どうもこんにちは、🐟🍊みかん🍊🐟です。今回は共通テストが終わったということもあって、共通テストに関係した記事を書きたいと思います!
さて、共通テスト数IIBのいわゆる「確率分布」、みなさん解いていらっしゃるでしょうか。僕はベクトル難化した時の逃げ道として確保している程度の人間で普段解いている人間ではないのですが、しかし必ず出てくるこの表、皆さんどうお思いでしょうか。
R5年共通テスト数IIB43ページより
この数字の羅列、せっかく与えられているので使いたくなりせんか?
使いたいですよね?
そう、使いたいんですよ。
というわけで今回はこの正規分布表を使って全力で情報を読み取っていきたいと思います。ちゃんと評価するので、もしかしたら多少はもう少しやりようがあるかもしれません。あと、この記事に書いてある計算を実用的に行うためには$\sqrt{2\pi}$とその逆数の値を覚えていないと使い物にならないのであまり受験向けではない気がします。
といっても、正規分布表が何かわからない人もいるかもしれないので念のため解説をば。正規分布表は、要するに積分
$$
f(x)=\frac1{\sqrt{2\pi}}\int_0^xe^{-\frac12t^2}dt
$$
の値の表です。例えば$x=0.01$のときであれば
$$
0.00395\le f(0.01)<0.00405
$$
ということになります。つまり正規分布表の値を微分すると指数関数の値が分かります。微分というのは差分である程度近似できるので、ある程度きめ細かい正規分布表が手元にあれば指数関数の計算を足し算掛け算だけで指数関数の値が求められることになりますね。
まずは不等式評価します。まず、Lagrange平均値の定理によって、ある$\xi\in(x,x+h)$が存在して
\begin{aligned}
f(x+h)-f(x)
&=hf^\prime(\xi)\\
&=\frac h{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac12\xi^2}
\end{aligned}
となるので、指数関数の単調性とを合わせると指数関数の値は次の不等式で評価できることになります。
$$
\frac{f(x)-f(x-h)}h\sqrt{2\pi}< e^{-\frac12x^2}<\frac{f(x+h)-f(x)}h\sqrt{2\pi}
$$
また四捨五入の影響で表の値を厳密に読み取ると$0.0001$のずれが生じるので、先にその補正を済ませておくと
$$
\frac{f(x)-f(x-h)-0.0001}h\sqrt{2\pi}< e^{-\frac12x^2}<\frac{f(x+h)-f(x)+0.0001}h\sqrt{2\pi}
$$
となります。
まずは$e^{-1}$の値を求めましょう。両辺共通で$h=0.01$、左辺には$x=1.41$、右辺には$x=1.42$を代入することで、$\sqrt2\in(1.41,1.42)$であるので
$$
\frac{f(1.41)-f(1.4)-0.0001}h\sqrt{2\pi}< e^{-1}<\frac{f(1.43)-f(1.42)+0.0001}h\sqrt{2\pi}
$$
これを整理すると、大学入試センターにより
$$
0.350928...< e^{-1}<0.375994...
$$
両辺の平均を以て近似値とするなら$e^{-1}\approx0.363461...$で、実際には$e^{-1}=0.36787944...$なのでまぁまぁといったところか。近似としては割とあまあまですね。
次に$e^{-\frac12}$の値を求めます。これは両辺共通で$h=0.01,x=1$を代入すればおしまいで、
$$
\frac{f(1)-f(0.99)-0.0001}h\sqrt{2\pi}< e^{-1}<\frac{f(1.01)-f(1)+0.0001}h\sqrt{2\pi}
$$
従って大学入試センターにより
$$
0.576525< e^{-\frac12}<0.651723
$$
ちなみにこれを両辺平方するとおおまかに
$$
0.332381< e^{-1}<0.424743
$$
なので、誤差が拡大しています。「でも平方根の計算めんどくさいじゃん」という人もいるかもしれないですが、正直言って開平法知っているならあまり困らない気もします。
そういえば、今年の共通テスト数IAでも$\sqrt{13}$の値を知っているか計算方法知っていれば無双できる問題出ましたね。僕はNewton法を使ってゴリゴリしました。(関係ない)
最後に$2$の自然対数の値を評価したいと思います。まずは$-\ln2=\ln\frac12$の値を求めます。指数と対数が互いに逆関数の関係にあることに注意すれば、
$$
e^{-\ln2}=\frac12
$$
がわかることと、Lagrange平均値の定理から得られた不等式を変形して
\begin{eqnarray}
\frac{f(x)-f(x-h)}h\sqrt{2\pi}&<&e^{-\frac12x^2}&<&\frac{f(x+h)-f(x)}h\sqrt{2\pi}\\
f(x)-f(x-h)&<&\frac{he^{-\frac12x^2}}{\sqrt{2\pi}}&<&f(x+h)-f(x)
\end{eqnarray}
となり、$\frac12x^2=\ln2$となるような$x$に対して
$$
f(x)-f(x-h)<\frac{h}{2\sqrt{2\pi}}< f(x+h)-f(x)
$$
となります。$h=0.01$として中央の項を計算すると
$$
\mathrm{MHS}=0.0019947...
$$
となります。これを満たすような$x$をとってこればいいはずなので、正規分布表を逆読みすることで$x\in(1.16,1.18)$であることが分かります。従って、$\ln2=\frac12x^2$としていたので
$$
0.6728<\ln2<0.6962
$$
が分かります。実際は$\ln2=0.6931...$なので、上からの評価に比べ下からの評価がゆるゆるなことが分かります。理由を考えてみると面白いかもしれません。参考までに、大学入試センターにより次の表が作れます。
$x$ | $1.13$ | $1.14$ | $1.15$ | $1.16$ | $1.17$ | $1.18$ | $1.19$ | $1.20$ | $1.21$ | $1.22$ | $1.23$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$\lceil f(x+h)\rfloor-\lceil f(x)\rfloor$ | $0.0021$ | $0.0020$ | $0.0021$ | $0.0020$ | $0.0020$ | $0.0020$ | $0.0019$ | $0.0020$ | $0.0019$ | $0.0019$ | $0.0018$ |
表の外側に$0.0019,0.0020$となる値はありません。
さて、いかがだったでしょうか。思い付きで計算を始めたのですが、意外と近似精度が低いんですね。ただよく考えてみればわかる話で、表が有効数字$4$桁あるのに差分取ったせいで$1,2$桁に落ちてしまうことを考えると当たり前な気もします。思いついたときは、「共通テストの対数表、いらないのでは!?!?!?!」と思いましたが、ここまで近似精度が低いと最初から正規分布表無視して計算したほうがむしろ精度高いかもしれません。例えば
以前の記事
で紹介した評価
$$
\frac12\int_0^1x^n(1-x)^ndx<\int_0^1\frac{x^n(1-x)^n}{1+x}dx<\int_0^1x^n(1-x)^ndx
$$
を使うことで、$n=4$とすれば$\ln2=0.6931...$まで決められるので、わざわざ正規分布表を利用しないほうがいいと思います。
というわけで、対数表が与えられたら素直にそちらを使いましょう。