圏論を勉強していると,よく「普遍性」という言葉が目に入ってきます.
この「普遍性」というものは非常に重要な概念であるようなのですが,その一方でやや分かりにくいような気がしてしまいます.
そこで,いくつかの例を通じて,普遍性について整理します.
Leinsterには,次のような記述があります.
「ある条件を満たすなにがしがただ一つ存在する」という文言は,〔中略〕描写される対象〔中略〕が,それが住んでいる世界の全体〔中略〕とどのように関係しているか述べているので,「普遍性」とよばれる.
自分なりにこの文を解釈します.
先ほど引用した文章と照らし合わせると,
あくまで私の解釈ですが,圏
全ての集合の集まりを対象,集合間の写像を射とする圏を集合の圏
普遍性の例で最もよく目にするのが,直積の普遍性だと思われます.先ほどの普遍性の解釈と照らし合わせて,よくよく観察してみることにします.
を満たすものを,
この性質を直積の普遍性と呼ぶようです.これが本当に普遍性と呼ぶに相応しいものなのか,先ほどの解釈と照らし合わせて確認してみましょう.
まず,この場合における『描写される対象』とは,3つ組
続いて,この対象が『住んでいる世界の全体』とはどこなのかを考えてみます.3つ組を考えているとはいえ,直積のメインは集合
最後に,ここまで来れば『関係』が何なのかは明らかで,これは
では,この場合に満たしてほしい「特殊な性質」とは何なのでしょうか.わざわざ直積を3つ組で定義していることからもわかるように,直積においては射影
以上のことをまとめると,
と捉えられます.したがって,この性質は普遍性と呼んで差し支え無さそうです.
全ての位相空間の集まりを対象,位相空間の間の連続写像を射とする圏を位相空間の圏
この記事を書くきっかけとなったのが,次の定義で躓いたことでした.
を満たすものを,
これも解釈と照らし合わせると,
と捉えることができます.よってこれも普遍性と呼んで差し支え無さそうです.
よくよく観察してみると普遍性とは確かに「普遍性」と呼ばれるに相応しい概念であり,さらに周辺の対象や射との整合性を要求する,非常に強い性質であることがわかりました.
普遍性を用いることにより,集合論や位相空間論,更には代数の様々な概念を特徴付け,統一的に扱うことができるようです.普遍性に恐れずに圏論に挑んでいきたいですね.
圏論については学び始めたばかりであり,認識が曖昧な点が多く,誤った記述が含まれている可能性があります.お気づきの点などございましたらご指摘いただけますと幸いです.