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現代数学解説
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ヤコビの二平方定理・四平方定理

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はじめに

 この記事ではヤコビの二平方定理・四平方定理
(n=qn2)2=18n=1(1)nq2n11q2n1(n=qn2)4=1+8n=14nnqn1qn
について解説していきます。

二平方定理・四平方定理

 二平方定理・四平方定理とは自然数nを平方数の和
n=x2+y2n=a2+b2+c2+d2
として表すことに関する定理であり、最も有名なものとしてはフェルマーの二平方定理・ラグランジュの四平方定理があります。

フェルマーの二平方定理

 自然数nに対し
n=x2+y2
を満たすような整数x,yが存在することと、nの素因数分解における4k+3型素数の指数が全て偶数であることは同値である。

ラグランジュの四平方定理

 任意の自然数nに対し
n=x2+y2+z2+w2
を満たすような整数x,y,z,wが存在する。

 これらの定理は
n=x2+y2n=a2+b2+c2+d2
という表現の存在性に関するものとなっていますが、より強くこのような表現の個数は次の公式によって明示的に求めることができます。

ヤコビの二平方定理

 自然数nに対し
n=x2+y2
を満たすような整数の組(x,y)は丁度
42dn(1)d12
個存在する。

ヤコビの四平方定理

 任意の自然数nに対し
n=x2+y2+z2+w2
を満たすような整数の組(x,y,z,w)は丁度
84dnd
個存在する。

 この記事ではヤコビの示したこれらの定理についてヤコビによる証明とHirschhornによる証明について解説していきます。

問題の帰着

テータ関数

 ヤコビの二平方定理・四平方定理は
n=qn2
という級数の二乗・四乗を考えることで示されます。
 実際この二乗・四乗は
(n=qn2)2=x,y=qx2+y2=n=0(x2+y2=n1)qn(n=qn2)4=x,y,z,w=qx2+y2+z2+w2=n=0(x2+y2+z2+w2=n1)qn
と表せるので示すべき式は
(n=qn2)2=1+4n=1(2dn(1)d12)qn(n=qn2)4=1+8n=1(4dnd)qn
となります。

ランベルト級数

 しかし実際にヤコビが示した式は
(n=qn2)2=14n=1(1)n1q2n11q2n1(n=qn2)4=1+8n=1nqn1+(q)n
というものでした。
 これが上の式に一致することはランベルト級数に関する次の事実を用いることで確かめられます。

n=1(dnad)qn=n=1anqn1qn

n=1anqn1qn=n=1anm=1(qn)m=l=1(mn=lan)ql=l=1(dlad)ql
とわかる。

n=1(2dn(1)d12)qn=n=1(1)n1q2n11q2n1n=1(4dnd)qn=n=14nnqn1qn=n=1nqn1+(q)n

 上の補題においてそれぞれ
an={0n0(mod2)(1)n12n1(mod2)an={0n0(mod4)nn0(mod4)
とおくことでわかる。
 また最後の等号については
x1+x=x1x2x21x2
に注意すると
n=1nqn1+(q)n=n=12nq2n1+q2n+n=12nnqn1qn=n=1(2nq2n1q2n4nq4n1q4n)+n=12nnqn1qn=n=14nnqn1qn
とわかる。

ヤコビの三重積

 では上のようなランベルト級数は一体どこから出てきたのでしょうか。
 それにはヤコビの三重積が重要な役割を果たします。

ヤコビの三重積

n=qn2zn=n=1(1q2n)(1+q2n1z)(1+q2n1z1)

 例えばこの公式の右辺をzについて対数微分することで
=zddzlog(n=1(1q2n1z)(1q2n1z1))=n=1(q2n1z1+q2n1zq2n1z11+q2n1z1)=n=1m=1(1)mq(2n1)m(zmzm)=m=1(1)mqm1q2m(zmzm)
のようなランベルト級数が出てくることとなります。
 では具体的にどのようにして
(n=qn2)2=14n=1(1)n1q2n11q2n1(n=qn2)4=1+8n=1nqn1+(q)n
という式が導出されるのかを見ていくこととしましょう。

テータ関数と三重積

 まず以下での議論を円滑にするために各種のテータ関数とその三重積についてまとめておこう。

θ1(z,q)=n=(1)nq(n+12)2zn+12=q14(z12z12)n=1(1q2n)(1q2nz)(1q2nz1)θ2(z,q)=n=q(n+12)2zn+12=q14(z12+z12)n=1(1q2n)(1+q2nz)(1+q2nz1)θ3(z,q)=n=qn2zn=n=1(1q2n)(1+q2n1z)(1+q2n1z1)θ4(z,q)=n=(1)nqn2zn=n=1(1q2n)(1q2n1z)(1q2n1z1)θ1(q)=n=(1)n(2n+1)q(n+12)2=2q14n=1(1q2n)3θ2(q)=n=q(n+12)2=2q14n=1(1q2n)(1+q2n)2θ3(q)=n=qn2=n=1(1q2n)(1+q2n1)2θ4(q)=n=(1)nqn2=n=1(1q2n)(1q2n1)2

分割恒等式

n=1(1q2n1)=n=111+qn
特に
θ1(q)=θ2(q)θ3(q)θ4(q)θ4(q)=n=11qn1+qn

n=1(1q2n1)=n=1(1q2n)(1q2n1)1q2n=n=11qn1q2n=n=111+qn
およびこのことから
θ2(q)θ3(q)θ4(q)=2q14n=1(1q2n)3{(1+q2n)(1+q2n1)(1q2n1)}2=2q14n=1(1q2n)3{(1+qn)(1q2n1)}2=2q14n=1(1q2n)3=θ1(q)
がわかる。

ヤコビによる証明

 ヤコビによる証明は この記事 の定理4として紹介していたので、ここではその要点を解説するだけに留める。また実際にはヤコビの楕円関数を中心に議論が進められるが、ここではその議論をテータ関数に置き換えて考える。
 ヤコビによる証明においてはテータ関数の楕円関数としての性質に着目することとなる(正確にはテータ関数が持つのは擬二重周期性であり、テータ関数同士の商を取ることで二重周期性が現れる)。具体的にはヤコビの楕円関数を経由することで次のような公式が示される。

2zddzlogθ2(z,q)θ4(z,q)=θ3(q)2θ1(z,q)θ3(z,q)θ2(z,q)θ4(z,q)zddzlogθ1(iz12,q12)θ2(iz12,q12)=θ2(q)θ3(q)θ3(z,q)θ2(z,q)

 またこの左辺を展開することで以下のランベルト級数が得られる。

θ3(q)2θ1(z,q)θ3(z,q)θ2(z,q)θ4(z,q)=z1z+1+2n=1qn1+(q)n(znzn)θ2(q)θ3(q)θ3(z,q)θ2(z,q)=2z12+z122n=1(1)nq2n11q2n1(zn12+z(n12))

証明(長いので折りたたみ)

zddzlog((1qmz)(1qmz1))=qmz1qmzqmz11qmz1=k=1qkm(zkzk)
に注意すると
2zddzlogθ2(z,q)θ4(z,q)=2zddzlog((z12+z12)n=1(1+q2nz)(1+q2nz1)(1q2n1z)(1q2n1z1))=z12z12z12+z12+2m=1(1)mzddzlog((1+(q)mz)(1+(q)mz1))=z1z+12m=1(1)mk=1(q)mk(zkzk)=z1z+12k=1(m=1((qk))m)(zkzk)=z1z+1+2k=1qk1+(q)k(zkzk)
が得られる。
 同様に
2zddzlogθ1(z,q12)θ2(z,q12)=2zddzlog(z12z12z12+z12n=1(1qnz)(1qnz1)(1+qnz)(1+qnz1))=z12+z12z12z12z12z12z12+z122n=1k=1(qkn(1)kqkn)(zkzk)=4zz14n=1k=1q(2k1)n(z2k1z(2k1))=4zz14k=1q2k11q2k1(z2k1z(2k1))
より
2zddzlogθ1(iz12,q12)θ2(iz12,q12)=z12ddz12logθ1(iz12,q12)θ2(iz12,q12)=i(2iz12(iz12)12n=1q2n11q2n1((iz12)2n1(iz12)(2n1)))=2z12+z122n=1(1)nq2n11q2n1(zn12+z(n12))
を得る。

 そしてこれのz1における挙動を考えることで所望の等式が得られることとなる。

θ3(q)4=1+8n=1nqn1+(q)nθ3(q)2=14n=1(1)nq2n11q2n1

θ2(1,q)=θ2(q),θ3(1,q)=θ3(q),θ4(1,q)=θ4(q)
および
limz1θ1(z,q)z1=θ1(q)2=12θ2(q)θ3(q)θ4(q)limz1znznz1=2n
に注意するとわかる。

Hirschhornによる証明

 ヤコビによる証明ではテータ関数の楕円関数としての性質から導かれる
2zddzlogθ2(z,q)θ4(z,q)=θ3(q)2θ1(z,q)θ3(z,q)θ2(z,q)θ4(z,q)zddzlogθ1(iz12,q12)θ2(iz12,q12)=θ2(q)θ3(q)θ3(z,q)θ2(z,q)
といった高度な等式を用いていた。
 しかし
θ3(q)4=1+8n=1nqn1+(q)nθ3(q)2=14n=1(1)nq2n11q2n1
を示すだけなら楕円関数という道具を持ち出す必要はなく、テータ関数やヤコビの三重積を巧みに変形することで導出することができる。
 ここではHirschhornの論文"A simple proof of Jacobi's two/four-square theorem"による証明を見ていくこととしよう。

余談

 ちなみにHirschhornはq-級数に関する論文を多数出版しており、それらは 彼のホームページ にて公開されています。今回紹介する内容はその21,25番目の論文に当たります。

二平方和定理の証明

f(z)=n=q2n2+n+18z2n+12
とおくと
θ1(z,q12)=f(z)f(z1)
が成り立つ。

 mの偶奇によってm=2n,2n1とおくことで
θ1(z,q12)=m=(1)mq12(m+12)2zm+12=n=q12(2n+12)2z2n+12n=q12(2n+12)2z(2n+12)=f(z)f(z1)
とわかる。

f(1)=q18n=1(1qn)(1+qn)2f(1)f(1)=12(14n=1(1)nq2n11+q2n1)

 ヤコビの三重積から
f(z)=q18z12n=(q2)n2(qz2)n=q18z12n=1(1q4n)(1+q2(2n1)(qz2))(1+q2(2n1)(qz2)1)=q18z12n=1(1q4n)(1+q4n1z2)(1+q4n3z2)
が成り立つことに注意すると
f(1)=q18n=1(1q4n)(1+q4n1)(1+q4n3)=q18n=1(1qn)(1+qn)(1+q2n)(1+q2n1)=q18n=1(1qn)(1+qn)2
および
zddzlogf(z)=12+2n=1(q4n1z21+q4n1z2q4n3z21+q4n3z2)f(1)f(1)=12+2n=1(q4n11+q4n1q4n31+q4n3)=12(1+4n=1(1)nq2n11+q2n1)
を得る。

θ3(q)2=14n=1(1)nq2n11q2n1

 補題11から
12θ1(q12)=ddzθ1(z,q12)|z=1=ddz(f(z)f(z1))|z=1=2f(1)
が成り立つので補題12より
12θ1(q12)f(1)=n=1(1qn1+qn)2=θ4(q)2=2f(1)f(1)=1+4n=1(1)nq2n11+q2n1
つまり
θ3(q)2=θ4(q)2=14n=1(1)nq2n11q2n1
を得る。

四平方定理の証明

θ1(q12)2=8θ2(q)θ3(q)qddqlogθ2(q)θ3(q)

 m,nの偶奇の違いによって
(r,s)={(m+n2,mn2)mn(mod2)(mn12,m+n+12)mn(mod2)
とおくと
(m,n)={(s+r,sr)mn(mod2)(s+r,rs1)mn(mod2)
より
(m+12)2+(n+12)2=(r+s+12)2+(rs+12)2=2((r+12)2+s2)(2m+1)(2n+1)=(1)m+n(2r+2s+1)(2r2s+1)=(1)m+n((2r+1)24s2)
が成り立つ。
 したがって
θ1(q12)2=m,n=(1)m+n(2m+1)(2n+1)q((m+12)2+(n+12)2)/2=2r,s=((2r+1)24s2)q(r+12)2+s2=8((s=qs2)(r=(r+12)2q(r+12)2)(r=q(r+12)2)(s=s2qs2))=8(θ3(q)qddqθ2(q)θ2(q)qddqθ3(q))=8θ2(q)θ3(q)qddqlogθ2(q)θ3(q)
を得る。

θ3(q)4=1+8n=1nqn1+(q)n

4qddqlogθ2(q)θ3(q)=4qddqlog(q14n=1(1+q2n)2(1+q2n1)2)=1+8n=1(2nq2n1+q2n(2n1)q2n11+q2n1)=1+8n=1(1)nnqn1+qn
および
θ1(q12)22θ2(q)θ3(q)=n=1(1qn)6(1q2n)2(1+q2n)2(1+q2n1)2=n=1(1qn)4(1+qn)2(1+qn)2=θ4(q)4
が成り立つことに注意すると補題14より
θ3(q)4=θ4(q)4=1+8n=1nqn1+(q)n
を得る。

参考文献

[1]
M. D. Hirschhorn, A simple proof of Jacobi's two-square theorem, Amer. Math. Monthly, 1985, pp. 579-580
[2]
M. D. Hirschhorn, A simple proof of Jacobi's four-square theorem., Proc. Amer. Math. Soc., 1987, pp. 436-438
投稿日:2024216
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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