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[DSP] 基底信号による展開を考える

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1.今回の目的

基底展開の可能性

x(n)Cを離散時間信号とする.このとき,基底信号ek(n)Cを用いて,任意の信号x(n)
(A)x(n)=k=akek(n)
と展開することはできるか?

今だけの名称として,この展開を基底展開,係数ak基底係数と呼ぶことにしよう.

2.直交性の定義

まず,ek(n)が"直交性を持つ"ということは,次の式が成り立つことである.

直交性

信号ek(n)直交性を持つことは,次の式が成り立つことに同値である.
es(n)et(n)=δst={1(s=t)0(st) ,|ek(n)|=1.

ただし,δstはKronecker(クロネッカー)の記号である.

3.内積の定義

さらに,離散時間信号が作る関数空間に対して,次のように内積を定めよう.

内積の定義

離散時間信号x1(n), x2(n)に対して,内積,を次で定める.
x1(n),x2(n)=n=x1(n)x2(n)

この定義が内積の公理を満たしているかどうかは今回議論しないが,あとで追記するかも.

4.基底展開を考える

離散信号x(n)が(A)式;
(A)x(n)=k=akek(n)
のように基底展開できることを仮定して,係数akを求めてみよう.

基本的な考えとしては,"①基底信号の直交性を利用して,②両辺と成分との内積をとり,③各成分(各係数)を取り出す"という方針である.実際にやってみよう.

まずは,x(n)e0(n)との内積をとってみると,
x(n),e0(n)=n=x(n)e0(n)=n={k=akek(n)}e0(n)=n={k=akek(n)e0(n)}

ここで,式中のek(n)e0(n)は,直交性により,
ek(n)e0(n)={1(k=0)0(k0)
となることがわかるだろうか.これにより,kに依存する総和の部分は,
k=akek(n)e0(n)=+a1e1(n)e0(n)+a0e0(n)e0(n)+a1e1(n)e0(n)+=a01=a0.

よって,内積の値は,
x(n),e0(n)=n=a0=a0.

つまり,
a0=x(n),e0(n)
であることがわかった.

同様の計算により,基底係数akについて次のような式が成り立つ.
ak=x(n),ek(n)=n=x(n)ek(n).

これを用いれば,基底展開に関する次の定義(予想->定義)を得る.

基底展開

任意の離散時間信号x(n)Cは,基底信号ek(n)Cを用いて,
x(n)=k=akek(n)
と展開することができる.この展開を基底展開という.ただし,
ak=x(n),ek(n)=n=x(n)ek(n)
とし,この係数を基底係数という.

5.実例

実際の例を見てみよう.

基底展開の例題

信号
x(n)=δ(n)={1(n=0)0(n0)
を,基底信号
ek(n)={ej2πnk/N(0n<N)0(otherwise)
で基底展開せよ.ただし,N=3, k=0,1,2とする.

回答: まず,基底係数を求めると,
ak=x(n),ek(n)=n=δ(n)ej2πnk/3
となるが,デルタ関数の性質により,n=0のとき以外はδ(n)=0となって消えてしまうから,
ak=δ(0)ej2π0k/3=1.

よって,基底係数は任意のkに対してak=1となり,基底展開は次のようになる.
x(n)=k=akek(n)=k=02ek(n)=e0(n)+e1(n)+e2(n).

投稿日:202375
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投稿者

最近はめっぽう物理屋してます.相対論/量子力学などに興味あり.本職は工学屋なのでディジタル信号処理なども呟くかも.

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