こんにちは. ガロア理論の試験が近いので, ガロア群を求めてみました. めちゃくちゃ丁寧に書きました.
$L=\Q(\sqrt[4]{2})$の$\Q$上のガロア閉包を$F$とするとき, $\Gal(F/\Q)$を求め, $F/\Q$の中間体を全て求めよ.
まず, $\sqrt[4]{2}$の$\Q$上最小多項式は
$x^4-2=(x-\sqrt[4]{2})(x-\sqrt{-1}\sqrt[4]{2})(x+\sqrt[4]{2})(x+\sqrt{-1}\sqrt[4]{2})$
なので, $F=\Q(\sqrt[4]{2},\sqrt{-1})=(\Q(\sqrt[4]{2}))(\sqrt{-1})$となる.
明らかに$\sqrt{-1}\notin\Q(\sqrt[4]{2})$より$\sqrt{-1}$の$\Q(\sqrt[4]{2}) $上最小多項式は$x^2+1$なので$[F:\Q(\sqrt[4]{2})]=2$.
また$[\Q(\sqrt[4]{2}):\Q]=4$だから, $[F:\Q]=8$である.
実際には$F$は例えば$1,\sqrt[4]{2}, \sqrt{2}, \sqrt[4]{8}$とその$\sqrt{-1}$倍の8つの元を$\Q$上基底とする.
$\sigma\in\Gal(F/\Q)$とする.$\sigma$は上の$x^4-2$の4根の置換を引き起こす.
ここで$F=(\Q(\sqrt{-1}))(\sqrt[4]{2}) $とみて, $\sigma|_{\Q(\sqrt{-1})}$が$\Gal(\Q(\sqrt{-1})/\Q)=\{\id,\rho\}$のどちらの元であるかで場合分けする. ただし$\rho$は複素共役をとる作用である.($\Q(\sqrt{-1})/\Q$はガロア拡大, 特に正規拡大なので$\sigma|_{\Q(\sqrt{-1})}\in \Gal(\Q(\sqrt{-1})/\Q)$となる.)
$\sigma(\sqrt{-1})=\sqrt{-1}$より, $\sigma(\sqrt[4]{2})$が決まれば$\sigma$は決定するが, これは4つの可能性しかない.
同様に, $\sigma(\sqrt[4]{2})$が決まれば$\sigma$は決定するが, 4つの可能性しかない.
以上により, $\sigma$として考えられるのは上の8つの可能性に限られる(この時点では8つ全て存在するかはわからない)が, $\#\Gal(F/\Q)=[F:\Q]=8$であったので, この8つは全て$F$の$\Q$同型として存在することがわかる.
$x^4-2$の根を$\alpha_1=\sqrt[4]{2}, \alpha_2=\sqrt{-1}\sqrt[4]{2}, \alpha_3=-\sqrt[4]{2}, \alpha_4=-\sqrt{-1}\sqrt[4]{2}$とおいて, これらの添字の置換とみて$\Gal(F/\Q)\subset \mathfrak{S}_4$の構造を調べる.
上の$\sigma$の一例として, 以下のような元$\sigma,\tau\in\Gal(F/\Q)$をとる.
$
\begin{align}
&\sigma(\sqrt{-1})=\sqrt{-1},&&\sigma(\sqrt[4]{2})=\sqrt{-1}\sqrt[4]{2} \\
&\tau(\sqrt{-1})=-\sqrt{-1},&&\tau(\sqrt[4]{2})=\sqrt[4]{2}
\end{align}
$
$\sigma$は$\alpha_1\to\alpha_2\to\alpha_3\to\alpha_4\to\alpha_1$と送るので$\mathfrak{S}_4$では巡回置換$(2341)$であり, $\sigma^4=1$を満たす.
$\tau$は$\alpha_2\leftrightarrow\alpha_4$と送るので$\mathfrak{S}_4$では互換$(24)$であり, $\tau^2=1$を満たす.
さらに$\tau \sigma \tau^{-1}=\sigma^{-1}$という関係式が成り立つ(各根を順に送ってみればよい)ので, $\Gal(F/\Q)\cong\{\sigma,\tau|\sigma^4=\tau^2=1, \tau \sigma \tau^{-1}=\sigma^{-1}\}=D_4$と, 二面体群になる.
$D_4=\{\sigma^m\tau^n|m\in\Z/4\Z, \tau\in\Z/2\Z\}$であり,$\tau \sigma=\sigma^{-1}\tau$より$(\sigma^m\tau^n)^2=\sigma^{m+(-1)^nm}$となることを用いて気合いで計算していく.
位数2の元を求めれば良い. 上の計算公式から$(\sigma^m\tau^n)^2=1$となるのは$n=1$または$n=0, m=2$であることがわかるので, $\langle\tau\rangle, \langle\sigma\tau\rangle, \langle\sigma^2\tau\rangle, \langle\sigma^3\tau\rangle, \langle\sigma^2\rangle $ の5つである.
生成元を2乗すると位数2の元になる. 計算公式からこのようなものは$\langle\sigma\rangle$しかない.
生成元は位数2の元2つであり, 生成して全体にならないような組み合わせを探すことで$\langle\sigma^2, \tau\rangle, \langle\sigma^2, \sigma\tau\rangle$となる.
これらの部分群の包含関係は, 下図のようになる.
$\xymatrix@=8pt{ {\text{(位数)}}\\ 8 & & & {D_4}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] & & \\ 4 & & {\langle\sigma^2, \tau\rangle}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] & {\langle\sigma\rangle}\ar@{-}[d] & {\langle\sigma^2, \sigma\tau\rangle}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] &\\ 2 & {\langle\tau\rangle}\ar@{-}[drr] & {\langle\sigma^2\tau\rangle}\ar@{-}[dr] & {\langle\sigma^2\rangle}\ar@{-}[d] & {\langle\sigma\tau\rangle}\ar@{-}[dl] & {\langle\sigma^3\tau\rangle}\ar@{-}[dll] \\ 1 & & & {\{1\}} & & }$
$
\begin{align}
&\sigma(\sqrt{-1})=\sqrt{-1},&&\sigma(\sqrt[4]{2})=\sqrt{-1}\sqrt[4]{2} \\
&\tau(\sqrt{-1})=-\sqrt{-1},&&\tau(\sqrt[4]{2})=\sqrt[4]{2}
\end{align}
$
であったこと, $F$の$\Q$上基底は$1,\sqrt[4]{2}, \sqrt{2}, \sqrt[4]{8}$とその$\sqrt{-1}$倍ととれることに注意する.
$\#\langle\sigma\rangle=4$なのでこの不変体$M$の$\Q$からの拡大次数は$2$である.$\sqrt{-1}$は$\sigma$により不変なので, $M=\Q(\sqrt{-1})$である. (実際, 拡大次数が$2$となっている.)
$\sigma^2,\tau $は$\sigma^2(\sqrt{2})=\sigma^2(\sqrt[4]{2})^2=(-\sqrt[4]{2})^2=\sqrt{2}$などの計算により$\sqrt{2}$を動かさないことがわかるので, 拡大次数が$2$であることも併せて, $\Q(\sqrt{2}) $である.
$
\begin{align}
&\sigma^2(\sqrt{-1})=\sqrt{-1},&&\sigma^2(\sqrt[4]{2})=-\sqrt[4]{2} \\
&\sigma\tau(\sqrt{-1})=-\sqrt{-1},&&\sigma\tau(\sqrt[4]{2})=\sqrt{-1}\sqrt[4]{2}
\end{align}
$
より, $\sqrt{-2}$は$\sigma^2, \sigma\tau$により不変なので, 拡大次数も考慮して, $\Q(\sqrt{-2})$である.
これ以降は位数$2$の部分群, 即ち不変体の拡大次数は$4$である.
$\sigma^2(\sqrt{-1})=\sqrt{-1},\qquad \sigma^2(\sqrt[4]{2})=-\sqrt[4]{2} $
なので, $\sqrt{-1}, \sqrt{2}$は$\sigma^2$により不変だから, $\Q(\sqrt{-1}, \sqrt{2})$である. (実際, 拡大次数が$4$になっている.)
$\tau(\sqrt{-1})=-\sqrt{-1},\qquad \tau(\sqrt[4]{2})=\sqrt[4]{2}$
なので, $\sqrt[4]{2}$は$\tau$により不変で, 拡大次数も考慮して$\Q(\sqrt[4]{2})$である.
$\sigma^2\tau(\sqrt{-1})=-\sqrt{-1},\qquad \sigma^2\tau(\sqrt[4]{2})=-\sqrt[4]{2}$
なので, $\sqrt{-1}\sqrt[4]{2}$は$\tau$により不変で, 拡大次数も考慮して$\Q(\sqrt{-1}\sqrt[4]{2})$である.
$\sigma\tau(\sqrt{-1})=-\sqrt{-1},\qquad \sigma\tau(\sqrt[4]{2})=\sqrt{-1}\sqrt[4]{2}$
なので, 簡単には不変な元が見つからないが, $\sigma\tau(\sqrt{-1}\sqrt[4]{2})=\sqrt[4]{2} $なので, $\sqrt[4]{2}$と$\sqrt{-1}\sqrt[4]{2} $は$\sigma\tau$で入れ替わる, 従ってこれらの和$(1+\sqrt{-1})\sqrt[4]{2}$は$\sigma\tau$で不変である. さらにこれを$(1+\sqrt{-1})\sqrt[4]{2}=\frac{1+\sqrt{-1}}{\sqrt{2}}\sqrt[4]{8}=\sqrt[4]{-8}$と書くことで, $\Q(\sqrt[4]{-8})$は拡大次数$4$であり求める不変体だとわかる.
$\sigma^3\tau(\sqrt{-1})=-\sqrt{-1},\qquad \sigma^3\tau(\sqrt[4]{2})=-\sqrt{-1}\sqrt[4]{2}$
なので, $(1-\sqrt{-1})\sqrt[4]{2}=\sqrt[4]{-2}$は$\sigma\tau$で不変である. 拡大次数も考慮して, $\Q(\sqrt[4]{-2})$が求める不変体である.
以上より, 各部分群に対応する中間体は以下のようになる.
$\xymatrix@=8pt{ {\text{(位数)}}\\ 8 & & & {D_4}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] & & \\ 4 & & {\langle\sigma^2, \tau\rangle}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] & {\langle\sigma\rangle}\ar@{-}[d] & {\langle\sigma^2, \sigma\tau\rangle}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] &\\ 2 & {\langle\tau\rangle}\ar@{-}[drr] & {\langle\sigma^2\tau\rangle}\ar@{-}[dr] & {\langle\sigma^2\rangle}\ar@{-}[d] & {\langle\sigma\tau\rangle}\ar@{-}[dl] & {\langle\sigma^3\tau\rangle}\ar@{-}[dll] \\ 1 & & & {\{1\}} & & }$
${}$
$\xymatrix@=2pt{ {\text{(拡大次数)}}\\ 1 & & & {\Q}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] & & \\ 2 & & {\Q(\sqrt{2})}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] & {\Q(\sqrt{-1})}\ar@{-}[d] & {\Q(\sqrt{-2})}\ar@{-}[dl]\ar@{-}[d]\ar@{-}[dr] &\\ 4 & {\Q(\sqrt[4]{2})}\ar@{-}[drr] & {\Q(\sqrt{-1}\sqrt[4]{2})}\ar@{-}[dr] & {\Q(\sqrt{-1},\sqrt{2})}\ar@{-}[d] & {\Q(\sqrt[4]{-8})}\ar@{-}[dl] & {\Q(\sqrt[4]{-2})}\ar@{-}[dll] \\ 8 & & & {F} & & }$
ちなみに$D_4$の正規部分群は$\langle\sigma\rangle, \langle\sigma^2, \tau\rangle, \langle\sigma^2, \sigma\tau\rangle, \langle\sigma^2\rangle$なので, $M/\Q$がガロア拡大となる中間体$M$は, $\Q(\sqrt{-1}), \Q(\sqrt{2}), \Q(\sqrt{-2}), \Q(\sqrt{-1},\sqrt{2}) $の4つである.
お疲れ様でした!