こんにちは ごててんです
位相空間論の簡単?な問題をいっぱい用意したら面白いのではと思い, 書くことにしました. 1つの記事につき6問くらいで、全4回を予定しています(6問分解答を書くだけで結構しんどかったので第2回があるかも怪しいですが......) 問題の質ですが, あまり良くないものも混じっています. また出題の分野は偏っています.
基礎的な位相空間を学んでいる途中の人向けです. 問題を考える部分より解答を書く部分で頑張ったので, 解けても解答を読んでほしいです(何)
以下断らない限り集合$X,Y$といえば空でないものを想定, 位相空間は$(X,\mathcal{O}),(Y,\mathcal{O}')$を考えてください. またことわらない限り$\mathbb{R}^n$の部分集合には通常の位相が入っているとしてください.
無限個の開集合の共通部分はつねに開集合か?
離散位相$(X,2^X)$からの写像$f:X \rightarrow Y$はつねに連続であることを示せ.
密着位相$(X,\{\emptyset,X\})$からの実連続関数をすべて求めよ.
$X$を有限集合とする. このとき$a \in X$に対し, $a$を含む開集合すべての共通部分$U_a$はまた開集合となることを示せ.
距離空間がハウスドルフであることを示せ.
ハウスドルフでないかつ密着位相でない位相空間を挙げよ.
お疲れ様です. 解答編になります.
意図的に変な解答を書いているところがあります. そういう部分は [!]ネタ とマーカーを入れておきます.
循環論法とか, そういう問題をすべて放棄した解答なので試験などで書かないでください. ジョークです.
無限個の開集合の共通部分はつねに開集合か?
よくある問題ですね. 無限個の開集合の共通部分は開集合とは限りません. 色々示し方はありますが, 定石通り$\displaystyle \bigcap_{n = 1}^{\infty} (-\frac{1}{n},\frac{1}{n})$が$\{0\}$に等しいことを示そうと思います. $\mathbb{R}$最高!
$\displaystyle \{0\} \subset \bigcap_{n = 1}^{\infty} (-\frac{1}{n},\frac{1}{n})$は明らかなので, 逆の包含$\displaystyle \bigcap_{n = 1}^{\infty} (-\frac{1}{n},\frac{1}{n}) \subset \{0\}$を示せばよいです.
$x \ne 0$ としてこれが$\displaystyle \bigcap_{n = 1}^{\infty} (-\frac{1}{n},\frac{1}{n})$に含まれないことを言いましょう. アルキメデスの原理により$1/\left| x \right| < N$となる自然数$N$をとると, $\left| x \right| > 1/N$より$x \notin (-\frac{1}{N},\frac{1}{N})$で$x \notin \displaystyle \bigcap_{n = 1}^{\infty} (-\frac{1}{n},\frac{1}{n})$となります.
一応$\{0\}$が開集合でないことを言います. が、面倒なので知識でゴリ押して手を抜いて考えてみます.(え?)
[!]ネタ $\mathbb{R}$は連結なので空でない真部分集合の$\{0\}$が「開集合かつ閉集合」となることはなく, $T_1$空間の一点集合は閉集合なので$\{0\}$は閉集合, すなわち開集合ではありません.
・連結であるとは, 「開集合であり, 閉集合でもある部分集合が全体集合と空集合のみ」ということ
・$T_1$空間であることと, 任意の一点集合が閉集合であることは同値
「$\mathbb{R}$が連結なことを示すコスト」$>>>$「普通に一点集合が開集合でないことを示すコスト」なのでこんな回答は怒られても仕方がない?
真面目に一点集合が開集合でないことを示します. これただの解析だな
開集合であるとすれば, 含まれる点がすべて内点でなければなりません. しかし一点集合$\{0\}$の点$0$はどんなに小さく半径$\epsilon > 0$を取っても, たとえば$\epsilon /2 \in (-\epsilon,\epsilon)$であるので, これは内点となりません. よって$\{0\}$は開集合となりません.
離散位相$(X,2^X)$からの写像$f:X \rightarrow Y$はつねに連続であることを示せ.
自明!では解説を書きます. 写像が連続かどうかを見るには, 任意の($Y$の)開集合の逆像が$X$の開集合になることを見ればよいです. さて, $X$では任意の集合が開集合になっているので問答無用で開集合の逆像は開集合です.
これは直感にも一致する結果ですね. 離散位相は点が散らばっているイメージなので, どんな点も近傍を見てもそもそも近くに点がないので連続とか気にしなくていいという感じです.
せっかくなので各点で連続になっているかどうかを見ての証明もしてみます.
$f:X \rightarrow Y$が$X$の点$x$で連続であるとは, 次を満たすことである.
任意の$f(x)$の近傍$V \subset Y$に対して$x$の近傍$U \subset X$が存在し$f(U) \subset V$をみたす.
任意の$f(x)$の(小さい)近傍$V \subset Y$に対して(十分に小さい)$x$の近傍$U \subset X$が存在し$f(U) \subset V$をみたす, と見ればイプシロンデルタそのものですね. これを使います.
・写像が任意の$X$の点において連続なら, 連続写像.
$x$を$X$の点とします. ここで$f(x)$の小さ~~~い近傍$V$に対して十分に小さい$x$の近傍をとってこなければならないのですが, $X$は今離散位相として考えているので, $x$の近傍として$U=\{x\}$を取ってこれます(!?)
やりたい放題ですね 離散位相ってヤツは 半径ゼロが許容されてるようなもんです
というわけで当然$f(U) = \{f(x)\} \subset V $が成立します.
密着位相$(X,\{\emptyset,X\})$からの実連続関数をすべて求めよ.
まあこんな抽象的な問をしてるので答えは簡潔なのでしょうね. 答えは定数関数のみとなります.
中間値の定理を用いて解いてみましょう.
$f:X \rightarrow \mathbb{R}$を実連続関数, $(X,\mathcal{O})$は連結であるとする.
$x,y$を$X$の2点とするとき, $f(x) < \alpha < f(y)$をみたすような任意の実数$\alpha$について$f(z)=\alpha$となる$z \in X$が存在する.
使うために, 密着位相が連結であることを示さなければなりませんが, これはとても明らかです.
・連結であるとは, 「開集合であり, 閉集合でもある部分集合が全体集合と空集合のみ」ということ
そもそも開集合が全体集合と空集合しかありません. そしてそれは閉集合です. よって連結です.
$f:X \rightarrow \mathbb{R}$を実連続関数とします. これが定数関数でないとすると, $x,y \in X$があり$f(x) < f(y)$とできます. よって, $\alpha = \frac{f(x)+f(y)}{2}$とすればこれは$f(x) < \alpha < f(y)$をみたすので, $\alpha = f(z)$となる$z \in X$をとることができます.
この$z$を使ってバグらせていきます. $[f(x),f(z)]$の$f$による逆像$I$は, 閉区間の逆像なので閉集合となるはずです. これは空集合でないので$I=X$となるはずですが, $y \notin I$となるはずです. よって$I$は閉集合とならずこれは矛盾です. よって, 実連続関数は定数関数しか存在しません!
・連結な位相空間からの実連続関数で中間値の定理が成立する.
$X$を有限集合とする. このとき$x \in X$に対し, $x$を含む開集合すべての共通部分$U_x$はまた開集合となることを示せ.
無茶苦茶かんたんです. xを含む開集合は, $2^X$が有限集合であることから明らかに有限個しか存在しません. 開集合の有限個の共通部分は開集合なので$U_x$も当然開集合となります.
$U_x$について補足します. この$U_x(x \in X)$の集合は$X$の最小の開基となります.
また, この$U_x$を用いて$X$に関係を定義することができます. $x \leq y$を$U_x \subset U_y$で定義するとこれは擬順序(順序関係における「反射律」と「推移律」をみたすもの)となり, さらに$X$が$T_0$空間であることと$\leq$が半順序となることは同値になります!
距離空間がハウスドルフであることを示せ.
ハウスドルフ空間の定義を貼っておきます.
$(X,\mathcal{O})$を位相空間とする. $x,y\in X$が異なる2点であれば, 2つの$X$の開集合$U,V \in \mathcal{O}$で $(U \cap V = \emptyset)$であるものがあり$x\in U , y\in V$ とできる(異なる2点が開集合で分離できる, などと説明される)という性質をもつとき, $(X,\mathcal{O})$はハウスドルフ空間であるという.
これは典型問題(?)です. さらさら~っと流しましょう. こういうのはどうせ三角不等式です.
$(X,d)$を距離空間とします. $X$が1点集合なら明らかにハウスドルフです. $X$が2点以上からなるとします. $x,y \in X$を異なる2点とすれば, $\epsilon = d(x,y) > 0$としたとき$x$からの距離が$\epsilon /2$未満の点の集合を$N_x$, $y$からの距離が$\epsilon /2$未満の点の集合を$N_y$とするとき, これらは開集合です. この2つが共通部分を持たないことを見ましょう.
共通部分を持つとして矛盾を導きます. $z \in N_x \cap N_y$としたとき, 三角不等式より $d(x,y) \leq d(x,z) + d(y,z) < \epsilon /2 + \epsilon /2 = \epsilon = d(x,y)$より矛盾です.
ハウスドルフでないかつ密着位相でない位相空間を挙げよ.
い~~~~っぱいありますね. なんでもいいですね.
一番手を抜いた回答をするならば, シェルピンスキー空間の名を述べるのみで終わりです.
これは$X=\{1,2\}$としたときの$\{ \emptyset , \{1\}, X \}$のことです.
この空間は$T_0$であるが$T_1$でない例になっています. 示してみてください.
ハウスドルフでないことを示します. $2$を含んでいる開集合は$X$のみで, これは$1$を含むどの開集合とも共通部分を持ちます. よって$1$と$2$は分離できません.
面倒なので他の例は名前だけを2つ挙げておきます.
・Odd-Even Topology
・$\mathbb{R}$の補有限位相
ここまで読んでいただきありがとうございます!!!問題の解答を情報量を持たせつつ書くのはとても疲れますね 演習の準備って大変だなぁ それでは!!!!!