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相対論的速度の加法則を導いてみる

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光速度に光速度を足しても光速度

NHK Eテレのテレビ番組「3か月でマスターするアインシュタイン」楽しく視聴している。
$2$回(2025/7/9初回放送)の内容のアインシュタインの特殊相対性理論の光速度不変のお話で興味深い式が出てきた。
光の速度を超えるものはない。光速で走る乗り物から光を放ったら、止まっている地上から見ると、普通の速度の感覚では光速度の$2$倍になりそうだけどならない。番組の予告やナレーションでは「1+1=1」という式でたとえられてもいた。
[Link]「 第2回 光より速いものはない? - 3か月でマスターするアインシュタイン - NHK

乗り物の速度$v$とそこから同じ方向へ放った物体の速度$V$とすると、地上から見た速度は、単なる足し算ではなく以下のように分母がある式になる。

相対論的速度の加法則(足゛し算)
$v$:乗り物の速度
$V$:乗り物から同じ方向へ放った物体の速度
$v⊕V=\frac{v+V}{1+\frac{vV}{c^2}} $

$\frac{vV}{c^2} \rightarrow 0$では$v⊕V \rightarrow v+V$
$v,V \rightarrow c$では$v⊕V \rightarrow c $
日常での速度の加法則も光速度の場合も含んでいる。

講師の小林晋平先生が、「足゛し算(だしざん)」といって紹介されていた式、$30 $分の番組では導出まではしてなかったので、どうやって導くのかなと思ったので、ウィキペディアや書籍などを参照しながら、導いてみようと思った。(単なるコピペではなく納得できる理由を考えながら)
ちなみに、テキスト「 NHK3か月でマスターする アインシュタイン (おとなの学びシリーズ) | 小林 晋平 Amazon 」 にもこの式の導出は見当たらなかった。

本記事は、素人が書いたものなので、誤解や間違いがあるかもしれない。何か問題があれば、ご指摘いただきたい。

相対論的速度の加法則の導出

一次元空間での等速運動を考える

簡単にするために、一次元空間で考える。時間を入れると二次元時空になる。
止まっている静止座標系$S$と速度$v$で等速運動している座標系$S'$を考える。光速度$c$は不変で、位置と時間は座標系、座標系の速度によって変わるとする。
$x$:$S$の座標,$t$:$S$の時間,$X$:$S'$の座標,$T$:$S'$の時間
として、

$S$でみた運動を$S'$の座標で表す
座標変換の式
$X=α x+β t$
$T=γ x+δ t$
とする。
ただし、$α,β,γ,δ$$v$(SからみたS'の速度)の関数で$x,t$に依存しないとする。$α(v)$のように書くこともある。

$S'$の原点を$S$から見たら速度$v$で移動しているので、
$0=αvt+β t$なので、$t \neq 0$として、$β=-αv $である。
逆に$S$の原点を$S'$から見たら速度$-v$で移動しているので、
$-vT=α 0+β t$
$T=γ 0+δ t$
より、$ βt+δvt=0$なので $t \neq 0$として、$β=-δv $である。$-αv=β=-δv $$v \neq 0$として、$α=δ$

光速度不変を使う

ここで、$t=T=0$の時に、$x=X=0$から放たれた光をそれぞれから見ると、光速度不変の原理により
$\frac{X}{T} \rightarrow c$,$\frac{x}{t} \rightarrow c$
なので、
$\frac{X}{T}=\frac{α x+β t}{γ x+δ t}=\frac{α \frac{x}{t}+β}{γ \frac{x}{t}+δ}$$c$を代入して
$c=\frac{αc+β}{γc+δ}$
$γc^2+δc=αc+β $
$β=-αv,α=δ$より、$α$$γ$だけの式にして$γ$$α$で表す。
$γc^2+αc=αc-αv $
$γc^2=-αv $
$γ=-\frac{αv}{c^2} $

$S'$$S$との立場を逆転させる

座標変換の式を$x,t$についてとくと、
$x=\frac{1}{αδ-βγ}(δX-βT)$
$t=\frac{1}{αδ-βγ}(-γX+αT)$
これは$S'$から見た$-v$で運動している$S$での運動の座標変換である。

$x$の式の$T$の係数
$-\frac{β(v)}{α(v)δ(v)-β(v)γ(v)}$
$β(-v) $に等しい。そして、$X$の式における$t$の係数$β(v)$$t$の増分に対する$X$の変化なので、$v$$-v$にしたときは、反対方向になるので、$-β(v)$と等しい。

$-\frac{β(v)}{α(v)δ(v)-β(v)γ(v)}= β(-v)=-β(v)$
$α(v)δ(v)-β(v)γ(v)=αδ-βγ=1$
すべて$α$で表すと、
$αα-(-αv)(-αv/c^2) =1$
$α^2(1-(\frac{v}{c})^2)=1$
$α>0$なので、
$α=\frac{1}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}} $
$β=-αv=-\frac{v}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}}$
$γ=-αv/c^2=-\frac{\frac{v}{c^2}}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}} $
よって$S,S'$互いの座標変換は、

$X=\frac{x-vt}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}}$
$T=\frac{-\frac{v}{c^2}x+t}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}}$
$x=\frac{X+vT}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}}$
$t=\frac{\frac{v}{c^2}X+T}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}}$

となる。これが、いわゆるローレンツ変換の座標変換である。

速度の加法則

$S'$(乗り物がS'の原点)から見た速度$V=\frac{X}{T}$で運動する物体を、$S$から見た場合の速度が、$v⊕V=\frac{x}{t}$なので、
$\frac{x}{t}=\frac{X+vT}{\frac{v}{c^2}X+T}=\frac{\frac{X}{T}+v}{\frac{v}{c^2}\frac{X}{T}+1}$の右辺の
$\frac{X}{T}$$V$に置き換えて、

相対論的速度の加法則(足゛し算)
$v⊕V=\frac{V+v}{\frac{vV}{c^2}+1}=\frac{v+V}{1+\frac{vV}{c^2}}$

となる。∎

参考ウィキペディア

[Link]「 特殊相対性理論 - Wikipedia
[Link]「 ローレンツ変換 - Wikipedia
[Link]「 ミンコフスキー空間 - Wikipedia

終わりに

「3か月でマスターするアインシュタイン」は素晴らしい番組で、アインシュタインと彼の理論とその周辺について、わかりやすく解説してくれる。現実的にはアインシュタインの理論を$3$か月でマスターできるわけではないし、$30$分間では、特定の回の内容でもこの式のように、詳細は割愛されたり、解説があっても視聴しているだけでは流れてしまって置いて行かれることもある。しかし、この番組で知った事やキーワードをもとにウィキペディアやウェブ記事の閲覧、図書館の本を借りたり、書店の書籍購入での勉強のキッカケなると思う。
「3か月でマスターする〇〇」はどれも素晴らしいのでどんどん続いてほしい。NHKもNHK以外もこのような番組や数学・科学の番組をどんどん制作・放送してほしい。

投稿日:817
更新日:817
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IIJIMAS
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