$だから、$r \in I$
[共通上界]
$\indent$$a,b \in I$を取る。
$\indent$$a \in ↓^Lx_n$、$b \in ↓^Lx_m$なる$n,m$を取る。
$\indent$[$n \le m$の場合]
$\dindent$増加列として$(x_n)_{n \in \N}$を取ってきているから、$↓^Lx_n \supset ↓^Lx_m$
$\dindent$即ち、$a,b \in ↓^Lx_n$
$\dindent$$↓^Lx_n$はイデアルだから$a,b$の共通上界$z$を持つ。
$\dindent$この時、$z \in ↓^Lx_n \subset I$であるから、$a,b$は$I$の中に共通上界を持つ。
$\indent$[$m \le n$の場合]
$\dindent$同様
$0$を持つ上半束$L$において、以下の同値が成り立つ。
$L$の任意のイデアルが単項生成 ⇔ $L$がACCを満たす
[⇒]
[i.e. 任意の空でない部分集合が極大元を持つ]
$\indent$極大元を持たない空でない部分集合$A$があると仮定する。
$\indent$$A$から狭義増加列$x_0 < x_1 < \cdots$を取る。
$\indent$$I = \bigcup_{n \in \N}↓^Lx_n$と置くと、これは$L$のイデアルである。
$\indent$仮定より、$I = ↓^Lm$となる$m \in L$が取れる。
$\indent$$m \in I$であるから、ある$k \in \N$があって、$m \in ↓^Lx_k$
$\indent$この時、$m = x_k$となる。
$\indent$一方、$m \in ↓^Lx_{k+1}$でもあり、従って、$m = x_{k+1}$
$\indent$これは$x_k < x_{k+1}$に矛盾。
$\indent$従って、極大元を持たない空でない部分集合はない。
[⇐]
$\indent$$L$のイデアル$I$を取る。
$\indent$$I$は空でないから、ACCより、極大元$m$を持つ。
$\indent$$I$が$m$のほかに極大元を持つと仮定すると、その共通上界が存在するから、$m$の極大性に矛盾する。
$\indent$従って、$m$は最大元であった。
$\indent$$I = ↓^Lm$と表されることを示す。
$\indent$[$\subset$]
$\dindent$$i \in I$を取ると、$i \le m$だから、$i \in ↓^Lm$
$\indent$[$\supset$]
$\dindent$$i \in ↓^Lm$を取ると、$m \in I$であり、$I$は下方集合であるから、$i \in I$
環においてNoether環であることと任意のイデアルが有限生成であることは同値であったが、束においてはさらに単項生成であることさえ言えてしまう。
半順序集合$P$のイデアル$M$が極大イデアルであるとは、以下を満たすことをいう。
これは環論における極大イデアルの定義と全く同じである。
同様に、イデアルの双対であるフィルターについても極大性を定義できる。
極大フィルターは超フィルター (Ultrafilter)とも呼ばれる。
束$L$のイデアル$I$が素イデアルであるとは、以下を満たすことをいう。
束$L$のフィルター$F$が素フィルターであるとは、以下を満たすことをいう。
一般の可換環において「極大イデアルならば素イデアルである」が成り立つが、逆は一般には成り立たない。(例えば$\mathbb{Z}$における零イデアル$(0)$など)
しかし、Boole代数においては「極大イデアル」と「素イデアル」は一致する。
$1$を持つ分配束$L$において、極大イデアルは素イデアルである。
$I$を$L$の極大イデアルとする。
$x \wedge y \in I$とする。
$x \in I$ならok。そうでないとする。
$I \cup \set{x}$を含む最小のイデアルを$I'$と置く。
$I \subsetneq I'$であり$I$は極大だから$I' = B$
この時、$1 \in I'$であるから、ある$i \in I$が存在して、$1 \le i \vee x$(即ち$1 = i \vee x$)と表せる。
この式の両辺と$y$との交わりをとる。
$y = y \wedge 1 = y \wedge (i \vee x)$
分配律より、
$y = (y \wedge i) \vee (y \wedge x)$
ここで、右辺の2つの元について考える。
(1)$y \wedge i \le i$であり、$i \in I$かつ$I$は下方集合なので、$y \wedge i \in I$である。
(2) 仮定より$x \wedge y \in I$なので、$y \wedge x \in I$である。
$I$は結びで閉じるので、これらの結びである$y$も$I$に属する。
よって、$x \in I$または$y \in I$
Boole代数$B$のイデアル$I$について、以下は同値である。
[1 ⇒ 3]
$\indent$$I$は素イデアルとする。
$\indent$Boole代数の性質から、任意の$x \in B$について$x \wedge \neg x = 0$である。
$\indent$イデアルは下方集合であり、$0$は最小元なので、$0 \in I$である。
$\indent$従って、$x \wedge \neg x \in I$
$\indent$$I$は素イデアルなので定義より、$x \in I$または$\neg x \in I$である。
$\indent$両方が$I$に属すると仮定すると、$x \vee \neg x = 1 \in I$となり、$I = B$となって$I \subsetneq B$に矛盾するため、一方のみが成り立つ。
[3 ⇒ 2]
$\indent$条件3を満たすイデアル$I$に対し、$I \subsetneq J \subseteq B$となるイデアル$J$をとる。
$\indent$$x \in J \setminus I$を取る。
$\indent$条件3より、$x \notin I$ならば$\neg x \in I$である。
$\indent$$I \subsetneq J$なので、$\neg x \in J$でもある。
$\indent$即ち、$x, \neg x \in J$である。
$\indent$$J$はイデアルなので結びで閉じる。
$\indent$よって、$x \vee \neg x = 1 \in J$
$\indent$最大元$1 \in J$であるから、$J = B$となる。
$\indent$よって$I$は極大イデアルである。
[2 ⇒ 1]
$\indent$$1$を持つ分配束において極大イデアルは素イデアルである。
フィルターについても同様。