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大学数学基礎解説
文献あり

面積分学習記録 (2)【ガウスの発散定理】

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2-0. 全体の概要

この記事は,前回の『面積分学習記録 (1)』の続きです。

今回は『ガウスの発散定理』の証明が目標です。

以下では,特に断りのない限り,NZ[2,) とします。

また,ΩRN を有界領域,ΩRNΩ の境界とし,Ω:=ΩΩ とします。

関数のグラフの定義については再掲します:

(関数のグラフ)

DRN1 を空でない集合とする。

  1. f:DR を実数値関数とする。このとき,集合 G(D;f)D×f(D) を,
    G(D;f):={(x,f(x)) | xD}
    として定める。

  2. f1,,fN1,fN:DR を実数値関数とする。このとき,集合 G(D;f1,,fN1,fN)j=1N1fj(D)×fN(D) を,
    G(D;f1,,fN1,fN):={(f1(x),,fN1(x),fN(x)) | xD}
    として定める。

2-1. 境界の滑らかさ

kN{0}{}{ω} とする。

(境界の平滑性)

ΩCk 級境界 であるということを,
ΓΩ : ,DRN1,γCk(D),σ:RNRN:合同変換  ;σ(Γ)=G(D;γ)
として定める。

なお,境界が極座標などで表現されるような場合,ΩCk 性は以下のようになる:

(境界の平滑性)

ΩCk 級境界 であるということを,

ΓΩ : ,VRN1,γ1,,γN1,γNCk(V) ;Γ=G(V;γ1,,γN1,γN)
として定める。

境界の滑らかさの定義は,前回内容の『曲面の平滑性』の定義を踏襲している。

2-2. 単位法ベクトルと方向(外向き/内向き)

ΩC1 級境界とし,x0Ω を任意の点 (ベクトル) とする。

ここで,νRN を単位ベクトルとし,x0 を含む十分小さい閉近傍を ΓΩ とする。

このとき,ある DRN1,  γC1(D),  合同変換  σ:RNRN によって σ(Γ)=G(D;γ) と表される。

また,x~0:=σ(x0),  Γ~:=σ(Γ) とし,σ に対応する回転行列を RRN×N とする。

さらに,ν~(x~0)RN を単位ベクトルとし,法ベクトルである条件 ν~(x~0)Tx~0(Γ~) を満たすとする。

(つまり,ベクトル値関数 ν~:Γ~RN は単位法ベクトル場である。)

(単位法ベクトルと方向 (外向き/内向き) )

条件 ν=R1ν~(x~0) を仮定する。このとき ν を,x0 における Ω 上の単位法ベクトル と呼ぶ。
また,

  1. νΩ に対して 外向き であるということを,
    r>0 ;ε(0,r),x0+ενRNΩ
    を満たすこととして定める;

  2. νΩ に対して 内向き であるということを,
    r>0 ;ε(0,r),x0+ενΩ
    を満たすこととして定める。

  1. R1ν~(x~0) は単位ベクトルである。実際に,
    |R1ν~(x~0)|2=(R1ν~(x~0))T(R1ν~(x~0))={ν~(x~0)T(R1)T}(R1ν~(x~0))={ν~(x~0)T(RT)T}(R1ν~(x~0))=ν~(x~0)T(RR1) ν~(x~0)=ν~(x~0)T EN ν~(x~0)=ν~(x~0)T ν~(x~0)=|ν~(x~0)|2=1.

  2. ν=R1ν~(x~0) のとき,x0 における Ω 上の接平面 Tx0(Ω) は,
    Tx0(Ω)={ xRN | ν(xx0)=0 }
    と表される。

2-3. Gauss–Green の定理

(Gauss–Green の定理)

ΩC1 級境界,ν:=(ν1,,νN):ΩRNΩ 上の外向き単位法ベクトル場とし,uC1(Ω) とする。
このとき,各 j{1,,N} に対して,
Ωuxjdx=Ωuνj dS
が成り立つ。(ここで,x=(x1,,xN),  dx=dx1dxN である。)

  1. ある有界閉集合 KRN および ψC0(RN) として,
    ΩKかつ{ψ(Ω)={1}ψ(KΩ)=[0,1)ψ(RNK)={0}
    を満たすものを取り,uRN への拡張 u~:=u|RN:RNR を,
    u~(x):=ψ(x)u(x)={u(x)( xΩ )ψ(x)u(x)( xKΩ )0( xRNK )( xRN )
    として定める。このとき,
    u~C01(RN).

  2. Ω は有界閉集合かつ C1 級なので,
    mZ[1,),Γ1,,ΓmΩ:十分小さい、空でない、単連結な有界閉集合 ;i{1,,m},DiRN1,γiC1(Di),σi:RNRN:合同変換 ;[ σi(Γi)=G(Di;γi)かつi=1mΓi=Ω ].
    ここで,各 i{1,,m} に対して,σi に対応する回転行列を,
    Ri=[R1i    RNi]=[R1,1iR1,NiRN,1iRN,Ni]RN×N
    とする。

  3. 関数 γ:RN1R を,
    γ(x):={γ1(x)( xD1 )γm(x)( xDm )0( xRN1i=1mDi )( xRN1 )
    と定める。
    また,各 i{1,,m} に対して,法ベクトル場 νi:=(ν1i,,νNi):σi(Γi)R を,
    νi(y)=[ν1i(y)νNi(y)]:=1|yγ(y)|2+1[yγ(y)1]( y=(y,yN)σi(Γi) )
    と定める。

    このとき,ある i0{1,,m} を選んだときに,
    yσi0(Γi0),xi0Γi0 ;(Ri0)1νi0(y)=ν(xi0)
    となる場合は,σi0 を取り直して,
    yσi0(Γi0),xi0Γi0 ;(Ri0)1νi0(y)=ν(xi0)
    となるようにする。

    ここで,Ri0 は正規行列であることから,
    yσi0(Γi0),xi0Γi0 ;(Ri0)Tνi0(y)=(Ri0)1νi0(y)=ν(xi0).

  4. i{1,,m} に対して,
    Ui:={(x,xN)Di×R | xNγ(x)},Ωi:=σi1(Uiσi(Ω))
    と定める。

    Ω=i=1mΩi であることを示す。

    まず,xΩ が与えられたとする。このとき,ある適当な i1{1,,m} を取れば,
    {σi1(x)σi1(Ω)x~Di1 ;x~N(, γ(x~)] ;σi1(x)=(x~,x~N)Ui1
    となるので,
    σi1(x)Ui1σi1(Ω).
    ゆえに,
    xσi11(Ui1σi1(Ω))=Ωi1i=1mΩi
    となるので,
    Ωi=1mΩi.
    次に,yi=1mΩi が与えられたとする。このとき,
    i2{1,,m} ;yΩi2
    となるので,
    σi2(y)σi2(Ωi2)=Ui2σi2(Ω)σi2(Ω).
    ゆえに,
    yσi21(σi2(Ω))=Ω
    となるので,
    Ωi=1mΩi.
    以上のことから,Ω=i=1mΩi である。

  5. suppΩ(u)Ω の場合を考える。各 j{1,,N} に対して,
    Ωuxjdx=Ωu~xjdx=RNu~xjdx=RN1dx^u~xj(x)dxj( x^:=(x1,,xj1,xj+1,,xN) )=RN1[u~(x)]xj=xj=dx^=RN10 dx^=0,Ωuνj dS=Ω0νj dS=0
    となるので,
    Ωuxjdx=0=Ωuνj dS.

  6. 次に,suppΩ(u)Ω の場合を考える。

    ある有限な実数値関数列 (ηi)i=1mC(RN){1,,m} で,
    {ηi(RN)[0,1]supp(ηi)Ωi(i{1,,m})かつi=1mηi(x)=1(xΩ)
    を満たすものを取る。このとき,各 i{1,,m} に対して,
    u~i:=ηiu~
    と置くと,
    u~iC01(RN)かつsupp(u~i)Ωi.

    j{1,,N} に対して,
    Ωuxjdx=Ωuxjdx=Ωu~xjdx=Ω{0u~(x)+1u~xj(x)}dx=Ω{i=1mηixj(x)u~(x)+i=1mηi(x)u~xj(x)}dx=Ωi=1mxj{ηi(x)u~(x)}dx=Ωi=1mu~ixj(x)dx=i=1mΩiu~ixj(x)dx=i=1mΩi(u~iσi1)xj(σi(x))dx
    となるので,各 i{1,,m} に対して,
    vi:=u~iσi1,y:=(y1,,yN)=σi(x)(xΩi)
    とすると,
    Ωuxjdx=i=1mσi(Ωi)k=1Nviykykxj|det(xy)|dy=i=1mσi(Ωi)k=1NviykRk,ji|det((Ri)1)|dy=i=1mk=1Nσi(Ωi)viykRk,ji1dy=i=1m(k=1N1σi(Ωi)viykRk,jidy+σi(Ωi)viyNRN,jidy).

  7. 以下では,各 j,k{1,,N} および i{1,,m} を任意に固定し,
    Ik,ji:=σi(Ωi)viykRk,jidy
    と置く。ここで,supp(u~i)Ωi であることに注意すると,
    Ik,ji=σi(Ωi)viykRk,jidy=UiviykRk,jidy=Didyγ(y)viyk(y,yN)Rk,jidyN.

    k=N の場合は,
    IN,ji=Didyγ(y)viyN(y,yN)RN,jidyN=Di[vi(y,yN)]yN=yN=γ(y)RN,jidy=Divi(y,γ(y))RN,ji1dy=Divi(y,γ(y))RN,jiνNi(y,γ(y))|yγ(y)|2+1dy=σi(Γi)vi(y,γ(y))[R1,ji    RN,ji][0νNi(y,γ(y))]dS(y,γ(y))=σi(Γi)vi(y)(Rji)T[0νNi(y)]dS(y).

    また,k<N の場合は,Ik,ji において,
    yN=γ(y)+s
    と変数変換すると,
    dyN=ds,<s0
    となり,
    wi(y,s):=vi(y,γ(y)+s)
    と置くと,
    wiyk(y,s)=yk{vi(y,γ(y)+s)}=p=1N1viypypyk+viyNyNyk=viyk+viyNγyk(y)
    となるので,
    Ik,ji=Didyγ(y)viyk(y,yN)Rk,jidyN=Didy0{wiyk(y,s)viyNγyk(y)}Rk,jids=Didy0wiyk(y,s)Rk,jids+Didy0viyN{γyk(y)}Rk,jids.
    ゆえに,
    J1:=Didy0wiyk(y,s)Rk,jids,J2:=Didy0viyN{γyk(y)}Rk,jids
    と置き,e1,,eNRN 内における基本ベクトルとすると,
    J1=RNwiyk(y,s)Rk,jidyds=RNwiyk(y)Rk,jidy=RN1[wi(y)]yk=yk=Rk,jidy^( y^:=(y1,,yk1,yk+1,,yN) )=RN10Rk,jidy^=0,J2=Didyγ(y)viyN(y,yN){γyk(y)}Rk,jidyN=Divi(y,γ(y)){γyk(y)}Rk,jidy=Divi(y,γ(y))Rk,jiνki(y,γ(y))|yγ(y)|2+1dy=σi(Γi)vi(y,γ(y)){[R1,ji    RN,ji]νki(y,γ(y))ek}dS(y,γ(y))=σi(Γi)vi(y){(Rji)Tνki(y)ek}dS(y)
    となるので,
    Ik,ji=J1+J2=σi(Γi)vi(y){(Rji)Tνki(y)ek}dS(y).

  8. よって,
    k=1NIk,ji=k=1N1Ik,ji+IN,ji=k=1N1σi(Γi)vi(y){(Rji)Tνki(y)ek}dS(y)+σi(Γi)vi(y){(Rji)TνNi(y)eN}dS(y)=σi(Γi)vi(y){(Rji)Tνi(y)}dS(y)
    となるので,
    Ωuxjdx=i=1m(k=1NIk,ji)=i=1mσi(Γi)vi(y){(Rji)Tνi(y)}dS(y)=i=1mσi(Γi)u~i(σi1(y)){(Rji)Tνi(y)}dS(y)=i=1mΓiu~i(x)νj(x)dS(x)(面積分の定義 および (Ri)Tνi(y)=ν(x) より)=Ωi=1mu~i(x)νj(x)dS(x)=Ωi=1mηi(x){u~(x)νj(x)}dS(x)=Ωu~νjdS=ΩuνjdS.

  9. したがって,以上のことから,
    Ωuxjdx=ΩuνjdS
    が成り立つ。

2-4. 勾配定理とガウスの発散定理

Gauss–Green の定理から,次の定理の成立が分かる:

(勾配定理)

ΩC1 級境界,ν:ΩRNΩ 上の外向き単位法ベクトル場とし,uC1(Ω) とする。
このとき,
Ωudx=ΩuνdS
が成り立つ。

明らかに,Gauss–Green の定理と勾配定理は同値である。

また,Gauss–Green の定理から,次の定理が証明できる:

(ガウスの発散定理)

ΩC1 級境界,ν:ΩRNΩ 上の外向き単位法ベクトル場とし,uC1(Ω;RN) とする。
このとき,
Ωudx=ΩuνdS
が成り立つ。

u:=(u1,,uN),  ν:=(ν1,,νN) とする。このとき,Gauss–Green の定理から,
Ωudx=Ωk=1Nukxkdx=k=1NΩukxkdx=k=1NΩukνkdS=Ωk=1NukνkdS=ΩuνdS.

ガウスの発散定理から勾配定理が導出される。

ΩC1 級境界,ν:ΩRNΩ 上の外向き単位法ベクトル場とし,uC1(Ω) とする。

aRN{0} を任意の定ベクトルとする。このとき,ガウスの発散定理から,
aΩudx=Ωaudx=Ω(ua)dx=Ω(ua)νdS=Ωa(uν)dS=aΩuνdS
となるので,
a(ΩudxΩuνdS)=0.
ゆえに,ΩudxΩuνdSa に依存しないことから,a の任意性より,
ΩudxΩuνdS=0.

2-5. 感想

Gauss–Green の定理の証明については,例えば参考文献 [4], [5] では触れられています。(難解)

ベクトル解析の延長で証明したかったので,面積分の定義からして傍流になってしまいましたが,測度論や多様体論に踏み込まなかったのは,粗削りながら個人的には良かった感じがあります。

なお,過不足やミスがあれば修正していきます。

参考文献

[1]
松坂 和夫, 『解析入門(下)』, (数学入門シリーズ 6), 岩波書店, 2018
[2]
栗田 稔, 『微分形式とその応用 ―曲線・曲面から解析力学まで―』(新装版), 現代数学社, 2019
[3]
Lawrence C. Evans, Partial Differential Equations (2nd ed.), (The Graduate Studies in Mathematics, 19), American Mathematical Society, 2010
[4]
Hans Wilhelm Alt, Linear Functional Analysis: An Application-Oriented Introduction (Translated by Robert Nürnberg), (Universitext), Springer, 2016
[5]
Lawrence C. Evans, Ronald F. Gariepy, Measure Theory and Fine Properties of Functions, Revised Edition, (Textbooks in Mathematics), Chapman and Hall/CRC, 2015
投稿日:219
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『ある分野ではよく知られた道具なのに何故か証明を見たことがない』みたいな定理・公式を証明するのが好き。重箱の隅をつつくスキマ産業業者。

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  1. 2-0. 全体の概要
  2. 2-1. 境界の滑らかさ
  3. 2-2. 単位法ベクトルと方向(外向き/内向き)
  4. 2-3. Gauss–Green の定理
  5. 2-4. 勾配定理とガウスの発散定理
  6. 2-5. 感想
  7. 参考文献