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東大数理院試過去問解答例(2021B05)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2021B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2021B05

3次元球面S3をとり、その向きを固定する。次に2次元多様体Σ及びその2次形式ωをとる。ここでC写像f:S3Σがあったとする。このときS3上の1次形式αが存在し、fω=dαを満たしている。このようなαに対して積分
I(α):=S3αdα
を定める。
(1) I(α)αの取り方に依らないことを示せ。
(2) Σ=T2とする。このときT2上の1次形式η1,η2,η3
ω=η1η2+dη3
dη1=dη2=0
を満たすものが存在することを示せ。
(3) Σ=T2のときI(α)=0であることを示せ。

問題を解くに当たってS3及びT2のdeRhamコホモロジーの性質を用いる場合、その性質を明記した上で用いること。例えば上記のαの存在はHdR2(S3,R)=0の帰結として得られる。

  1. 条件を満たすα,βを取ったとする。このときHdR1(S3,R)=0であるから、あるC関数hが存在してdh=αβを満たしている。このとき
    S3(αβ)fω=S3(dh)(dα)=S3d(hdα)=S3hdα=0
    であるから、I(α)αの取り方に依らない。
  2. 初めにT22次元多様体であるから、任意の2次形式は閉形式である。HdR2(T2,R)=Rであり、微分同相R2/Z2T2の下、その生成元はdxdyで生成される。よってある1次形式η3及び実数rが存在して
    ω=rdxdy+dη3
    が成り立っているから、結果が示せた。
  3. T2上の微分形式dx及びdyについて、HdR1(S3,R)=0であるからC関数s,tds=fdx及びdt=fdyを満たすものが存在する。このときf(dxdy)=dsdt=d(sdt)になっているから、ω=dxdyのとき
    I(α)=S3αdα=S3sdtd(sdt)=12S3d(sdtsdt)=0
    がわかる。
    一方ω=dη3の場合を考える。このときfdη3=dfη3であるから
    I(α)=S3fη3d(fη3)=S3f(η3dη3)=12S3f(d(η3η3))=0
    であるからI(α)=0が従う。以上の議論と(2)から、Σ=T2のときはωの取り方に関わらずI(α)=0であることが従う。
投稿日:20231031
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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