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東大数理院試過去問解答例(2013B07)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B07の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2013B07

$\mathbb{R}^3$の相異なる平面$P_1,\cdots,P_5$が以下の条件を満たすように配置されているとする。
(i) 相異なる$2$つの平面の共通部分は直線である。
(ii) 相異なる$3$つの平面の共通部分は一点集合である。
(iii) 相異なる$4$つの平面の共通部分は空集合である。
ここで$X:=\bigcup_{i=1}^5P_i$$\mathbb{R}^3$の部分空間として部分位相を入れる。
(1) $X$のEuler標数を求めよ。
(2) $X$は単連結であることを示せ。
(3) 整係数ホモロジー群$H_\ast(X,\mathbb{Z})$を求めよ。

  1. まず平面$P_i$上に於いて他の平面との共通部分になっている直線が互いに平行でないように引かれている。よってこの直線の和集合を$L_i$とすると、$P_i\backslash L_i$$11$個の連結成分からなる。よって$X\backslash(\bigcup_{i,j}P_i\cap P_j)$上の連結成分の個数は$55$枚である。
    次に$2$つの平面の共通部分である直線は$3$枚の平面で交わっているから、$P_i\cap P_j$から他の$3$枚の平面との共通部分を除いた集合は$4$本の連結成分からなる。よって$\bigcup_{i,j}P_i\cap P_j\backslash(\bigcap_{i,j,k}P_i\cap P_j\cap P_k)$の連結成分の個数は$4_{5}C_2=40$本である。
    最後に$3$つの平面の共通部分であるような点の個数は$_5C_3=10$個である。
    以上から$X$のEuler標数は$10-40+55=$$25$である。
  2. ここで$X$内の全ての閉曲線は少しずらすことで$\bigcup_{i,j,k}P_i\cap P_j\cap P_k$を経由しないものにホモトープである。よってそのような閉曲線が可縮であることを示せば良い。ここで閉曲線$C$に対して$$S(C):C\cap\left(\bigcup_{i,j}P_i\cap P_j\right)$$とおく。以下$|S(C)|=n$なる閉曲線$C$をとる。今、この閉路が平面$P_{i}$から境界$L_{ij}$を越えて$P_j$に侵入し、境界$L_{jk}$を経て$P_j$にでていくような経路であったとする。それぞれの境界とこの閉路の交叉する点を$A_{ij}$及び$A_{jk}$とする。このとき$A_{ij}$から$L_{ij}$に沿って$P_i\cap P_j\cap P_k$上から$L_{jk}$に沿って$A_{jk}$に至る経路$D$を考え、$C$$A_{ij}$から$A_{jk}$への経路を$D$に置き換えた閉路$C'$を考える。次に$C$上の$A_{ij}$からわずかに$P_i$寄りの点を$B_{ij}$$P_{ik}$上の点$B_{ik}$$C$上の$A_{jk}$からわずかに$P_k$寄りの点を$B_{jk}$とし、線分$B_{ij}B_{ik}$$B_{ik}B_{jk}$の和集合$D'$をとり、$C'$上の$P_{ij}$を含む弧$B_{ij}B_{jk}$$D'$に置き換えたものを$C''$とおく。$C'$$C''$はホモトープである。また構成から$|S(C'')|\leq n-1$であるから、帰納法により任意の閉路は$|S(C)|= 0$なる$C$にホモトープである。これは一平面上の閉路なので一点にホモトープであるから、これにより$X$の単連結性が従う。
  3. まず$\ast\geq3$については$H_\ast(X,\mathbb{Z})=0$である。次に(2)から$H_1(X,\mathbb{Z})=0$である。次に$X$は連結であるから$H_0(X,\mathbb{Z})=\mathbb{Z}$である。次にEuler標数は$$\sum_{i=0}^\infty(-1)^i\mathrm{rank}H_i(X,\mathbb{Z})$$で表されるから、$H_2(X,\mathbb{Z})$$\mathbb{Z}$-加群としてのランクは$24$である。またホモロジー群の定義及び$X$が平面の和集合であることから$H_2(X,\mathbb{Z})$は自由$\mathbb{Z}$-加群の部分加群であり、特に$H_2(X,\mathbb{Z})$は捩れ部分を持たない。以上の議論から
    $$ {\color{red} H_\ast(X,\mathbb{Z})=\begin{cases} 0&(\ast\neq0,2)\\ \mathbb{Z}&(\ast=0)\\ \mathbb{Z}^{24}&(\ast=2) \end{cases}} $$
    である。
投稿日:20231020
更新日:2023127

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佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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