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東大数理院試過去問解答例(2020B01)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2020B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2020B01

$F=\mathbb{C}(S,T)$及びその部分体$K=\mathbb{R}(S^2,\frac{T^2}{1+S})$をとり、$F/K$のガロア閉包を$L$とする。

  1. 拡大次数$[L:K]$を求めなさい。
  2. $L/K$の中間体で、$K$$8$次拡大であるものの個数を求めなさい。
  3. (2)の体のうち、$K$上ガロアでなくかつ$\mathbb{C}$を含まないものを一つ挙げなさい。
  1. 初めに$S$$X^2-S^2$の根である。よって$[K(S):K]=2$である。ここで$K(S)=\mathbb{R}(S,T^2)$であるから$[\mathbb{R}(S,T):K(S)]=2$である。また$[F:\mathbb{R}(S,T)]=2$である。また$L$$K$上の既約多項式
    $$ (X^2-T^2)\left(X^2-\frac{1-S}{1+S}T^2\right) $$
    及び$X^2-S^2$の最小分解体なので$L=F(\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}T)$である。特に$[L:K]={\color{red}16}$である。
  2. まず$\mathrm{Gal}(L/K)$の元は
    $$ \sigma_{j,k,l,m}\left(\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}\right)\mapsto (-1)^j\left(\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}\right)^{(-1)^k} $$
    $$ \sigma_{j,k,l}(T)=(-1)^l\alpha_kT $$
    $$ \sigma_{j,k,l,m}(i)=(-1)^mi $$
    で定義されるもので尽くされる。但し$j,k,l,m$$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$の元を走り、更に
    $$ \alpha_{k}:=\begin{cases} 1&(k=0)\\ \sqrt{\frac{1-S}{1+S}}&(k=1) \end{cases} $$
    である。
    $$ \sigma_{j,1,l,m}^2=\sigma_{{0,0,j,0}} $$
    $$ \sigma_{j,0,l,m}^2=\sigma_{0,0,0,0} $$
    であるから、$G=\mathrm{Gal}(L/K)$の位数$2$の元の個数は$4+8-1=11$である。よって所望の体も${\color{red}11}$個である。
  3. $\sigma_{0,1,0,1}$で生成される部分群を考える。まず$L$の元
    $$ \alpha=\left(1+i+\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}-i\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}\right)T $$
    をとったとき、これの$\sigma_{j,1,l,m}$及び$\sigma_{j,0,l,m}$による像は
    $$ \sigma_{j,1,l,m}(\alpha)=\left((-1)^{l+j}+(-1)^{1+j+l+m}i+(-1)^l\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}-(-1)^{1+l+m}i\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}\right)T $$
    $$ \sigma_{j,0,l,m}(\alpha)=\left((-1)^{l}+(-1)^{l+m}i+(-1)^{j+l}\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}-(-1)^{j+l+m}i\sqrt{\frac{1-S}{1+S}}\right)T $$
    であるから、$\mathrm{Gal}(L/K)$の中で$\alpha$を固定するのは$\sigma_{0,1,0,1}$のみである。また$\sigma_{1,1,1,1}$$K(\alpha)$が安定だとすると、$(1+i)T=\frac{1}{2}(\alpha+\sigma_{1,1,1,1}(\alpha))$$\sigma_{0,1,0,1}$で固定されるから矛盾する。よって$K(\alpha)$$\sigma_{1,1,1,1}$で安定でなく、特に$K$上ガロアでない。また$\sigma_{0,k,l,1}$の形の元は$i$を固定しない位数$2$の元である。以上から
    $$ {\color{red}K(\alpha)} $$
    が所望の例になっている。
投稿日:202489
更新日:202489
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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