院試の数学で、線形代数だけは得意なつもりだった。固有値も対角化も、計算自体は手が止まらない。だから過去問も「線形代数は大丈夫」と後回しにしていた。
本番1か月前、過去問を真面目に解き直して青ざめた。固有値は正しく出している。なのに模範解答と並べると、点が削られそうな箇所がいくつもある。「対角化できる」と書いただけで、なぜできるのかを書いていない。最小多項式も重複度も確認していない。計算は合っているのに、論証が抜けていた。
先輩に答案を見せたら一言だった。「線形代数は"計算"より"判定"で差がつく。対角化可能かどうかの根拠を一行書けていないと、そこで落ちる」。
対角化可能 $\iff$ 各固有値 $\lambda$ について、代数的重複度(固有多項式の重根の位数)と幾何的重複度 $\dim \ker(A - \lambda I)$ が一致する。答案では「固有値を求める → 各固有値で幾何的重複度を計算 → 代数的重複度と一致するので対角化可能」と順序を宣言する。「対角化できる」の一言で済ませない。
幾何的重複度が代数的重複度より小さい固有値があれば対角化不可。そのときは一般化固有空間 $\ker(A - \lambda I)^k$ を使って Jordan 標準形 $J$ に帰着する。答案では「対角化不可と判定 → 一般化固有空間の次元 → Jordan ブロックの構造」と筋を見せる。
最小多項式 $m_A(x)$ は、対角化可能 $\iff$ $m_A(x)$ が重根を持たない、という判定に直結する。固有多項式だけでなく最小多項式まで押さえると、対角化の可否を一手で示せる。
線形代数で落としていたのは計算力ではなく「判定の根拠」だった。固有値を出すのは出発点で、対角化可能性・最小多項式・重複度の一致を一行ずつ宣言する。これだけで、自分の答案を読み返したときに「ここは満点、ここは論証不足」と自分で見えるようになる。
院試の線形代数は、計算が得意でも判定の論証で差がつく。私(TeX64)は院試hub で大学・研究科ごとの年度別オリジナル解答を整備している:
Mathlog の解説と併せて、答案を「読む」で止めず、判定の根拠まで自分の手で再現する練習に使ってほしい。よい院試対策を。