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現代数学解説
文献あり

ラマヌジャンの論文11:いくつかの積分について

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はじめに

 この記事ではラマヌジャンの書いた論文"Some definite integrals"を読んでいきます。
 タイトルの11という番号はハーディによる書籍"Collected Papers of Srinivasa Ramanujan"におけるナンバリングに準じています。ちなみに"Collected Papers"の全容については こちらのサイト こちらのサイト にて閲覧することができます。
 なお各命題の証明については論文で示されている式変形以外は自力で考案したものとなるので至らぬ点もあるかもしれませんがあしからず。

概説

 この論文の主題は主に
1(1+a2x2)(1+b2x2)(1+c2x2)
という因子を含む積分を求めることにあります。具体的に以下では
0dx(1+x2/a2)(1+x2/(a+1)2)(1+x2/(a+2)2)0(1+x2/b2)(1+x2/(b+1)2)(1+x2/(b+2)2)(1+x2/a2)(1+x2/(a+1)2)(1+x2/(a+2)2)dx0dx(1+x2/a2)(1+x2/(a+1)2)(1+x2/b2)(1+x2/(b+1)2)0(1+ar2x2)(1+ar4x2)(1+ar6x2)(1+r2x2)(1+r4x2)(1+r6x2)dx1+x2
といった積分の値が求められていきます。
 また(文脈がよくわかりませんが)第3,4節では積分に関係するいくつかの関数等式が出てきます。

1.

 以下(x)nをポッホハマー記号
(x)n=x(x+1)(x+n1)=Γ(x+n)Γ(x)
とします。

補題

1(1x2/a2)(1x2/(a+1)2)(1x2/(a+n1)2)=(a)n2(1)n1(2a)nk=0n1(2a)k(1)k(1n)k(2a+n)k2(a+k)(a+k)2x2

1(a2x)((a+1)2x)((a+n1)2x)
の部分分数分解における1/((a+k)2x)の係数は
j=0jkn11(a+j)2(a+k)2=j=0jkn11(jk)(2a+k+j)=(2a+2k)(1)kk!(nk1)!1(2a+k)n=2(a+k)(1n)k(1)n1(1)k(2a)k(2a)n(2a+n)k
と計算できることからわかる。

02bb2+x2cos2tx dx=πbe2bt

 被積分関数は偶関数であることに注意すると
02bb2+x2cos2tx dx=122bb2+x2cos2tx dx=12Re(2bb2+x2e2itx dx)=Re(πiResx=ib2bb2+x2e2itx)=Re(πi2b2ibe2bt)=πbe2bt
と求まる。

主題

0cos2txk=0n1(1+(xa+k)2)dx=π(a)n2(1)n1(2a)nk=0n1(2a)k(1)k(1n)k(2a+n)ke2(a+k)t

 上の補題からわかる。

0cos2txn=0(1+(xa+n)2)dx=π2Γ(a+12)Γ(a)(secht)2a

 nにおいて
(a)n2(1)n1(2a)n=Γ(2a)Γ(a)2Γ(a+n)2Γ(n)Γ(2a+n)Γ(2a)Γ(a)2(1n)k(2a+n)k(1)k
となること、および倍数公式
Γ(2a)=22a2πΓ(a)Γ(a+12)
に注意すると公式1より
0cos2txn=0(1+(xa+n)2)dx=πΓ(2a)Γ(a)2e2atk=0(1)k(2a)k(1)ke2kt=π2Γ(a+12)Γ(a)22ae2at(1+e2t)2a=π2Γ(a+12)Γ(a)(2et+et)2a
とわかる。

0|Γ(a+ix)|2cos2tx dx=π2Γ(a)Γ(a+12)(secht)2a

n=0(1+(xa+n)2)=Γ(a)2Γ(a+ix)Γ(aix)
からわかる。
 このことについては
k=0n1(1(xa+k)2)=(ax)n(a+x)n(a)n2Γ(a)2Γ(ax)Γ(a+x)(n)
などによってわかる。

2.

0n=0(1+(xb+n)21+(xa+n)2)cos2tx dx=πΓ(2a)Γ(b)2Γ(a)2Γ(b+a)Γ(ba)k=0(2a)k(1)k(ab+1)k(a+b)ke2(a+k)t

 公式2と同様にしてわかる。

0n=0(1+(xb+n)21+(xa+n)2)dx=π2Γ(a+12)Γ(a)Γ(b)Γ(b12)Γ(ba12)Γ(ba)

 超幾何定理
k=0(a)k(b)k(1)k(c)k=Γ(c)Γ(cab)Γ(ca)Γ(cb)
および
Γ(2a)Γ(a)=22a2πΓ(a+12)Γ(2b1)Γ(b)=22b12πΓ(a12)Γ(2b2a1)Γ(ba)=22b2a12πΓ(ba12)
に注意すると
0n=0(1+(xb+n)21+(xa+n)2)dx=πΓ(2a)Γ(b)2Γ(a)2Γ(b+a)Γ(ba)Γ(a+b)Γ(2b2a1)Γ(ba)Γ(2b1)=π2Γ(a+12)Γ(a)Γ(b)Γ(b12)Γ(ba12)Γ(ba)
とわかる。

0|Γ(a+ix)Γ(b+ix)|2dx=π2Γ(a)Γ(b)Γ(a+12)Γ(b12)Γ(ba12)Γ(ba)

 公式3と同様にしてわかる。

0dx(x2+112)(x2+212)(x2+312)(x2+412)(x2+512)=5π1213161718222324313241

 公式5において
a=1110,b=6110=a+5
とおくと
0dx(x2+112)(x2+212)(x2+312)(x2+412)(x2+512)=10(1121314151)2Γ(a+12)Γ(a)Γ(a+5)Γ(a+4+12)Γ(512)Γ(5)π2=10(1121314151)2a(a+1)(a+2)(a+3)(a+4)(a+12)(a+32)(a+52)(a+72)1232527224π2=111213141511162636465212432π=5π11162426313236414651
と求まる。
 また
(1126)(364651)=(1322)(12171823)
に注意するとわかる。

3.

0(sechx)2acos2tx dx=π2Γ(a)Γ(a+12)n=011+(ta+n)2=π2|Γ(a+it)|2Γ(a)Γ(a+12)

 フーリエの変換公式
f^(y)=f(x)e2ixydxf(x)=1πf^(y)e2ixydy
より偶関数fに対し
f~(y)=0f(x)e2ixydxf(x)=4π0f~(y)e2ixydy
が成り立つことに注意すると公式2,3からわかる。

ϕ(a)=0(sechx)acostx dx
とおくと
ϕ(a)ϕ(2a)=πsinπa2(1a)(coshπtcosπa)
が成り立つ。

ϕ(a)=π2|Γ(a+it2)|2Γ(a2)Γ(a+12)=πa1|Γ(ait2)|2Γ(a2)Γ(a12)
および相反公式
Γ(s)Γ(1s)=πsinπs
に注意すると
ϕ(a)ϕ(2a)=π2(1a)|Γ(a+it2)Γ(1a+it2)|2Γ(a2)Γ(1a2)Γ(1+a2)Γ(1a2)=π2(1a)sinπa2sin(π2+πa2)|sinπ(a+it)2|2=π2(1a)sinπa(coshπtcosπa)
とわかる。ただし最後の等号には以下の補題を用いた。

 z=x+iyに対し
|sinz|2=cosh2ycos2x2
が成り立つ。

|sinz|2=|sinxcoshy+icosxsinhy|2=sin2xcosh2y(sin2xsinh2ysin2xsinh2y)+cos2sinh2y=sin2x+sinh2y=1cos2x2+cosh2x12=cosh2ycos2x2
とわかる。

4.

補題

 関数ϕ(x),ψ(x),K(x)に対し
Φ(t)=abϕ(x)K(tx)dxΨ(t)=αβψ(x)K(tx)dx
とおいたとき
abϕ(x)Ψ(tx)dx=αβψ(x)Φ(tx)dx
が成り立つ。

abψ(x)Φ(tx)dx=abψ(x)(αβϕ(y)K(txy)dy)dx=αβϕ(y)(abψ(x)K(txy)dx)dy=αβϕ(y)Ψ(ty)dy

e2πixycoshπxdx=1coshπye2πixy1+2cosh2πx3dx=11+2cosh2πy3eπx2e2πixydx=eπy2

 第一式については求める積分をIとおき留数定理により積分経路を+i++iに持ち上げることで
I=2πiResx=i/2+e2πi(x+i)ycoshπxdx=2eπye2πyI
つまり
I=2eπy1+e2πy=1coshπy
を得る。
 第二式についても同様に積分経路を+3i++3iに持ち上げることで
I=2πi(Resx=i/3+Resx=2i/3)+e2πi(x+3i)y1+2cosh2πx3dx=(e2πy/3e4πy/3)+e23πyI
つまり
I=e2πy/3(1e2πy/3)1(e2πy/3)3=1e2πy/3+1+e2πy/3=11+2cosh2πy3
を得る。
 第三式については積分経路をiy+iyに移動させることでガウス積分より
I=eπ(x+iy)2eπy2dx=eπy2eπx2dx=eπy2
を得る。

本題

 αβがそれぞれ指定した値を取るとき
α0dxcoshαx(1+2coshπx)=β0dxcoshβx(1+2coshπx)(αβ=3π2/4)α0ex21+2coshαxdx=β0ex21+2coshβxdx(αβ=4π/3)α0ex2coshαxdx=β0ex2coshβxdx(αβ=π)
が成り立つ。

 K(x)=cos2πxおよびϕ(x),ψ(x)として
1coshπx,11+2cosh2πx3,eπx2
を取ると補題5より
Φ(t)=0ϕ(x)cos2πtx dx=12ϕ(t)
が成り立つので補題4より
0ϕ(x)ψ(tx)dx=0ϕ(tx)ψ(x)dx=1t0ϕ(x)ψ(x/t)dx
つまりαβ=1のとき
α0ϕ(x)ψ(αx)dx=β0ϕ(x)ψ(βx)dx
という関数等式が得られることとなる。
 あとはこれらを適当に変形することで主張を得る。

類似

0sin2πxye2πx1dx=12(1e2πy1+1212πy)0xeπx2sin2πxy dx=yeπy2

 第一式については
πcothπz=1z+n=12zz2+n2
に注意すると
0sin2πxye2πx1dx=Im(0e2πixy1e2πx1dx)=Im(n=10e2πnx(e2πixy1)dx)=Im(n=112π(niy))=12πn=1yn2+y2=14(e2πy+1e2πy11πy)=12(1e2πy1+1212πy)
とわかる。
 第二式については補題5に注意すると
xeπx2sin2πxy dx=(12πeπx2)sin2πxy dx=2πy2πeπx2cos2πxy dx=yeπy2
とわかる。

 αβ=π2において
1α4(1+2α0eαxe2πx1dx)=1β4(1+2β0eβxe2πx1dx)
が成り立つ。

 公式10と同様にして
0txeπ(tx)2e2πx1dx=0xeπx2e2πtx1dx+0xeπx2(1212πtx)dx=1t20xeπ(x/t)2e2πx1dx+12[12πeπx2]012πt12t20eπt2xe2πx1dx=12t20eπx/t2e2πx1dx+14π14πt
つまり
1t(1+2πt0eπt2xe2πx1dx)=t(1+2πt20eπx/t2e2πx1dx)
という関数等式が得られる。

5.

 ϕ(a,x)xについての偶関数(resp.奇関数)とし、K(x)=cos2x(resp. K(x)=sin2x)および
Φ(a,t)=0ϕ(a,x)K(tx)dx
とおくと
0ϕ(a,x)ϕ(b,tx)dx=4π0Φ(b,x)Φ(a,tx)dx
が成り立つ。

 フーリエの変換公式から
ϕ(a,t)=4π0Φ(a,x)K(tx)dx
が成り立つので補題4よりわかる。

0(n=01(1+(xa+n)2)(1+(xb+n)2))dx=π2Γ(a+12)Γ(a)Γ(b+12)Γ(b)Γ(a+b)Γ(a+b+12)0|Γ(a+ix)Γ(b+ix)|2dx=π2Γ(a)Γ(a+12)Γ(b)Γ(b+12)Γ(a+b)Γ(a+b+12)

ϕ(a,x)=n=011+(xa+n)2=|Γ(a+ix)|2Γ(a)2
とおくと公式2,8より
Φ(a,x)=π2Γ(a+12)Γ(a)(sechx)2a0(sechx)2adx=π2Γ(a)Γ(a+12)
が成り立つので上の補題より
0ϕ(a,x)ϕ(b,x)dx=Γ(a+12)Γ(a)Γ(b+12)Γ(b)0(sechx)2a+2bdx=π2Γ(a+12)Γ(a)Γ(b+12)Γ(b)Γ(a+b)Γ(a+b+12)
を得る。

0xsinhπx(n=011+(xa+n)2)dx=a2(1+2a)0x3sinhπx(n=011+(xa+n)2)dx=a22(1+2a)(3+2a)

πxsinhπx=n=111+x2n2=ϕ(1,x)πx3sinhπx=πx(x2+1)sinhπxπxsinhπx=ϕ(2,x)ϕ(1,x)
に注意すると
0ϕ(a,x)ϕ(1,x)dx=π2Γ(1+12)Γ(1)Γ(a+12)Γ(a)Γ(a+1)Γ(a+1+12)=π2π2aa+12=πa2(1+2a)0ϕ(a,x)ϕ(2,x)dx=π2Γ(2+12)Γ(2)Γ(a+12)Γ(a)Γ(a+2)Γ(a+2+12)=π23π4a(a+1)(a+12)(a+32)=3πa(a+1)2(1+2a)(3+2a)
からわかる。

6.

0(n=11+arnx1+rn1x)xs1dx=πsinπsn=1(1rns)(1arn)(1rn)(1arns)

f(x)=n=11arnx1rn1x=n=0Anxn
とおいたとき
(1x)f(x)=(1arx)f(rx)
が成り立つので係数比較により
An=1arn1rnAn1
つまり
An=k=1n1ark1rk
がわかる。
 これはq-ポッホハマー記号
(a;q)=k=0(1aqk)
を用いて
An=(rn+1;r)(r;r)(ar;r)(arn+1;r)
と表せるので Ramanujan's Master Theorem により
0(n=11+arnx1+rn1x)xs1dx=πsinπs(r1s;r)(r;r)(ar;r)(ar1s;r)=πsinπsn=1(1rns)(1arn)(1rn)(1arns)
を得る。

0xs1k=0m1(1+rkx)dx=πsinπsk=1m1rks1rk0(n=11+arnx1+rn1x)xm1dx=logr1ak=1m11rkrka

 上の公式においてそれぞれa=rm,s=mとするとわかる。

7.

0xs1n=0(1+rnx)dx=πsinπsn=11rns1rn0xm1n=0(1+rnx)dx=r12m(m1)logrk=1m1(1rk)

 公式14,15においてa=0とするとわかる。

0(n=11+ar2nx21+r2nx2)dx1+x2=π2n=1(1r2n1)(1ar2n)(1r2n)(1ar2n1)0dxn=0(1+r2nx2)=π2n=11r2n11r2n=π21n=0r12n(n+1)

 公式14においてrr2,s=1/2とし、xx2と変数変換することでわかる。
 なおヤコビの三重積
n=0q12n(n+1)=n=1(1qn)(1+qn)2=n=1(1q2n)21qn=n=1(1q2n)2(1q2n)(1q2n1)=n=11q2n1q2n1
に注意する。

01n=1(1e10nπx2)dx1+x2=π34Γ(34)5281+542(1+52)12e5π801n=1(1e20nπx2)dx1+x2=π34Γ(34)524(1+54)22(1+52)52e5π401n=1(1102nx2)dx1+x2=π2101111101111111110111111=π2.202002000200002000002

 第一式、第二式については恐らくテータ関数の特殊値である。第三式については見ての通りである。

参考文献

[1]
S. Ramanujan, Some definite integrals, Messenger of Mathematics, 1915, 10 - 18
投稿日:2024127
更新日:2024127
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子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  1. はじめに
  2. 概説
  3. 1.
  4. 補題
  5. 主題
  6. 2.
  7. 3.
  8. 4.
  9. 補題
  10. 本題
  11. 類似
  12. 5.
  13. 6.
  14. 7.
  15. 参考文献