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多様体上のEL方程式

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定義

多様体をM,曲線をc:(α,β)M,tc(t),ラグランジアンを接束TM上の関数L:TMR,(x,v)L(x,v),作用をS:C((α,β),M)R,cS[c]とする。C((α,β),M)は区間(α,β)から多様体MへのC級写像全体の集合,つまり曲線全体の集合である。閉区間[a,b][a,b](α,β)となるようにとる。作用の値S[c]は曲線cの速度ベクトルをcとして,
S[c]=abL(c(t),c(t))dt
で与えられる。今は時間に陽に依存しないラグランジアンを考えているが依存していても以降の議論は変わらない。

多様体上の変分法

曲線の変形をΦ:(ϵ,ϵ)×MM,(h,q)Φh(q)とする。これはh(ϵ,ϵ)をひとつ決めるとM上の点qを動かした点Φh(q)を与える。Φh(c)は変形された曲線を表す。この定義にはユークリッド空間の座標を使っていないので多様体上の変分法を表現できる
変形の条件として以下を課す。

  • h=0はもとの点の位置を変えない:Φ0(q)=q
  • 端点の固定:任意のhに対してΦh(c(a))=c(a),Φh(c(b))=c(b)
  • ΦC級である。変形された曲線は自己交差を起こさない。

変形された曲線に対する作用の値は次のようになる。
S[Φh(c)]=abL(Φh(c(t)),tΦh(c(t)))dt

EL方程式の導出

曲線cを固定するとS[Φ()(c)]hの関数である。状況としてはひとつの決まった曲線をパラメータに応じてぐにゃぐにゃ曲げている。曲線cが作用の停留を与えているならば,h=0における微分係数が0である(h1変数関数だから例えば2次関数を思い浮かべてもらえればよい)。よって停留作用の原理は以下で与えられる。

停留作用の原理

ddhS[Φh(c)]|h=0=0

多様体Mのチャートを(U,ϕ),局所座標をxiとする。接束TMに自然に誘導されるチャートの局所座標を(xi,vi)とする。速度ベクトルの第i成分c˙iにはc˙i=ddt(xic)の関係がある。合成関数の微分を行うと,
ddhS[Φh(c)]|h=0=abiLxi|x=c(t)v=c(t)h(xiΦh(c(t)))|h=0+Lvi|x=c(t)v=c(t)ht(xiΦh(c(t)))|h=0dt
となる。xi,viの微分係数をとっている点x=c(t),v=c(t)は,Φ0(c(t))=c(t)から来ている。計算の途中ではこの表示を省く。の中の第2項は変形ΦC級であることからhの微分とtの微分を交換することができる[1]
tの微分を前に持ってきて部分積分を行う。もうこうなれば普通のEL方程式の導出と同じである。
abLvith(xiΦh(c(t)))|h=0dt=[Lvih(xiΦh(c(t)))|h=0]abab(ddtLvi)h(xiΦh(c(t)))|h=0dt=ab(ddtLvi)h(xiΦh(c(t)))|h=0dt
境界項は端点においては任意のhで変形がない(定値写像である)ので微分係数がゼロになり消える。ここで,Vi=h(xiΦh(c(t)))|h=0とおく。Viは変分ベクトル場というベクトル場の第i成分を定める(これは点c(t)における接ベクトルの成分である)。部分積分で得た第2項を元の積分の中に戻すと,
abi(LxiddtLvi)Vidt=0
変分法の基本補題[2]を適用することで,多様体上のEL方程式を得る。

多様体上のEL方程式

ddhS[Φh(c)]|h=0=0ddtLvi|x=c(t)v=c(t)=Lxi|x=c(t)v=c(t)


[1]: 微分の順序交換はC2級で十分であるがそう限る必要はないのでC級を課した。

[2]: 証明したことないです。すみません。

投稿日:4月20日
更新日:4月20日
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