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大学数学基礎解説
文献あり

Kummerの合同式の証明

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こんにちは,itouです.Kummerの合同式の証明を日本語で解説するサイトがすぐに見つからなかったので,解説します.1を参考にしました.

ベルヌーイ数

ベルヌーイ数$B_n$とは,
\begin{align} \frac{t}{e^t-1}=\sum_{n\geq 0}\frac{B_nt^n}{n!} \quad(|t|<2\pi) \end{align}
によって定義される有理数列である.

オイラーの$\phi$関数

正整数$n$に対し,$\phi(n)$
\begin{align} \phi(n)=n\prod_{p|n}\left(1-\frac{1}{p}\right) \end{align}
と定める.(ただし$\prod_{p|n}$$n$を割り切る素数$p$をわたる総積をとる.)

Kummerの合同式

$N$を正整数,$n,m$$n,m\geq N+2$を満たす偶数とする.$m,n$$p-1$で割り切れず,かつ$n\equiv m(\text{mod} \ \phi(p^{N+1}))$のとき,

\begin{align} \frac{B_n}{n}\equiv \frac{B_m}{m}\quad (\text{mod}\ p^{N+1}) \end{align}
が成立する.

証明

まず補題を示す.

$S(n,k)$ 第2種スターリング数 とする.
\begin{align} (1-2^n)\frac{B_n}{n}=\sum_{k=1}^{n-1}\frac{(-1)^kk!S(n-1,k)}{2^{k+1}} \end{align}
が成立する.

補題の証明

多重対数関数$\rm{Li_s}(z)$
\begin{align} \text{Li}_s(z)=\sum_{k=1}^{\infty} \frac{z^k}{k^s} \end{align}
と定める.

ディリクレのイータ関数を
\begin{align} \eta(s)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^{n-1}}{n^s}=(1-2^{1-s})\zeta(s) \end{align}
と定める.($\zeta(s)$ リーマンゼータ関数 )

$\text{Li}_s(z)$の特殊値の公式
\begin{align} \text{Li}_s(-1)=-\eta_(s) \end{align}
において$s=-r$とすることで

\begin{align} -\eta(-r)=(1-2^{r+1})\frac{B_{r+1}}{r+1}=\text{Li}_{-r}(-1) \end{align}
を得る.(負の整数についてのゼータ関数の表示を用いた.)

さらに多重対数関数についての公式(2)

\begin{align} \text{Li}_{-r}(-x)=\sum_{k=1}^{r}k!S(r,k)\left(\frac{1}{1+x}\right)^{k+1}(-x)^k \end{align}

により,補題は示された.

定理1の証明に入る.
$a$を整数として,$n=m+a\cdot\phi(p^{N+1})$とする.

\begin{align} (-1)^kk!S(n-1,k)&=\sum_{j=0}^{k}(-1)^j\binom{k}{j}j^{n-1}(\text{スターリング数の表示})\\ &=\sum_{j=0}^{k}(-1)^j\binom{k}{j}j^{m+a\cdot\phi(p^{N+1})-1}\\ &\equiv\sum_{j=0}^{k}(-1)^j\binom{k}{j}j^{m-1}\quad(\text{mod}\ p^{N+1})\\ &(\text{オイラーの定理(フェルマーの小定理の一般化)を用いた.})\\ &\equiv(-1)^kk!S(m-1,k)\quad(\text{mod}\ p^{N+1})\\ \end{align}
$m,n\geq N+2$であったことに注意.

さて,これと補題より,

\begin{align} (1-2^n)\frac{B_n}{n}\equiv (1-2^m)\frac{B_m}{m}\quad (\text{mod}\ p^{N+1}) \end{align}
を得る.2は$p$の原始根で$m,n$$p-1$で割り切れないので$ 1-2^n\equiv 1-2^m (\text{mod}\ p^{N+1})$.よって上式の両辺を割ることでKummerの合同式を得る.

感想

法が素数$p$の冪乗になっている合同式をsuper congruenceというらしいです.ところで証明中はである調に変えてみました.こっちの方がいいかも.

謝辞

ここまで読んで下さりありがとうございました.誤植等指摘お願いいたします.

参考文献

[1]
Sumit Kumar Jha, A SHORT PROOF OF KUMMER’S CONGRUENCE FOR THE BERNOULLI NUMBERS, International Institute of Information Technology
[2]
Steven E. Landsburg, Stirling Numbers and Polylogarithms, unpublished note, 2009, http://www.landsburg. com/query.pdf.
投稿日:529
更新日:529
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