以下のような有名な問題がある。
両端に火を付けられるロープが2本ある。このロープは片側に火をつければちょうど1時間で燃え尽き、両側に火をつければ燃え尽きるまでの時間が半減する。
このロープ2本を使って、45分を測るにはどうすればよいか?
ただし、ロープの燃焼以外で時間を測ったり、ロープの火を途中で消したり、ロープを半分に折って切ったり、目測でどれだけ燃えたかを判断したりしてはいけない。また、ロープを燃やすときの手際の悪さによる誤差は考えない。
最初にロープに火をつけた時から45分後は、このようにロープ2本を燃やすことで測れる。その他にも、30分後、1時間後、1時間30分後、2時間後も測れる。ロープ2本で測れる時間はこれ以外に存在しない。
(「何時間なら測れるか」という点の注目すると、45分を測る際に、最初に火をつけてから30分後と45分後の間を考えれば「15分測れている」と言えるかもしれない。しかし、今回は最初にロープに火をつけた時を開始地点として「何時間後なら測れるか?」という方向で考える。この場合、ロープが最も早く燃え尽きるのは両端に火をつけた30分後であり、15分後は測れない。)
では、ロープが2本に限らずいくらでも使えるとき、何時間後を測れるだろうか?
実数$a$が可融数であるとは、以下のいずれかを満たすことである。
(正確には、上記の方法で「可融数である」とわかる実数のみが可融数である。)
実数$a$について、以下は同値。
最初にロープに火をつけてから$a$時間後を測れる場合、$a$時間後にあるロープが燃え尽きるような火のつけ方が存在する。このロープが片端のみしか火をつけられなかったかどうかで場合分けする。
ロープの片端のみ火をつけていた場合、片端に火をつけたのが最初にロープに火をつけてから$x$時間後だとしよう。
この$x$も$0$または「ロープがいくらでも使えるときに最初にロープに火をつけてから$x$時間後を測れる」、更に、$a = x+1$である。
ロープの両端に火をつけていた場合、このロープの端に火をつけたのが最初にロープに火をつけてから$x,y$時間後だとしよう。ただし、$x \le y$とする。$y \ge x+1$とするともう一方の端に火をつける前に燃え尽きてしまうので、$x \le y < x+1$である。
この$x,y$も$0$または「ロープがいくらでも使えるときに最初にロープに火をつけてから$x$時間後を測れる」、更に、$x$時の時点で火をつけたロープは、$y$時の時点では燃え尽きるまでの残り時間が$x+1-y$時間であり、このタイミングでもう一方の端にも火をつけるので燃え尽きるまでの残り時間が半減し$\dfrac{x+1-y}2$時間となる。$y$時の$\dfrac{x+1-y}2$時間後である$\dfrac{x+y+1}2$時に$a$を測るロープが燃え尽きるので、$a = \dfrac{x+y+1}2$である。
従って、最初にロープに火をつけてから$a$時間後を測れるとき、
のどちらかが成り立つ。
すなわち、$a = 0$または最初にロープに火をつけてから$a$時間後を測れるような実数$a$全体の集合を$F$とすると、$F$は関数$x \mapsto x+1$と2変数部分関数$(x,y) \mapsto \dfrac{x+y+1}2\ (x \le y < x+1)$に閉じている。
なお、$x \mapsto x+1$に閉じているという条件がなくとも、$(x,y) \mapsto \dfrac{x+y+1}2\ (x \le y < x+1)$に閉じていれば$x \in F \Rightarrow x + \dfrac12 = \dfrac{x+x+1}2 \in F$だとわかるので、$F$は$x \mapsto x+1$にも閉じているとわかる。
従って、$F$は2変数部分関数$(x,y) \mapsto \dfrac{x+y+1}2\ (x \le y < x+1)$に閉じている最小の集合だとわかった。可融数の定義から、これは可融数全体の集合と等しい。□
以上により、可融数を単なる2変数関数によって生成される実数全体の集合とみなせるようになった。
全順序集合$(S,\preceq)$が、任意の$n \in \mathbb N$について$x_{n+1} \prec x_n$を満たすような$S$の元の無限列$\{x_i\}_{i \in \mathbb N}$をもたないとき、$(S,\preceq)$は整列集合であるという。
順序として何を用いるのかが明らかなときは、集合そのものを指して整列集合と呼ぶ。特に、$S \subseteq \mathbb R$かつ$(S,\le)$が整列集合ならば、単に$S$が整列集合ということにする。
可融数全体の集合は整列集合である。
$F_0 := \{0\},\ F_{i+1} := \{\dfrac{x+y+1}2 \mid x \le y < x+1 \land x,y \in F_i\}$のように集合族$\{F_i\}_{i \in \mathbb N}$を定め、$F := \bigcup_{i \in \mathbb N}F_i$とする。すなわち、$F$は可融数全体の集合である。
$F$の元のみからなる無限列$\{a_i\}_{i \in \mathbb N}$のうち、任意の$n \in \mathbb N$について$a_{n+1} < a_n$を満たすものが存在すると仮定する。このような列を悪列と呼ぶ。
悪列$\{a_i\}_{i \in \mathbb N}$に$0$は現れない。$a_n = 0$を満たす$n$が存在してしまうと、$a_{n+1} < a_n = 0$となるが、$F$の元は全て非負なので矛盾する。
各$a \in F$に対して$a \in F_i$を満たす最小の$i$を$h(x)$と書くことにする。特に、$a = 0$または$h(a) \neq 0$である。
ここで、極小悪列とよばれるものを構成する。
$b_0$を、初項が$x$である悪列が存在するような$x$のうち$h(x)$が最小となるものの1つとして取る。
$\{b_i\}_{0 \le i \le n}$が定まっているとき、$b_{n+1}$を、最初の$n+1$項が$b_0,b_1,\cdots,b_n,x$である悪列が存在するような$x$のうち$h(x)$が最小となるようなものの1つとして取る。(そのような$x$の存在は$b_n$の定義から明らか。)
このようにして構成した$F$の元の列$\{b_i\}_{i \in \mathbb N}$も悪列である。つまり、任意の$n \in \mathbb N$について$b_{n+1} < b_n$を満たす。
定義から任意の悪列$\{a_i\}_{i \in \mathbb N}$は、$\{b_i\}_{i \in \mathbb N}$と一致するか、一致せずに$a_i \neq b_i$を満たす最小の$i$について$h(a_i) \ge h(b_i)$となる。
(つまり、悪列を$h$で写した数列$\{h(a_i)\}_{i \in \mathbb N}$を$H(\{a_i\}_{i \in \mathbb N})$と書くことにすると、$H(\{b_i\}_{i \in \mathbb N})$は$H$の像となる数列のうち辞書式順序で最小である。)
各$i \in \mathbb N$に対して、$b_i = \dfrac{x_i + y_i + 1}2$と$x_i \le y_i < x_i+1$を満たす$x_i,y_i \in F_{h(b_i)-1}$が存在する。
$F$の悪列$\{a_i\}_{i \in \mathbb N}$を任意に取る。任意の$n \in \mathbb N$について、$x_n$が$\{a_i\}_{i \in \mathbb N}$に現れないこと、すなわち任意の$n,m \in \mathbb N$について$x_n \neq a_m$であることを今から示す。
$h(x_n) \le h(b_n)-1 < h(b_n)$なので、悪列$\{b_i\}_{i \in \mathbb N}$の定義から、列$b_0,\cdots,b_{n-1},x_n,a_{m+1},a_{m+2},\cdots$は悪列ではない。
もし$x_n = a_m$ならば、$\cdots < a_{m+2} < a_{m+1} < a_m = x_n < (b_n < )b_{n-1} < \cdots < b_0$であることを考えると、列$b_0,\cdots,b_{n-1},x_n,a_{m+1},a_{m+2},\cdots$は悪列となってしまい矛盾する。従って、$x_n \neq a_m$である。
特に、$X := \{x_i \mid i \in \mathbb N\},\ Y := \{y_i \mid i \in \mathbb N\}$とすると、$X$の元のみからなる悪列は存在しないので、$X$は整列集合である。($Y$も同様に示せる。)
任意の$i > n$について$x_i < x_n$を満たすような$n$を、$\{x_i\}_{i \in \mathbb N}$の悪数と呼ぶことにしよう。悪数は有限である。なぜなら、悪数が無限にあればそれを下から順に$w(0),w(1),w(2),\cdots$とすることで、$\cdots x_{w(2)} < x_{w(1)} < x_{w(0)}$となるので、$\{x_{w(i)}\}_{i \in \mathbb N}$は$X$の元のみからなる悪列となってしまうからである。
ここで、$g(0)$を任意の悪数よりも大きい数とし、$g(n)$が定まっているときには$g(n+1)$を$i > g(n)$かつ$x_i \ge x_{g(n)}$を満たす$i$とすることで、$\{g(n)\}_{n \in \mathbb N}$を再帰的に定める。この数列の各項は任意の悪数よりも大きくなるように定義されているので、$g(n)$が定まれば以上の方法で$g(n+1)$を定義できる。
定義から明らかに、任意の$n \in \mathbb N$について$g(n) < g(n+1)$かつ$x_{g(n)} \le x_{g(n+1)}$である。すなわち、$\{x_{g(i)}\}_{i \in \mathbb N}$は$\{x_i\}_{i \in \mathbb N}$の広義単調増加な無限部分列である。
$Y$も整列集合なので、$\{y_{g(i)}\}_{i \in \mathbb N}$は悪列でない。つまり、ある$i,j \in \mathbb N$が存在して、$i < j$かつ$y_{g(i)} \le y_{g(j)}$となる。$\{x_{g(i)}\}_{i \in \mathbb N}$の広義単調増加性から$x_{g(i)} \le x_{g(j)}$なので、$b_{g(i)} = \dfrac{x_{g(i)} + y_{g(i)} +1}2 \le \dfrac{x_{g(j)} + y_{g(j)} +1}2 = b_{g(j)}$である。これは、$\{b_i\}_{i \in \mathbb N}$が悪列であることに矛盾する。
背理法により、$F$の元からなる悪列は存在しない。可融数全体の集合$F$は整列集合である。□
整列集合は($2$元以上をもつならば)自己稠密でない。整列集合$S$の最大元でない元を$a$、$a$より大きい元を$b_0$としたとき、自己稠密ならば$a < b_1 < b_0$を満たす$b_1$が存在し、$a < b_2 < b_1$を満たす$b_2$が存在し、これを繰り返すことで$a$を下界にもつ悪列$b_0,b_1,b_2,\cdots$が構成できてしまう。任意の$2$元間の開区間$(a,b)$ですら稠密にならない。
(同様の議論で、整列集合の空でない部分集合には最小元が存在することを示せる。)
特に、$F$は$\mathbb R$のどの開集合上でも稠密にならない、疎集合(nowhere dense set)となる。
整列集合の定義から、$F$の元からなる狭義単調減少な列は長さが有限である。可算で、疎集合で、しかも片方向に有限である。
ここまで聞くと、「なんだ、可融数って全然密じゃない、スカスカな集合じゃないか。」という感想を抱くだろう。しかし、実際にどのように並んでるかを見てみると、可融数はとんでもなく密集していることがわかってくる。
可融数の密集具合を調べる前に、可融数の位相的性質についてももう少し言及しておこう。
可融数全体の集合は閉集合である。
可融数全体の集合を$F$とする。まずは、$F$の境界$\partial(F)$が整列集合であることを示そう。
$\partial(F)$の元のみからなる無限列$\{a_i\}_{i \in \mathbb N}$を任意に取る。このとき、各$i \in \mathbb N$について$a_i \le x$を満たす可融数$x$が存在するので、そのうち最小のものを$b_i$とおく。
無限列$\{b_i\}_{i \in \mathbb N}$は可融数のみからなる列なので、ある$i \in \mathbb N$について$b_i \le b_{i+1}$が成り立つ。$b_i < b_{i+1}$である場合、$a_i < a_{i+1}$である。$b_i = b_{i+1}$である場合の$a_i,a_{i+1}$の大小を考える。
もし$a_{i+1} < a_i$ならば、$a_i$に収束する可融数列$\{x_i\}_{i \in \mathbb N}$には$a_{i+1},b_i$よりも$a_i$に近い項が存在する。これを$x_j$としよう。$a_i \notin F,\ x_j \in F$なので$a_i \neq x_j$である。
$a_i < x_j$ならば、$a_i < x_j < b_i$なので$b_i$の最小性に反する。$a_{i+1} < x_j < a_i$ならば、$a_{i+1} < x_j < a_i \le b_i = b_{i+1}$なので、今度は$b_{i+1}$の最小性に反する。
従って、$a_i \le a_{i+1}$である。いずれにせよ、$\partial(F)$の元のみからなる任意の無限列$\{a_i\}_{i \in \mathbb N}$についてある$i \in \mathbb N$が存在し、$a_i \le a_{i+1}$を満たすので、$\partial(F)$は整列集合である。
$\partial(F)$は整列集合なので、空でなければ最小元が存在する。これを$z$とおく。$z \in \partial(F)$なので、$z$に収束する可融数列$\{z_i\}_{i \in \mathbb N}$が存在する。
特に、$z > 0$なので、可融数列から$0$を取り除いても収束先は変わらない。以降は、$\{z_i\}_{i \in \mathbb N}$に$0$は現れないものとする。
更に、各$i \in \mathbb N$について$x_i \le y_i < x_i+1$かつ$z_i = \dfrac{x_i + y_i +1}2$を満たす$x_i,y_i \in F$が存在する。このようなにして、列$\{x_i\}_{i \in \mathbb N},\ \{y_i\}_{i \in \mathbb N}$を得られる。
$x := \lim_{i \to \infty}x_i,\ y := \lim_{i \to \infty}y_i$とする。すると、$x \le y \le x+1$かつ$z = \dfrac{x+y+1}2$となる。また、可融数列の極限なので$x,y \in \textrm{cl}(F) = F \cup \partial(F)$である。
明らかに、$x = \dfrac{x+x}2 < \dfrac{x+y+1}2 = z$であり、$y = \dfrac{y+y}2 < \dfrac{y+x+1}2 = z$である。
$y < z$である場合、$z$の最小性から$x,y \notin \partial(F)$なので、$x,y \in F$である。すると、$z = \dfrac{x+y+1}2 \in F$となり矛盾する。
$y = z$である場合、$2z = x+y+1 = x+z+1$なので$z = x+1 \in F$となりやはり矛盾する。
以上により、$\partial(F)$には最小元は存在せず、従って空集合である。特に、$\textrm{cl}(F) = F \cup \partial(F) = F \cup \emptyset = F$である。□
このように、可融数の極限もまた可融数である。
ちなみに、$\mathbb R$上の閉集合の相対位相は、その部分順序集合による順序位相と等しい。また、任意の整列集合はある順序数と順序同型であることが知られているので、可融数の位相的性質は順序数を調べればよい。
後ほど話すが、可融数全体の順序は$\varepsilon_0$という順序数と同型になる。
実際にどのような実数が可融数であるかを見ていこう。ただし、$2$以上の可融数の並び方はかなり非自明で筆者の技量では$[2,\dfrac{17}8)$区間すらとても列挙できそうにないので、$2$未満の可融数のみに留める。
区間として、$[0,1),\ [1,\dfrac32),\ [\dfrac32,2)$の3つに分けて見ていこう。
証明の随所には超限帰納法という手法を用いる。
整列集合$X$の任意の元が性質$P$を満たすことを示したい。そのため、性質$P$が成り立たない例外全体の集合$S := \{x \in X \mid \lnot P(x)\}$を考える。整列集合の空でない部分集合には必ず最小元が存在することは確認したので、$S$に最小元が存在しなければ、$S = \emptyset$となり、晴れて任意の$x \in X$について性質$P(x)$が成り立つとわかる。
さて、$x \in X$が$S$の最小元でないことを確認したいのだが、そのためには$x \in S$ならば$y < x$を満たす$y \in S$が存在することを示せばいい。つまり、$\lnot P(x)\ \Rightarrow\ \exists y< x\ \lnot P(y)$である。対偶を取ると、$\forall y< x\ P(y)\ \Rightarrow\ P(x)$である。
つまり、任意の$x \in X$について、「$x$未満の元$y < x$が全て$P(y)$を満たすならば、$P(x)$も成り立つ」を示せば、任意の$x \in X$について(仮定なしに)$P(x)$も成り立つことが示される。これが超限帰納法である。
感覚で言えば数学的帰納法である。あちらも$P(k)$の証明に仮定$P(k-1)$を使うことを許す手法だったが、今回は任意の$y < k$について仮定$P(y)$を使ってもよいという大盤振る舞いである。
とはいえ、最初は何をしているのかイメージしづらいだろう。直感的なのは上記の説明に用いた「最小例外が存在しない」というもので、例外が存在するとそこからより小さい例外を取り続けられて、無限降下列ができてしまうという、それなら例外は存在しない、という考えである。
可融数は整列しているので、この超限帰納法が使える。
$F \cap [0,1) = \{1 - \dfrac1{2^n} \mid n \in \mathbb N\}$
まず、任意の$n \in \mathbb N$について$1 - \dfrac1{2^n} \in F$であることを、$n$についての帰納法によって示す。
$1 - \dfrac1{2^0} = 0 \in F$は明らかである。
$1 - \dfrac1{2^n} \in F$ならば、$0 \in F$かつ$0 \le 1 - \dfrac1{2^n} < 0+1$なので、$(0 + 1 - \dfrac1{2^n} + 1)/2 = 1 - \dfrac1{2^{n+1}} \in F$である。
$n$についての帰納法により、任意の$n \in \mathbb N$について$1 - \dfrac1{2^n} \in F$である。
次に、超限帰納法により、任意の$z \in F \cap [0,1)$についてある$n \in \mathbb N$が存在して$z = 1 - \dfrac1{2^n}$を満たすことを示そう。
超限帰納法の仮定として、任意の$y \in F \cap [0,1)$について、$y < z$ならばある$m \in \mathbb N$が存在して$y = 1 - \dfrac1{2^m}$を満たすことを用いてよい。
$z = 0$ならば明らかに$z = 1 - \dfrac1{2^0}$である。$z > 0$ならば、$z = \dfrac{x+y+1}2$かつ$x \le y < x+1$を満たす$x,y \in F$が存在する。
$x,y < z < 1$なので、$x,y \in F \cap [0,1)$である。超限帰納法の仮定より、$x = 1-\dfrac1{2^m},\ y = 1-\dfrac1{2^n}$を満たす$m,n \in \mathbb N$が存在する。
$m > 0$ならば、$x \ge \dfrac12$なので$1 > z = \dfrac{x+y+1}2 \ge x + \dfrac12 \ge 1$となって矛盾してしまうので、$m = 0$であり、すなわち$x = 0$である。
よって、$z = \dfrac{y+1}2 = (2-\dfrac1{2^n})/2 = 1-\dfrac1{2^{n+1}}$である。これは示すべきことであった。
超限帰納法により、任意の$z \in F \cap [0,1)$について、ある$n \in \mathbb N$が存在して$z = 1 - \dfrac1{2^n}$となる。
以上により、$F \cap [0,1) = \{1 - \dfrac1{2^n} \mid n \in \mathbb N\}$である。□
$1$未満の可融数は、このように無限に存在する。$0$が可融数であり、それぞれの$1$未満の可融数と$1$のちょうど中間地点に新たな可融数が割って入ってくる。
なお、可融数に$\dfrac12$を足した数も再び可融数であるとわかっているので、$1$から$\dfrac32$の間、$\dfrac32$から$2$の間、...と、$1$以降の長さ$\dfrac12$の区間には必ず可融数が無限に現れることがわかる。
可融数が無限に現れる区間が無限にあってすごい、という話で終わればよかったのだが...。
$F \cap [1,\dfrac32) = \{1\} \cup \{\dfrac32 - \dfrac1{2^m},\ \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} \mid m,n \in \mathbb N \land n > m > 1\}$
証明を追う前に、この集合を実際に数直線上に描いてみてもらいたい。なんだかおぞましい集合であることがわかるだろう。
まずは、任意の$m,n \in \mathbb N$について、$n > m > 1$ならば$1,\ \dfrac32 - \dfrac1{2^m},\ \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} \in F$であることを示そう。
$1 \in F$は、$\dfrac12 \in F$であることと$F$が$+\dfrac12$に閉じていることから明らか。
$1-\dfrac1{2^{m-1}},\ 1 \in F$なので、$(1-\dfrac1{2^{m-1}} + 1 + 1)/2 = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} \in F$である。
同様に、$1-\dfrac1{2^{m-1}},\ 1-\dfrac1{2^{n-1}} \in F$なので、$(1-\dfrac1{2^{m-1}} + 1-\dfrac1{2^{n-1}} + 1)/2 = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} \in F$である。
次に、超限帰納法により、任意の$z \in F \cap [1,\dfrac32)$について、$z = 1$または$z = \dfrac32 - \dfrac1{2^m}$または$z = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n}$を満たす$n,m \in \mathbb N(n > m > 1)$が存在することを示そう。
$z \neq 0$なので、$x \le y < x+1$かつ$z = \dfrac{x+y+1}2$であるような$x,y \in F$が存在する。
このとき、$x+\dfrac12 \le z < \dfrac32$なので$x < 1$であり、$x+1 > z \ge 1$なので$x > 0$である。すなわち、$0 < x < 1$である。このとき、$x = 1 - \dfrac1{2^{m-1}}$を満たす$m > 1$が存在する。
また、$y < z < \dfrac32$であり、$y + \dfrac12 \ge z \ge 1$なので$y \ge \dfrac12$である。すなわち、$\dfrac12 \le y < \dfrac32$である。
$\dfrac12 \le y < 1$ならば、$y = 1 - \dfrac1{2^{n-1}}$を満たす$n > 1$が存在する。すると$z = (1 - \dfrac1{2^{m-1}} + 1 - \dfrac1{2^{n-1}} + 1)/2 = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n}$である。
$m = n = 2$ならば、$z = 1$なのでよい。
$m = n > 2$ならば、$z = \dfrac32 - \dfrac1{2^{m-1}}$であり、$m-1 > 1$なのでよい。
$m \neq n$ならば、$z = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n}$であり、$m > n > 1$または$n > m > 1$なのでよい。
$1 \le y < \dfrac32$ならば、$y < z$なので超限帰納法の仮定として、$y = 1$または$y = \dfrac32 - \dfrac1{2^{n-1}}$または$y = \dfrac32 - \dfrac1{2^{n-1}} - \dfrac1{2^{p-1}}$を満たす$p,n \in \mathbb N(p > n > 2)$が存在する。
$y = 1$ならば、$z = (1 - \dfrac1{2^{m-1}} + 1 + 1)/2 = \dfrac32 - \dfrac1{2^m}$であり、$m > 1$なのでよい。
$y = \dfrac32 - \dfrac1{2^{n-1}}$ならば、$z = (1 - \dfrac1{2^{m-1}} + \dfrac32 - \dfrac1{2^{n-1}} + 1)/2 = \dfrac74 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n}\ (< \dfrac32)$である。よって$\dfrac1{2^m} + \dfrac1{2^n} > \dfrac14$である。$m,n > 1$なので、$m = 2$または$n = 2$である。$m = 2$ならば$z = \dfrac74 - \dfrac14 - \dfrac1{2^n} = \dfrac32 - \dfrac1{2^n}$なのでよい。$n = 2$ならば$z = \dfrac74 - \dfrac1{2^m} - \dfrac14 = \dfrac32 - \dfrac1{2^m}$なのでよい。
$y = \dfrac32 - \dfrac1{2^{n-1}} - \dfrac1{2^{p-1}}$ならば、$z = (1 - \dfrac1{2^{m-1}} + \dfrac32 - \dfrac1{2^{n-1}} - \dfrac1{2^{p-1}} + 1)/2 = \dfrac74 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^p}\ (< \dfrac32)$である。よって$\dfrac1{2^m} + \dfrac1{2^n} + \dfrac1{2^p} > \dfrac14$である。$m > 1$かつ$p > n > 1$なので、$m = 2$または$n = 2$または$m = n = 3$である。
$m = 2$ならば$z = \dfrac74 - \dfrac14 - \dfrac1{2^n} = \dfrac32 - \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^p}$であり、$p > n > 1$なのでよい。
$n = 2$ならば$z = \dfrac74 - \dfrac1{2^m} - \dfrac14 - \dfrac1{2^p} = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^p}$である。$m = p$ならば$z = \dfrac32 - \dfrac1{2^{p-1}}$であり、$p-1 > 1$なのでよい。$m \neq p$ならば、$z = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^p}$であり、$m,p > 1$なのでよい。
$m = n = 3$ならば$z = \dfrac74 - \dfrac18 - \dfrac18 - \dfrac1{2^p} = \dfrac32 - \dfrac1{2^p}$であり、$p > 1$なのでよい。
超限帰納法により、任意の$z \in F \cap [1,\dfrac32)$について、$z = 1$または$z = \dfrac32 - \dfrac1{2^m}$または$\dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n}$を満たす$n,m \in \mathbb N(n > m > 1)$が存在する。
以上により、$F \cap [1,\dfrac32) = \{1\} \cup \{\dfrac32 - \dfrac1{2^m},\ \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} \mid m,n \in \mathbb N \land n > m > 1\}$である。□
$1$の次の可融数は$\dfrac98$で、そこから$\dfrac54$までに無限個の可融数が現れる。そこから$\dfrac{11}8$までに無限個、更にそこから$\dfrac{23}{16}$までに無限個、というように、可融数が無限個現れる区間が$\dfrac32$未満の範囲で無限に現れている。
位相空間論の言葉で言えば、$\dfrac32$未満には集積点が無限に存在しており、集積点の集積点が存在している。
正整数の有限集合$S$について、$B(S) := \Sigma_{n \in S} \dfrac1{2^n}$とする。
単なる$2$進有限小数の言い換えにすぎない。任意の$[0,1)$区間内の$2$進有限小数は、ある有限集合$S$を用いて$B(S)$と表せる。
$2$進有限小数で成り立つ性質がそのまま成り立つ。例えば、
などが成り立つ。ただし、$\textrm{truth}$はその内側の論理式が真なら$1$、偽なら$0$の値を取るものである。
特に、以下が成り立つ。
$F \cap [1,2) = \{1\} \cup \{2-B(S) \mid \emptyset \neq S \subseteq_{\textrm{Fin}} \mathbb N_{>0} \land |S| \le \min S + 2\}$
証明は正直読まなくてもよい。細かい場合分けで文量が増しているものの、証明自体は単に$2$進有限小数をちまちまと計算してるだけである。
$1 \in F$は明らか。任意の$S \subseteq_{\textrm{Fin}} \mathbb N_{>0}$について、$S \neq \emptyset$かつ$|S| \le \min S+2$ならば$2-B(S) \in F$であることを、$\min S$についての帰納法によって示す。
$\min S = 1$のとき、$|S| \le 3$なので、ある$n > m > 1$が存在して、$2-B(S) = \dfrac32$または$2-B(S) = \dfrac32 - \dfrac1{2^m}$または$2-B(S) = \dfrac32 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n}$である。補題5より、$B(S) \in F$である。
$\min S > 1$ならば、$M := \max S$とする。$2-B(S) = 2-\Sigma_{n \in S} \dfrac1{2^n} = 2-\Sigma_{n \in S \setminus \{M\}} \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^M}$である。
更に、$2-B(S) = ((1-\dfrac1{2^{M-1}}) + (2-\Sigma_{n \in S \setminus \{M\}}\dfrac1{2^{n-1}}) +1)/2$である。$\min\{n-1 \mid n \in S \setminus \{M\}\} = \min S -1 \le |S|-1 = |\{n-1 \mid n \in S \setminus \{M\}\}|$なので、帰納法の仮定より$2-\Sigma_{n \in S \setminus \{M\}}\dfrac1{2^{n-1}} \in F$である。
補題4より$1-\dfrac1{2^{M-1}} \in F$であり、$1-\dfrac1{2^{M-1}} \le 1 < 2-\Sigma_{n \in S \setminus \{M\}}\dfrac1{2^{n-1}} \le 2-\dfrac1{2^{\min S-1}} < 2-\dfrac1{2^{M-1}}$なので、$2-B(S) \in F$である。
$\min S$についての帰納法により、任意の$S \subseteq_{\textrm{Fin}} \mathbb N_{>0}$について、$S \neq \emptyset$かつ$|S| \le \min S+2$ならば$2-B(S) \in F$である。
任意の$z \in F \cap [1,2)$について、$z = 1$または、$z = 2-B(S)$かつ$|S| \le \min S + 2$
を満たす空でない集合$S \subseteq_{\textrm{Fin}} \mathbb N_{>0}$が存在することを、$z$についての超限帰納法によって示す。
$z \in F[1,\dfrac32)$ならば、補題5より$z = 1$または$z = 2 - \dfrac12 - \dfrac1{2^m}$または$z = 2 - \dfrac12 - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n}$を満たす$n > m > 1$が存在する。$z = 1$の場合はよく、そうでない場合は$S = \{1,m\}$または$S = \{1,m,n\}$とすれば、$|S| \le \min S +2$かつ$z = 2-B(S)$を満たす。
$z = \dfrac32$ならば、$z = 2-\dfrac12 = 2-B(\{1\})$であり、$|\{1\}| = 1 \le 3 = \min\{1\}+2$なのでよい。
以降は$z \in (\dfrac32, 2)$の場合のみ考えればよい。$z \in F$なので、ある$x,y \in F$が存在して、$x \le y < x+1$かつ$z = \dfrac{x+y+1}2$を満たす。$x + \dfrac12 \le z < 2$なので$x < \dfrac32$であり、$\dfrac32 < z \le y+\dfrac12$なので$y > 1$である。
$1 < y < z < 2$なので、帰納法の仮定より$y = 2-B(S_y)$かつ$|S_y| \le \min S_y +2$を満たす空でない集合$S_y \subseteq_{\textrm{Fin}} \mathbb N_{>0}$が存在する。
$x < 1$ならば、$x = 1-\dfrac1{2^m}$を満たす$m \in \mathbb N$が存在する。$y = 2-B(S_y) < x+1 = 2-\dfrac1{2^m}$なので、$B(S_y) > \dfrac1{2^m} = B(\{m\})$である。特に、$\min S_y \le m$である。
$z = \dfrac{x+y+1}2 = 2 - B(\{m+1\}) - B(\{n+1 \mid n \in S_y\})$である。
$m \notin S_y$ならば、$z = 2 - B(\{m+1\} \cup \{n+1 \mid n \in S_y\})$であり、$|\{m+1\} \cup \{n+1 \mid n \in S_y\}| = |S_y|+1 \le \min S_y +3$ $ = \min(\{m\} \cup S_y)+3 = \min(\{m+1\} \cup \{n+1 \mid n \in S_y\})+2$である。
$m \in S_y$ならば、$U$を$B(U) = B(\{m+1\}) + B(\{n+1 \mid n \in S_y\})$を満たす集合とする。$z = 2-B(U)$であり、$|U| \le |\{m+1\} \cup \{n+1 \mid n \in S_y\}| = |\{m\} \cup S_y| = |S_y| \le \min S_y+2$ $= \min(\{m+1\} \cup \{n+1 \mid n \in S_y\}) +1 \le \min U +2$である。
$x = 1$ならば、$z = \dfrac{y+2}2 = 2 - \dfrac12 B(S_y) = 2-B(\{n+1 \mid n \in S_y\})$である。
$|\{n+1 \mid n \in S_y\}| = |S_y| \le \min S_y +2 \le \min \{n+1 \mid n \in S_y\} +2$である。
$x \le 1$のとき、条件を満たす集合$S$の存在を示せたので、以降は$1 < x < \dfrac32$の場合のみ考える。このとき、補題5より$x = 2 - B(\{1,m\})$または$x = 2 - B(\{1,m,n\})$を満たす$n > m > 1$が存在する。
$x = 2 - B(\{1,m\})$である場合、$2z = 5 - B(\{1,m\}) - B(S_y) < 4$なので、$B(\{1,m\}) + B(S_y) > 1$であり、$B(\{m\}) + B(S_y) > \dfrac12$である。
$1 \in S_y$ならば、$|S_y| \le \min S_y +2 = 3$である。$S$を、$B(S) = B(\{m+1\}) + B(\{n+1 \mid n \in S_y \land n \neq 1\})$を満たす集合とする。$|S| \le |\{m+1\}| + |\{n+1 \mid n \in S_y \land n \neq 1\}| = 1 + |S_y \setminus \{1\}| = |S_y| \le 3 \le \min S +2$である。
また、$z = \dfrac52 - B(\{2,m+1\}) - B(\{n+1 \mid n \in S_y\})$ $= 2 - B(\{m+1\}) - B(\{n+1 \mid n \in S_y \land n \neq 1\}) = 2-B(S)$である。
$1 \notin S_y$ならば、$B(S_y) > \dfrac12 - B(\{m\}) = B(\{2,3,\cdots,m\})$なので、$2,3,\cdots,m \in S_y$であり、$B(\{m\}) + B(S_y) = \dfrac12 + B(S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\})$である。
$z = \dfrac52 - B(\{2,m+1\}) - B(\{n+1 \mid n \in S_y\}) = 2 - B(\{n+1 \mid n \in S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\}\})$である。$m \ge 2$であることに注意すると、$|\{n+1 \mid n \in S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\}\}| \le |S_y| - m + 1 \le |S_y|-1$ $\le \min S_y+1 = 3 \le \min\{n+1 \mid n \in S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\}\}+2$である。
$x = 2 - B(\{1,m,n\})$である場合、$2z = 5 - B(\{1,m,n\}) - B(S_y) < 4$なので、$B(\{1,m,n\}) + B(S_y) > 1$であり、$B(\{m,n\}) + B(S_y) > \dfrac12$である。
$1 \in S_y$ならば、$|S_y| \le \min S_y +2 = 3$である。$S$を、$B(S) = B(\{m+1,n+1\}) + B(\{k+1 \mid k \in S_y \land k \neq 1\})$を満たす集合とする。
$m \in S_y$または$n \in S_y$である場合、$|S| \le |\{m+1,n+1\} \cup \{k+1 \mid k \in S_y \land k \neq 1\}| = 1 + |S_y \setminus \{1\}| = |S_y| \le 3 \le \min S +2$である。
また、$z = \dfrac52 - B(\{2,m+1,n+1\}) - B(\{k+1 \mid k \in S_y\})$ $= 2 - B(\{m+1,n+1\}) - B(\{k+1 \mid k \in S_y \land k \neq 1\}) = 2-B(S)$である。
$m,n \notin S_y$である場合、$\{m,n\} \cap (S_y \setminus \{1\}) = \{m+1,n+1\} \cap \{k+1 \mid k \in S_y \land k \neq 1\} = \emptyset$なので$S = \{m+1,n+1\} \cup \{k+1 \mid k \in S_y \land k \neq 1\}$である。
よって、$|S| \le |\{m+1,n+1\} \cup \{k+1 \mid k \in S_y \land k \neq 1\}| = 2 + |S_y \setminus \{1\}| = |S_y|+1$ $\le 4 \le \min S +2$である。
また、$z = \dfrac52 - B(\{2,m+1,n+1\}) - B(\{k+1 \mid k \in S_y\})$ $= 2 - B(\{m+1,n+1\}) - B(\{k+1 \mid k \in S_y \land k \neq 1\}) = 2-B(S)$である。
$1 \notin S_y$かつ$m \in S_y$ならば、$B(S_y) > \dfrac12 - B(\{m,n\}) = B(\{2,3,\cdots,n\} \setminus \{m\})$なので、$2,3,\cdots,m-1 \in S_y$であり、仮定より$2,3,\cdots,m \in S_y$である。また、$B(\{m,n\}) + B(S_y) = \dfrac12 + B(\{n\} \cup S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\})$である。
$z = \dfrac52 - B(\{2,m+1,n+1\}) - B(\{k+1 \mid k \in S_y\}) = 2 - B(\{k+1 \mid k \in (S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\}) \cup \{n\}\})$である。
$n > m \ge 2$であることに注意すると、$|\{k+1 \mid k \in (S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\}) \cup \{n\}\}| \le |S_y|$ $\le \min S_y+2 \le \min\{k+1 \mid k \in (S_y \setminus \{2,3,\cdots,m\}) \cup \{n\}\}+2$である。
$1,m \notin S$ならば、$B(S_y) > \dfrac12 - B(\{m,n\}) = B(\{2,3,\cdots,n\} \setminus \{m\})$なので、$2,3,\cdots,m-1 \in S_y$であり、仮定より$2,3,\cdots,m-1,m+1\cdots,n \in S_y$である。また、$B(\{m,n\}) + B(S_y) = \dfrac12 + B(S_y \setminus \{2,3,\cdots,n\})$である。
$z = \dfrac52 - B(\{2,m+1,n+1\}) - B(\{k+1 \mid k \in S_y\}) = 2 - B(\{k+1 \mid k \in S_y \setminus \{2,3,\cdots,n\}\})$である。
$n > m \ge 2$であることに注意すると、$|\{k+1 \mid k \in S_y \setminus \{2,3,\cdots,n\}\}| \le |S_y| \le \min S_y+2 \le \min\{k+1 \mid k \in S_y \setminus \{2,3,\cdots,n\}\}+2$である。
以上と超限帰納法により、任意の$z \in (1,2) \cap F$について、$z = 2-B(S)$かつ$|S| \le \min S + 2$を満たす空でない集合$S \subseteq_{\textrm{Fin}} \mathbb N_{>0}$が存在する。□
つまりどういうことかというと、$2$未満の可融数は$1 - \dfrac1{2^m}$の形であるか、$1$であるか、$2 - \dfrac1{2^n}$から高々$n+1$個の、指数が$n$より大きい$2$の冪の逆数を引いた形で表される。
主張だけを見ると簡単だが、これはとんでもないことである。
例えば、$4 < m < n < p < q < r$とすると、$\dfrac{31}{16} - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^p} - \dfrac1{2^q} - \dfrac1{2^r}$のような形の数は全て可融数である。ここで、$r \to \infty$とすると$\dfrac{31}{16} - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^p} - \dfrac1{2^q}$に収束するので、$\dfrac{31}{16} - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^p} - \dfrac1{2^q}$の形の可融数はそれ未満のいくらでも近いところに可融数が存在する。つまりこの形の可融数は、可融数の集積点でもある。
更に$q \to \infty$とすると$\dfrac{31}{16} - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^p}$に収束するので、$\dfrac{31}{16} - \dfrac1{2^m} - \dfrac1{2^n} - \dfrac1{2^p}$未満のいくらでも近いところに可融数の集積点が存在する。つまりこの形の可融数は、可融数の集積点の集積点である。
同様の議論を繰り返すと、$\dfrac{31}{16}$は可融数の集積点の集積点の集積点の集積点の集積点である。
このように、その点がどれほど高ランクな集積点であるかを表す指標が存在する。孤立点をランク$0$とし、その点の近傍に必ずランク$n$未満の集積点が存在するならば、その点はランク$n$以上の集積点とする。
可融数において、$2 - \dfrac1{2^m}$はランク$m+1$であり、$2$は有限のランクでは表せないほどに、周辺に可融数が密集している。
前節の図を見ると、$\dfrac74$未満の可融数は、$\dfrac32$未満の可融数の並びが無限に並んでいるように見える。同様に、$\dfrac{15}8$未満の可融数は、$\dfrac74$未満の可融数の並びが無限に並んでいるように見える。この直感的な説明を数学的に定式化し、証明しよう。
なお、$2$未満ではそのような性質を満たす点は$2 - \dfrac1{2^m}$の形であったが、これらは全て1を引いても可融数である。
同様に、1を引いても可融数であるような数では、このように以前に現れた並びが無限個並ぶという性質が成り立つ。1を引いて可融数にならないような数でもその性質が成り立つかは、現状おそらく未解決である。
(順序数を知っている方向けに説明すると、整列集合である可融数から同型な順序数$\varepsilon_0$への順序同型写像$\varphi : F \to \varepsilon_0$は一意であり、$z-1 \in F$ならば$\varphi(z) = \omega^\alpha$を満たす順序数$\alpha > 0$が存在することがわかっているのだが、逆が成り立つかはわからないということである。)
$z$を可融数とする。任意の$w \in [z,z+1)$について、ある狭義単調増加列$\{x_i\}_{i \in \mathbb N}$が存在して、$x_0 \ge w$かつ$\sup_{i \in \mathbb N}x_i = z+1$かつ、任意の$i \in \mathbb N$に対して区間$[z,w) \cap F$から$[x_i,x_{i+1}) \cap F$への順序埋め込みが存在する。
$w \in [z,z+1)$なので、$w < z+1 - \dfrac1{2^m}$を満たす$m \in \mathbb N$が存在する。ここで、$x_i := z+1-\dfrac1{2^{m(i+1)}}$として、狭義単調増加列$\{x_i\}_{i \in \mathbb N}$を定める。
関数$f : [z,z+1) \to [z+\dfrac12,z+1)$を、$f(x) := \dfrac{z+x+1}2$として定める。$z$は可融数で$z \le x < z+1$なので、$x \in F$ならば$f(x) \in F$である。また、$x < y$ならば$f(x) < f(y)$である。従って、$f$は$[z,z+1) \cap F$から$[z + \dfrac12,z+1) \cap F$への順序埋め込みである。
ここで、$f$の$n$回反復$f^n$を考える。$f^n(x) = \dfrac{x + (z+1)(2^n-1)}{2^n} = z+1-\dfrac{z+1-x}{2^n}$であり、これは$[z,z+1)$から$[z+1-\dfrac1{2^n},z+1)$への関数である。$x \in F$ならば$f^n(x) \in F$であり、$f$が順序埋め込みなので$f^n$も$[z,z+1) \cap F$から$[z+1-\dfrac1{2^n},z+1) \cap F$への順序埋め込みである。
ここで、関数$f^{m(i+1)}$を考えると、$f^{m(i+1)}(z) = z+1-\dfrac1{2^{m(i+1)}} = x_i$であり、$f^{m(i+1)}(w) < f^{m(i+1)}(z+1-\dfrac1{2^m}) = z+1-\dfrac1{2^{m(i+2)}} = x_{i+1}$なので、$f^{m(i+1)}$(の$[z,w)$への制限)は区間$[z,w)$から$[x_i,x_{i+1})$への関数である。
$f^{m(i+1)}$は狭義単調増加であり可融数は可融数へ写すので、$[z,w)$から$[x_i,x_{i+1})$への順序埋め込みである。□
言い換えると、可融数$+1$の形の数はそれぞれ集積点としてランクが異なり、より大きいものはより大きいランクをもつ。
(整列集合の順序位相では、その点の集積点としてのランクが$\alpha (> 0)$以上であれば、その点はある順序数$\beta > 0$を用いて$\omega^\alpha \times \beta$と表される順序数に同型写像で対応する。上記の定理を用いると、可融数$+1$の形の数は同型写像で$\omega^\xi$の形の順序数に対応することがわかり、超限帰納法によって、可融数$z$に対応する順序数が$\alpha$ならば$z+1$に対応する順序数は$\omega^\alpha$以上だとわかる。
特に、可融数$2$は$\omega^\omega$に、可融数$3$は$\omega^{\omega^\omega}$以上の順序数に対応していき、一般に可融数$n$は$\omega$を$n$段重ねた指数タワー以上の順序数${}^n\omega$に対応し、従って可融数全体の順序型はそれらの極限である$\varepsilon_0$以上だとわかる。)
既に$2$未満の可融数の順序構造を見た。ところで$\dfrac98$は可融数だったので、$\dfrac{17}8$未満には$[\dfrac98,2)$上の可融数と同じ並びが無限に現れる。同様に、$\dfrac{19}{16}$は可融数だったので、$\dfrac{35}{16}$未満には$[\dfrac{35}{16},\dfrac{17}8)$上の可融数と同じ並びが無限に現れる。
このように、$[1,2)$上の可融数全てが、今度は$[2,3)$上で可融数を増やすためのファクターとなっていく。こうして非常に大量の$[2,3)$上の可融数が存在するとわかると、これらがそのまま$[3,4)$上で可融数を増やすファクターとなり、...という階層が無限に続いていく。
以降は順序数の基礎的な知識を仮定する。特に、順序数の加法、$\omega$冪の基本的な性質、$\varepsilon_0$が$\omega$冪に閉じた最小の順序数であることなどは既知とする。
また、整列順序同士の直和半順序を全順序化したものが順序型がもとの整列順序の自然和となること、整列順序同士の直積半順序を全順序化したものが順序型がもとの整列順序の自然積となることも既知とする。
$\gamma$を順序数、$y,z$を可融数とし、$y < z$かつ、$y < w < z$を満たす可融数が存在しないとする。
$y+1$未満の可融数全体の順序型が$\alpha$ならば、$z+1$未満の可融数全体の順序型は$\gamma^\omega$以下である。
まず、可融数のみからなる集合$A,B$について、新たに集合$A \otimes B := \{\dfrac{a+b+1}2 \mid a \in A \land b \in B \land |a - b| < 1\}$を構成することを考える。$A,B$の順序型をそれぞれ$\alpha,\beta$とおく。
$a \le a'$かつ$b \le b'$ならば、明らかに$\dfrac{a+b+1}2 \le \dfrac{a'+b'+1}2$である。よって、集合$\{(a,b) \in A \times B \mid |a-b| <1\} \subseteq A \times B$の直積半順序による順序集合から$A \otimes B$への順序保存な全射が存在する。
特に、$A \otimes B$は$A \times B$のある部分集合の全順序化と同型になっているので、順序型は高々$\alpha$と$\beta$の自然積$\alpha\otimes\beta$である。
区間$[y+1,z+1)$の狭義単調増加列として、$\{x_i\}_{i \in \mathbb N}$を$x_i := z+1 - \dfrac{z-y}{2^i}$とする。特に、$x_0= y+1$であり、$x_{i+1} = \dfrac{x_i +z +1}2$である。また、$\sup_{i \in \mathbb N}x_i = z+1$である。
更に、$F_n := [0,x_n) \cap F$、$G_n := [x_n,x_{n+1}) \cap F$とする。$F_{n+1} = F_n \cup G_n$である。
$F_0 = [0,y+1) \cap F$なので、$F_0$の順序型は$\gamma$である。
また、$G_n = [x_n,x_{n+1}) \cap F = [x_n,\dfrac{x_n+z+1}2) \cap F$の任意の元は、ある$a \le b < a+1$を満たす$a,b \in F$を用いて$\dfrac{a+b+1}2$と表される。$a,b$の大きさを評価しよう。
$a < z$である場合、$a \le y$であり、$\dfrac{a+b+1}2 < a+1 \le y+1 \le x_0$である。これは$\dfrac{a+b+1}2 \in G_n$に反する。
$a \ge z$である場合、$\dfrac{b+z+1}2 \le \dfrac{a+b+1}2 < x_{n+1} = \dfrac{x_n+z+1}2$なので、$b < x_n$であり、$a \le b < x_n$である。よって、$a,b \in F_n$である。
すなわち、$G_n \subseteq F_n \otimes F_n$であり、$F_{n+1} \subseteq F_n \cup (F_n \otimes F_n)$である。
$[0,1) \cap F \subseteq [0,y+1) \cap F$の両側の順序型を考えると、$\gamma \ge \omega$である。よって、$\gamma^\omega$は和、積、自然和、自然積に閉じている。
$F_0$の順序型は$\gamma$なので$\gamma^\omega$未満である。また、各$n \in \mathbb N$について、$F_n$の順序型が$\alpha < \gamma^\omega$未満ならば、$F_{n+1} \subseteq F_n \cup (F_n \otimes F_n)$の順序型は$(\alpha \otimes \alpha) \oplus \alpha$以下なので、$\gamma^\omega$が自然和と自然積に閉じていることからこれも$\gamma^\omega$未満となる。
数学的帰納法により、任意の$n \in \mathbb N$について、$F_n$の順序型は$\gamma^\omega$未満である。
もし$[0,z+1) \cap F$の順序型が$\gamma^\omega$を超えるならば、ある$x < z+1$について$[0,x) \cap F$の順序型がちょうど$\gamma^\omega$となるはずだが、するとある$n \in \mathbb N$について$x \le x_n$となってしまい、$F_n = [0,x_n) \cap F$の順序型も$\gamma^\omega$以上となって先ほどの結果と矛盾する。
以上により、$[0,z+1) \cap F$の順序型は$\gamma^\omega$以下である。□
ここから超限帰納法を用いると、可融数$x$について、$[0,x) \cap F$の順序型が$\alpha$ならば、$[0,x+1) \cap F$の順序型は$\omega^{\omega^\alpha}$以下であるとわかる。
特に、$[0,2) \cap F$の順序型は$\omega^\omega$であるため、任意の$n \in \mathbb N$について、$[0,n) \cap F$の順序型は${^{2n-2}}\omega$以下である。従って、可融数全体の順序型は$\varepsilon_0$以下であるとわかる。
実は、可融数全体が整列すること、及びその順序型が$\varepsilon_0$以下となることは、もっと一般的な定理からすぐに導かれる。詳しくは
こちらの記事
を読んだりWQOやKruskalの木定理などで調べてもらいたい。
今回はあくまで$\mathbb R$の部分集合と順序数のみに注目したいので、ある程度一般性を削いで議論する。
実数上の$n$変数関数$g$が以下の2条件を満たすとする。
この関数$g$と$m(> 0)$個の$\mathbb R$の元によって生成される集合は整列する。
この順序型は、$n = 1$ならば$\omega^{\omega^{m-1}}$以下、$n = 2$ならば$\varepsilon_{m-1}$以下、$n > 2$ならば$\varphi(1,\underbrace{0,\cdots,0}_{n-1},m-1)$以下である。
(ただし、$\varphi$は多変数veblen関数である。)
可融数は、$g(x,y) = \max\{x,y,\dfrac{x+y+1}2\}$という2条件を満たす$2$変数関数と$0$から生成される数であったため、可融数全体の集合の順序型は$\varepsilon_0$である。
ここで可融数の一般化として、両端の$2$箇所から燃やすだけではなく、(ロープでは無理なのでそれ以外のなんかいい感じの形をした可燃物があって)最大$n$箇所に火をつけられて、燃えるスピードが$n$段階に分かれているようなものを考える。
可燃物は必ず燃え尽きる前に$n$箇所に火をつけると単純化して考えると、この可燃物を用いて測れる数は、$g(x_0,\cdots,x_{n-1}) := \max\{x_0,\cdots,x_{n-1},\dfrac{x_0+\cdots+x_{n-1}+1}n\}$によって生成される。
Kruskalの木定理によりこのような集合は整列する。なお3によると、順序型は残念ながら定理で与えられている上限$\varphi(1,\underbrace{0,\cdots,0}_n)$には一致せず、それより随分小さい$\varphi(n-1,0)$になるらしい。