ここでは東大数理の修士課程の院試の2021B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2021B04
なる正整数に対して、環を考える。
(1) は整域であることを示しなさい。
(2) とする。-代数の単射準同型で以下の条件
(i) 分数体の同型を誘導する
(ii) は-加群として有限生成
を満たすものを一つ挙げなさい。
- が既約多項式であることを示せばよい。まずの代数閉包に於いて、の原始乗根をとしたとき、因数分解
が取れる。ここで上記の因数分解の個の素因子のうち、個を掛けたものの(-係数多項式と見たときの)定数項はの型をしている。ここでが既約でないとすると、あるについてかつを満たす必要があるが、条件より、このようなことは起こり得ない。よっては既約であり、は整域である。 - 初めに
を考える。これはwell-definedな環準同型である。次にとする。ここで
と表した(はについての多項式)とき、を代入すると、まずから各の中に於けるの次数をで割った余りは等しく、この余りは項毎に異なる。よってが従うから、は単射である。次にの像はである。ここでであるが、は上整であるから、は有限生成-加群であり、条件(ii)が満たされている。次になる整数について
であるから、の商体はであり条件(i)が満たされている。以上からは所望の条件を満たしている。