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東大数理院試過去問解答例(2014A04)

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2014A04

実定数$a$$|a|\neq1$であるようなものと正整数$n$をとる。積分
$$ I_n=\int_{0}^{2\pi}\frac{\cos(n\theta)}{1-2a\cos\theta+a^2}d\theta $$
を計算しなさい。

まず$a\neq0$の場合を考える。$C$を単位円上に反時計回りの向きを入れた経路とする。置換積分により
$$ \begin{split} I_n&=\frac{1}{2}\int_C\frac{e^{in\theta}+e^{-in\theta}}{1-a\left(e^{i\theta}+e^{-i\theta}\right)+a^2}d\theta\\ &=\frac{1}{2}\int_C\frac{z^n+z^{-n}}{1-a(z+z^{-1})+a^2}\frac{dz}{iz}\\ &=-\frac{i}{2} \int_C\frac{z^n+z^{-n}}{(1+a^2)z-a(z^2+1)}{dz}\\ &=\frac{i}{2a}\int_C\frac{z^n+z^{-n}}{z^2-{(a+a^{-1})}z+1}dz\\ &=\frac{i}{2a}\int_C\frac{z^n+z^{-n}}{\left(z-a\right)\left(z-a^{-1}\right)}dz\\ &=\frac{i}{2a}\int_C\frac{z^{2n}+1}{z^n\left(z-a\right)\left(z-a^{-1}\right)}dz\\ \end{split} $$
である。ここで被積分関数の$a,a^{-1}$に於ける留数は
$$ \frac{a^n+a^{-n}}{a-a^{-1}} $$
$$ \frac{a^n+a^{-n}}{a^{-1}-a} $$
である。一方$z=0$に於ける留数は
$$ \begin{split} &\mathrm{Res}_{z=0}\frac{1+z^{2n}}{z^n}\left(\sum_{j=0}^\infty\frac{z^j}{a^{j+1}}\right)\left(\sum_{j=0}^\infty{a^{j+1}z^j}\right)\\ &=\left(a^{n-1}+a^{n-3}+a^{n-5}+\cdots+a^{-(n-3)}+a^{-(n-1)}\right)\\ &=\frac{a^n-a^{-n}}{a-a^{-1}} \end{split} $$
である。以上の議論と留数定理から、$0<|a|<1$のとき積分値は
$$ -\frac{\pi}{a}\left(\frac{a^n+a^{-n}}{a-a^{-1}}+\frac{a^n-a^{-n}}{a-a^{-1}}\right)=\frac{2\pi a^n}{1-a^2} $$
である一方、$|a|>1$のときは
$$ -\frac{\pi}{a}\left(-\frac{a^n+a^{-n}}{a-a^{-1}}+\frac{a^n-a^{-n}}{a-a^{-1}}\right)=\frac{2\pi}{a^n(a^2-1)} $$
である。一方$a=0$のときは$0$であるから、以上をまとめると
$$ I_n=\color{red}\begin{cases} \frac{2\pi a^n}{1-a^2}&(|a|<1)\\ \frac{2\pi}{a^n(a^2-1)}&(1<|a|) \end{cases} $$
である。

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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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