1

準素分解不可能なイデアルが存在して、任意の素イデアルで局所化したらネーター環だが元はネーター環にならない例

66
0
$$$$

準素分解不可能なイデアルが存在して、任意の素イデアルで局所化したらネーター環だが元はネーター環にならない例

まぁまぁ面白く、それでかつそんなに病的でもない例を思いついたので書きます。使う定理はアティマクのアルティン環くらいまでですが、特に知らなくても行けます。まず、ブール環を定義します。

ブール環

$A$が、$\forall x\in$$A$に対して、$x^{2}$=$x$を満たすとき$A$をブール環という。

ごちゃごちゃ式変形をするとブール環は可換環になることが証明できますが、めんどくさいのでなしで。

ブール環の性質その1

すべての素イデアル$\mathfrak{p}$は極大イデアルとなる。また、$A$を剰余して得られる剰余体はすべて$ \mathbb{F}_2$となる。

$\mathfrak{p}$を素イデアルとする。$\bar{0}$$\neq$$\bar{x}\in$$A/\mathfrak{p}$とする。$A$がブール環より、$\bar{x}^{2}$=$\bar{x}$となり、$\bar{0}$$=$$\bar{x}(\bar{1}-\bar{x})$$A/\mathfrak{p}$は整域より$\bar{1}-\bar{x}$$=$$\bar{0}$より$\bar{1}$=$\bar{x}$となり、$A/\mathfrak{p}$は体となる。後半は証明より明らか。

ブール環の性質その2

ブール環$A$のジャコブソン根基は$0$である。もっといえば冪零元根基も$0$

ブール環$A$のジャコブソン根基を$\mathfrak{R}$とする。$x\in$$\mathfrak{R}$とすると、$x^{2}$=$x$より、$x(1-x)$=$0$ ジャコブソン根基の性質より1-$x$は単元になる。よって$x$=$0$となる。

これらを使っていろいろやる。まず使う定理を述べておく。

中国人剰余定理の一般化

$\text{互いに素なイデアル } I_1,\ldots,I_n \text{ に対して} \qquad A\big/\bigcap_{i=1}^n I_i \cong \prod_{i=1}^n A/I_i.$

準素分解不可能なイデアルの具体例

$A$を濃度無限のブール環とする。($\prod_{i=1}^{\infty}\mathbb{F}_2$とか)これの零イデアルは準素分解不可能である。

$0$=$ Q_1 \cap \cdots \cap Q_n, \qquad \sqrt{Q_i} = \mathfrak{p}_i$(各$\sqrt{Q_i} $は準素イデアル)と分解されたと仮定する。$\qquad \sqrt{0}$は性質その2より$0$となる。また性質その1より$\mathfrak{p}_i$は極大イデアルとなる。これより、$0$=$\mathfrak{p}_1 \cap \cdots \cap \mathfrak{p}_n$となる。性質その1より各$\mathfrak{p}_i$は極大イデアル。これより、異なる$i$$j$$\mathfrak{p}_i$$\mathfrak{p}_j$は互いに素。中国人剰余定理から、$A$$\cong$$\prod_{i=1}^n A/\mathfrak{p}_i$となる。性質1より、各$A/\mathfrak{p}_i$$ \mathbb{F}_2$なので右辺の濃度は$2^{n}$となるが、$A$の濃度は無限より矛盾。

意外に身近なところに準素分解不可能なイデアルはあった。(ネーター環のイデアルはすべて準素分解可能だから一般的にはあまり出てこない)

任意の素イデアルで局所化したらネーター環だが元はネーター環にならない例

これまた濃度無限のブール環なのだがいろいろと準備がいる。

局所化と根基の可換性

$A$を環とし、$S$を積閉集合、$I$$A$のイデアルとする。
$\sqrt{I_S}=(\sqrt{I})_S$

$A$をブール環、$\mathfrak{m}$$A$の極大イデアルとすると、$A_\mathfrak{m}$は体

$\mathfrak{m}$を極大イデアルとして、性質その2から、$\sqrt{0}$=$0$
補題3より$(\sqrt{0})_\mathfrak{m}$=$\sqrt{0_\mathfrak{m}}$
$\sqrt{0}$=$0$から、$(\sqrt{0})_\mathfrak{m}$=$0$これより、$\sqrt{0_\mathfrak{m}}$=$0$よって、$A_\mathfrak{m}$の冪零元根基は$0$である。ブール環の性質1と対応定理から、$A_\mathfrak{m}$は素イデアルが一つの環となり、冪零元根基は$0$より、$A_\mathfrak{m}$は体となる。

ブール環が絶対平坦環であることからも従いますが、このことは気が向いたら書こうとおもいます。

$A$をブール環とすると、$A_\mathfrak{m}$はネーター環になる。

ネーターの定理

$A$をネーター環とすると、$A$の任意のイデアルは準素分解可能である。

これを用いて色々する。

$A$を濃度無限のブール環とする。$A$はネーター環ではない。

$A$をネーター環と仮定する。そうすると、$0$はネーターの定理より準素分解可能となる。しかし、定理2で述べたように$0$は準素分解不可能である。これより矛盾。

系と定理6より、任意の素イデアルで局所化したらネーター環だが元はネーター環にならない環がある

どうやら、ネーター性は局所的性質にならないようですね。その他の例があったら教えてください。

蛇足の

$A$をブール環とする。以下は同値
(1)$A$がネーター環
(2)#$A$=$2^{n}$

(2)ならば(1)は自明
(1)ならば(2)は、定理2の証明を繰り返せばよい

参考文献

[1]Atiyah, M. F. and Macdonald, I. G., Introduction to Commutative Algebra, Addison-Wesley, 1969

投稿日:9日前
更新日:9日前
数学の力で現場を変える アルゴリズムエンジニア募集 - Mathlog served by OptHub

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

ずり
ずり
4
392
おしとやかに...

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中