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いくつかの代数的な宝探し的な問題

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・今まで私が出会った代数的な話題から、宝探し的な問題を集めてみました。
・一部は計算にコンピュータを使うことを想定していますが、全探索ではない方法を想定しています。
日曜数学アドベントカレンダー2023 の参加として答えと背景を書きました。2023/12/17

問題

[1]
$ x^3+2x^2-5x+1≡0 \pmod{1111111111111111111}$ の整数解を見つけてください。
[2]
$a = \frac{1+\sqrt{5}}{2},\ b =4+\sqrt{17},\ c = \frac{9+\sqrt{85}}{2},\ d =\frac{\sqrt{5}+\sqrt{17}-2}{2} $ に対して、$a^p b^q c^r d^s=1$ となる整数の組$p,q,r,s$を見つけてください。
[3]
可換環 $\mathbb{Q}[x,y]/(x^5-1,y^5-1)$ において5乗して1になる元のうち、$x^p y^q \bmod {(x^5-1,y^5-1)}$ ($p,q\in\mathbb{N}$) 以外のものがありますので、見つけてください。
[4]
可換環 $\mathbb{C}[x,y]/(x^2+y^2+1)$$(x+y+1) \bmod{(x^2+y^2+1)}$ は既約元ではありませんので、分解を見つけてください。
[5]
2つの非可換環 $\mathbb{Q}[x,y]/(xx-33,yy-35,xy+yx)$$\mathbb{Q}[X,Y]/(XX+15,YY-77,XY+YX)$ は同型ですので、同型写像を見つけてください。
[6]
以下の性質を満たす整数$A$を見つけてください。(性質を満たすことを証明してください。)
「任意の自然数$N$に対して、$n$が十分大きければ $\sum_{k=1}^{n} (A^k-3\cdot 5^k)/k$ を既約分数で表したときの分子が $5^N$で割り切れる」

答え

$ x^3+2x^2-5x+1\equiv 0 \pmod{1111111111111111111}$ の整数解を見つけてください。

$g(x)=x^3+2x^2-5x+1, f(x)=x^{18}+x^{17}+..+x+1$ とおく。問題の法は$f(10)$になっている。
そこで、もし$a(X),b(X),c(X) \in \mathbb{Z}[X]$によって $g(x)\equiv (x-a(X))(x-b(X))(x-c(X)) \pmod{f(X)}$ と分解できれば、$g(a(X))\equiv 0$, すなわち $g(a(X))=f(X)q(X)$となる$q(X)\in\mathbb{Q}[X]$があって、
ガウスの補題により、$q(X)\in \mathbb{Z}[X]$なので、
$X=10$を代入して $g(a(10)) = f(10)q(10) \equiv 0 \pmod{f(10)}$が言える。
$b(X),c(X)$についても同様なので、$x\equiv a(10),b(10),c(10) \pmod{f(10)}$が解となる。
円分拡大$[\mathbb{Q}:\mathbb{Q}(X)/f(X)]$のガロア群は$(\mathbb{Z}/19\mathbb{Z})^*$と同一視できる。
$X \bmod {f(X)}$$ X^k\bmod{f(X)}$に写す写像$\sigma_k$と、$k\in (\mathbb{Z}/19\mathbb{Z})^{*}$が対応する。)
これは18次の巡回群であり、従ってその中間体な3次拡大$[\mathbb{Q}:M]$は1つに定まり、
具体的には部分群$\{\sigma_1,\sigma_7,\sigma_8,\sigma_{11},\sigma_{12},\sigma_{18}\}$で固定される中間体である。
$w_1 = X+X^7+X^8+X^{11}+X^{12}+X^{18} \bmod{f(X)}$
がその中間体の生成元としてとれて、その共役は以下のようになっている。
$w_2 = X^2+X^3+X^5+X^{14}+X^{16}+X^{17} \bmod{f(X)}$
$w_3 = X^4+X^6+X^9+X^{10}+X^{13}+X^{15} \bmod{f(X)} = -1-w_1-w_2$
そこで例えば適当な$m,n\in \mathbb{Z}$によって
$a(X) = mw_1+nw_2$
$b(X) = mw_2+nw_3$
$c(X) = mw_3+nw_1$
とおけると見込むと $g(x)$の2次の係数から $a(X)+b(X)+c(X)=-m-n$$-2$ に一致するので
一番あり得そうな$m=n=1$を試すと他の係数も一致するというようにして
$a(X) = w_1+w_2$
$b(X) = w_2+w_3$
$c(X) = w_3+w_1$
が最初の仮定を満たすことを得れば、
$x \equiv 1110101100110101110,111110011001111100,1001011111111010010 \pmod {f(10)}$
を得る。

$a = \frac{1+\sqrt{5}}{2},\ b =4+\sqrt{17},\ c = \frac{9+\sqrt{85}}{2},\ d =\frac{\sqrt{5}+\sqrt{17}-2}{2} $ に対して、
$a^p b^q c^r d^s=1$ となる整数の組$p,q,r,s$を見つけてください。

$ K=\mathbb{Q}(\sqrt{5},\sqrt{17})$とおくと、4つの体準同型 $K→R$がある:
$φ_1:\sqrt{5},\sqrt{17},\sqrt{85}$$\sqrt{5},\sqrt{17},\sqrt{85}$に送る
$φ_2:\sqrt{5},\sqrt{17},\sqrt{85}$$-\sqrt{5},\sqrt{17},-\sqrt{85}$に送る
$φ_3:\sqrt{5},\sqrt{17},\sqrt{85}$$\sqrt{5},-\sqrt{17},-\sqrt{85}$に送る
$φ_4:\sqrt{5},\sqrt{17},\sqrt{85}$$-\sqrt{5},-\sqrt{17},\sqrt{85}$に送る
これらにより線形写像$f:K*→\mathbb{R}^4$$f(α)=\begin{pmatrix} \log|φ_1(α)| \\ \log|φ_2(α)| \\ \log|φ_3(α)| \\ \log|φ_4(α)| \end{pmatrix}$ で定める。
$A=f(a),B=f(b),C=f(c),D=f(d)$ とおくと、$pA+qB+rC+sD=0$ が要求される。
ここで、$a,b,c,d$はすべて$K/\mathbb{Q}$に関するノルムが1となっている。
すなわち $φ_1(a)φ_2(a)φ_3(a)φ_4(a) = 1$
すなわち $\log|φ_1(a)| + \log|φ_2(a)| + \log|φ_3(a)| + \log|φ_4(a)| = 0$
$b,c,d$についても同様であるから、$A,B,C,D$$\mathbb{R}^4$の3次元部分空間$\{ \begin{pmatrix} x\\y\\z\\w \end{pmatrix}|x+y+z+w=0 \}$ に含まれている。
従って、線形従属関係$pA+qB+rC+sD=0$は存在する。
数値計算すると
$ p \begin{pmatrix} 0.481\\-0.481\\0.481\\-0.481 \end{pmatrix} +q \begin{pmatrix} 2.095\\2.095\\-2.095\\-2.095 \end{pmatrix} +r \begin{pmatrix} 2.209\\-2.209\\-2.209\\2.209 \end{pmatrix} =-s \begin{pmatrix} 0.779\\-2.874\\0.665\\1.430 \end{pmatrix} $
で線形従属なので例えば$s=1$とおいて上3行を解くと$(p,q,r)=(-1.5,0.5,-0.5)$を得るので、答えとなる整数の組$(p,q,r,s)=(-3k,k,-k,2k) (k\in\mathbb{Z})$を得る。
*対数をとるのに計算機がほぼ必須なのでこの次数なら総当たりのほうが早いかもしれないが、より高次の場合には総当たりのほうが大変になるだろう

可換環 $\mathbb{Q}[x,y]/(x^5-1,y^5-1)$ において5乗して1になる元のうち、$x^p y^q \bmod {(x^5-1,y^5-1)}$ ($p,q\in\mathbb{N}$) 以外のものがありますので、見つけてください。

$\mathbb{Q}[x,y]$におけるイデアル$I=(x^5-1,y^5-1)$は7つの素イデアル$I_1,..,I_7$に分解され、対応して環$A=\mathbb{Q}[x,y]/I$は7個の体の直積に分解される。
(剰余をとっている素イデアルを出現順に$I_1,..,I_7$とおく)
$A = \mathbb{Q}[x,y]/(x-1,y-1) $
 $ \times \mathbb{Q}[x,y]/(x-1,y^4+y^3+y^2+y+1)$
 $ \times \mathbb{Q}[x,y]/(x^4+x^3+x^2+x+1,y-1)$
 $ \times \mathbb{Q}[x,y]/(x^4+x^3+x^2+x+1,y-x)$
 $ \times \mathbb{Q}[x,y]/(x^4+x^3+x^2+x+1,y-x^2)$
 $ \times \mathbb{Q}[x,y]/(x^4+x^3+x^2+x+1,y-x^3)$
 $ \times \mathbb{Q}[x,y]/(x^4+x^3+x^2+x+1,y-x^4)$
5乗して1になる元は、
第1成分が$1 \bmod I_1 $, 第2成分が$y^{n_2} \bmod I_2 $, 第k成分(k=3から7)が$x^{n_k} \bmod I_k $ $(n_2,..,n_7 \in \{0,1,2,3,4\} )$ で表され、従って$5^6$個ある。
そのうち、$x^p y^q$ の形で表されるのは25個しかないので他にもある。
そこで例えば第3成分のみ $x \bmod I_3$ で、他の成分が$1 \bmod I_k$ となるような元を考えてみる。
$x=1, y=x^k (k\in{1,2,3,4})$ のとき$1$となる多項式
$u = 1 + (y-x)(y-x^2)(y-x^3)(y-x^4)(x-1) v(x,y) $
を考えて$y=1$のときに$u=x$となるような$v(x,y) \bmod I$を定めれば良い。
$(1-x)^2(1-x^2)(1-x^3)(1-x^4) \equiv 5-5x \pmod{x^4+x^3+x^2+x+1}$
であることから(補足参照)
$u = 1 + (y-x)(y-x^2)(y-x^3)(y-x^4)(x-1)/5$ とすれば良い
ちなみにコンピュータで次数を下げると$u = (y^4+y^3+y^2+y+1)(x-1)/5 + 1$ と書ける。
*補足 $(1-x)(1-x^2)(1-x^3)(1-x^4) \bmod{x^4+x^3+x^2+x+1}$ は方程式$x^4+x^3+x^2+x+1=0$に対して$1-x=X$として得る$X$のモニック方程式の定数項として計算できる。)
*補足:5乗して1になる$5^6$個の元全体はたぶん$x,y,u(x,y),u(x^2,y),u(x^3,y),u(x^4,y)$で生成されると思う。

可換環 $\mathbb{C}[x,y]/(x^2+y^2+1)$$(x+y+1) \bmod{(x^2+y^2+1)}$ は既約元ではありませんので、分解を見つけてください。

$f=x^2+y^2+1, g=x+y+1$とおく。
$A = \mathbb{C}[x,y]/(f)$ において、イデアルとして$(g \bmod{f}) = I_1 I_2$と分解されると想定する。もし$I_1, I_2$ がそれぞれ $h_1,h_2 \bmod{f}$ によって生成される単項イデアルであれば、環Aの単数$u$によって、$g \equiv u h_1 h_2 \pmod{(f)}$と分解される。環$R=\mathbb{C}[x,y]$のイデアルに持ち上げると、次のイデアルの関係がある。
$(x^2+y^2+1, x+y+1) = (x^2+y^2+1, h_1) (x^2+y^2+1,h_2)$
$R$の素イデアル$p$は、$xy$平面の既約な代数的集合$Z$と1対1に対応する。($p$の零点集合が$Z$で、$Z$で消える多項式の集合が$p$という対応)
$(x^2+y^2+1, x+y+1)$の零点集合は$(x,y)=((-1+\sqrt{3}i)/2,(-1-\sqrt{3}i)/2),((-1-\sqrt{3}i)/2,(-1+\sqrt{3}i)/2)$の2点であるから、
$(x^2+y^2+1, h_1)$の零点集合が$(x,y)=(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2},(-1-\sqrt{3}i)/2)$の1点
$(x^2+y^2+1, h_2)$の零点集合が$(x,y)=((-1-\sqrt{3}i)/2,\frac{-1+\sqrt{3}i}{2})$の1点
となるような$h_1, h_2$を探すことを考える。
ベズーの定理により射影曲線では$m$次曲線と$n$次曲線は$mn$点で交わることを背景に、略式に、$(x^2+y^2+1)$と、指定された点および無限遠点の2点で交わる直線を採用すれば良い。すなわち、指定された点を通り、傾きが$±i$の直線を採用すれば良い。(どちらを採用するかは単数倍の影響;補足参照)
そこで
$h_1 = (x-\frac{-1-\sqrt{3}i}{2})+(y-\frac{-1+\sqrt{3}i}{2})i = (x+yi+\frac{(1+\sqrt{3})(1+i)}{2})$
$h_2 = (x-\frac{-1+\sqrt{3}i}{2})-(y-\frac{-1-\sqrt{3}i}{2})i = (x-yi+\frac{(1+\sqrt{3})(1-i)}{2})$
とおくと、$h_1 h_2 = (x^2+y^2+1) + (1+\sqrt{3})(x+y+1)$ が成り立ち
$(x+y+1) \equiv (x+yi+\frac{(1+\sqrt{3})(1+i)}{2})(x-yi+\frac{(1+\sqrt{3})(1-i)}{2}) / (1+\sqrt{3}) \pmod{f}$
と分解される
*補足
傾き$±i$の選択の変更はどちらの直線の方程式も同じ単項イデアルの生成元だから単数倍の変化しか与えない。実際に確認すると
$((x-x_0)+(y-y_0)i)(x-yi) = (x^2+y^2 - x_0^2 - y_0^2 ) - (x_0+y_0 i) ((x-x_0)-(y-y_0)i)$ が成り立つので
$x_0,y_0$$f=x^2+y^2+1=0$上の点なら $(x-x_0)-(y-y_0) i \equiv \frac{x-yi}{x_0+y_0 i} ((x-x_0)+(y-y_0) i) \pmod {f}$であり
$(x+yi)(x-yi)\equiv -1 \pmod{f} $なので、$(x- yi) \bmod{f}$は環$A$の単数である。

2つの非可換環 $\mathbb{Q}[x,y]/(xx-33,yy-35,xy+yx)$$\mathbb{Q}[X,Y]/(XX+15,YY-77,XY+YX)$ は同型ですので、同型写像を見つけてください。

問題文から変数名を変更し、四元数環っぽい変数で言い換えて、
$A = \{w+xi+yj+zk|\ w,x,y,z\in\mathbb{Q}\} (i^2=33,j^2=35, k=ij=-ji)$
$B = \{w+xI+yJ+zK|\ w,x,y,z\in\mathbb{Q}\} (I^2=-15,J^2=77,K=IJ=-JI)$
とおいて、これらの同型を求める。まず、$(w+xi+yj+zk)^2=-15$となる$w,x,y,z$を探す。
展開は $w^2+33x^2+35y^2-1155z^2 +2w(xi+yj+zk)$ なので、$w=0$として良くて、
適当に小さい範囲で探索すると、$(x,y,z) = (5,3,1)$ が見つかる。
そこで、$I=5i+3j+k, J=xi+yj+zk$とおいてみる。(同じ仕組みで$w=0$として良い)
$J^2=77, IJ=-JI$を展開して、$33x^2+35y^2-1155z^2=77, 165x + 105y - 1155z= 0$
例えばzを消去して、xを係数に含むyの2次方程式として解くと、根号の中身に$5(392-3x^2)$が現れる。
これもまた適当に小さい範囲で探索すると、$x=7$のときに平方数$35^2$となり、そのとき$y=11/2,z=3/2$と解決した。すなわち、
$I = 5i+3j+k$
$J = (14i+11j+3k)/2$
$K = IJ = (13ij - 2jk - ki)/2 = (70i + 33j + 13k)/2$
が求める同型を与える。ちなみに逆変換を求めておくと(連立一次方程式)
$i = -11I+3J+K$
$j = (-14I+5J+K)/2$
$k = (154I-45J-13K)/2$

以下の性質を満たす整数$A$を見つけてください。(性質を満たすことを証明してください。)
「任意の自然数$N$に対して、$n$が十分大きければ $\sum_{k=1}^{n} (A^k-3\cdot 5^k)/k$ を既約分数で表したときの分子が $5^N$で割り切れる」

これは形式的には「$\log(1-65)=\log(-64)=3\log(-4)=3\log(1-5)$」を、$\log(1-x)=\sum_{k=1}^{\infty}-x^k/k$で展開したもので、以下のように正当化される。
$x<1$に対して $\log(1-3x+3x^2-x^3) = \log(1-x)^3 = 3\log(1-x)$ が成り立つ。
(左辺)-(右辺)の$x=0$でのテイラー展開を考えると、
$\sum_{k=1}^{\infty} -(3x-3x^2+x^3)^k/k - 3\sum_{k=1}^{\infty}-x^k/k = 0$
ここで、$k=n+1$以上は$x^{n+1}$次以上の項しか与えないので、
$k=n$までの部分和をとったとき、$x^{n}$次以下の係数がすべて0になる。
すなわち$k=n$までの部分和は、$x$の整数係数多項式$b_n(x)$によって以下のようにおける
$\sum_{k=1}^{n} -(3x-3x^2+x^3)^k/k - 3\sum_{k=1}^{n} -x^k/k = x^{n+1}b_n(x)/gcd(1,2,..,n)$
$x=5$を代入すると(部分和への代入なので、元の無限級数の収束範囲は気にしなくて良い)
左辺は、$-(65^k-3\cdot 5^k)/k$で、右辺の分子は$5$$n+1$回以上、分母は$5$$floor[\log_5(n)]$回割り切れる。
任意の$N$に対して$n$を十分大きくすれば、$n+1-floor[\log_5(n)]$$N$以上にできるので、$A=65$が適する。


背景

問題1

多項式$g(x)=x^3+2x^2-5x+1$に整数を代入して得る結果の素因数は$19$で割った余りが$±1,±7,±8$に限られ、また逆に、任意の$19\mathbb{Z}±1,±7,±8$型の素数pに対して$g(x)$$p$で割り切れる整数xが存在する。このような規則は、私が10年以上前に環とかイデアルとかすらよく知らなかった頃に見つけた規則で、その頃は大発見だと思ったりもしたのだが、それは類体論のほんの入り口に過ぎなかった。
https://searial.web.fc2.com/aerile_re/takou1.html

問題2

これは、ディリクレの単数定理の証明に出てくる考え方で、このように単数をR^nに埋め込むと
像は$n$次元の格子を成すというのがディリクレの単数定理の主張である。この格子の単位体積が単数基準(regulator)と呼ばれ、類数公式に登場する。(詳しくないので踏み込まない。)
また、複2次体の単数群について、、2次体の単数群の関係パターンをまとめた文献を読んで少し紹介したことがあった。
https://searial.web.fc2.com/aerile_re/sqrt2.html

問題3

この話題は、エタール層$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$$μ_n$について考えていたときに扱ったことがあった。
https://searial.web.fc2.com/aerile_re/etale.html
(今回の問題では$x^4+x^3+x^2+x+1$ではなく$x^5-1$としたので、構造がちょっと増えている。)
実は今年はそんなに数学に触れていなかったのだが、この話題に関係するポストがあって、今年このあたりを振り返りたくなるきっかけとなった。
https://twitter.com/icqk3/status/1712443938169385250

問題4

これは5年前にどこかで $\mathbb{C}[x,y]/(x^2+y^2-1)$ は一意分解整域と知った際に$x^2 \equiv (1-y)(1+y)$ が一見反例に見えて、考えてみたらさらに分解できることに気づいた話題の符号を変えたものである。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12189714997
環の代数的な問題に、幾何的な視点がどう役に立つのかを実感するのに良い話題だと思う。

問題5

これは一般四元数環$K(a,b)$、すなわち$K$-加群 $\{w+xi+yj+zk|\ w,x,y,z\in K\}$に、$i^2=a, j^2=b, k=ij=-ji$の積構造を入れた環の話題である。
$\mathbb{Q}(a,b)$$\mathbb{Q}(a',b')$が同型かどうかは、$ax^2+by^2=1$$p$進数に解を持たない$p$の集合を$P(a,b)$としたときに$P(a,b)=P(a',b')$かどうかで判定できる。これはブラウアー群を通して類体論と関係する深い事実で、以前勉強メモを書いた。 https://searial.web.fc2.com/aerile_re/brauer.html
今回の設定では$(a,b)=(33,35),(a',b')=(-15,77)$$P(a,b)$$P(a',b')$はどちらも$\{3,5,7,11\}$である。(上記のページの途中に具体的な整数の組a,bに対してこの集合を求めるスクリプトを書いた。)
ただし、この問題のように具体的な同型を求めるのに、このあたりの事実を利用する方法があるのかどうかは分からない。

問題6

$p\geq 3$のとき、$p$進数の極大イデアルの加法群$(p)$と主単数の乗法群$1+(p)$の間に同型があって、具体的に$\log(1-x) = -\sum_{k=1}^{\infty}x^k/k$, $\exp(y) = \sum_{k=0}^{\infty}y^k/k!$で与えられる。通常のexpやlogと類似の性質が成り立ち、それを整数の言葉で言い換えたのが今回の問題だった。
応用例として、$u_1^n\equiv u_2 \pmod{p^N}$$nv_1 \equiv v_2 \pmod {p_N}$ に帰着することができる。例えば、$16^n\equiv 6 \pmod{5^4}$となる$n$を以下のように求めることができる(記号を濫用している):$\log(6)\equiv 5-25/2+125/3 \equiv 555 \pmod{5^4}$, $\log(16)\equiv 15-15^2/2+15^3/3\equiv 90 \pmod{5^4}$ なので、$90n\equiv 555 \pmod{5^4}$に帰着して、$n\equiv 27 \pmod{5^3}$

投稿日:20231027
更新日:20231217

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