環の局所化と基本的な定理を述べる.証明は行間を埋めるように書いた.
以下環は可換環とし,を含むとする.で環の可逆元全体とする.
積閉集合
環の部分集合が積閉集合であるとは次の条件を満たすこととする.
局所化
を環の積閉集合とし,積集合に次のようにして同値関係を定める,
このは実際に同値関係となり,それによる商集合を考え,同値類をで表す.
演算を次のように定める,
この演算はwell-definedであり,を零元,を単位元とする可換環になる.
この環のとこをのによる局所化と呼び,と書く.
演算のwell-defined性を確かめるにはの元としてをとり,であることを確かめればよい.積も同様である.
次の定理は極大イデアルの存在性から導かれる.
を環,を環のイデアルとする.このときを含むの極大イデアルが存在する.
以下局所化の定理を確認していく.
を環,による局所化をとする.準同型写像を考える.(は一般には単射でない)
局所化の普遍性
を環,のによる局所化をとする.は準同型写像で,任意の元に対してはの可逆元に移されるものとする.このとき準同型写像で,を満たすものが唯一存在する.
もしそのようなが存在するならば,となることからはによって一意的に存在する.
次に存在性について.とすると,これはwell-definedな準同型写像である.なぜなら,とすると,となるが存在する.ゆえに.,とはの可逆元なので,.
さらにから可換性も成り立つ.
としてとすると,は積閉集合になる.このときをと書く.
を素イデアルとすると,は積閉集合になる.なのでのによる局所化を考えることができ,それをと表してのによる局所化と呼ぶ.
最後に局所化が局所環であることを確かめる.
()
をの唯一の極大イデアルとする.もしがであるならとなりであるが,極大イデアルの定義に反する.したがって,である.一方が生成するイデアルはと等しくならないため,定理1からイデアルは極大イデアルに含まれる.すなわちからが成り立つ.よってはイデアルである.
()
をのイデアルとし,それをと書くことにする.よりである.なる任意のイデアルをとる.が生成するイデアルはを満たすので,はを含まない.よってとなる.は任意にとっていたのでは極大イデアルになり,もし以外の極大イデアルを持つなら上記の議論からとなるため極大イデアルはただ一つである.
を環の素イデアルとすると,局所化は局所環で唯一の極大イデアルはと書ける.
初めにはイデアルである.次にであることを示す.
において(,)が可逆元であったとする.がその可逆元だとするととなる.よってあるが存在してとなる.は素イデアルで,だから,.よって.
逆に,すなわちならの逆元はであるためとなり等号が言えた.
と書き替えてみると,となることが分かる.さらに命題3とその証明()からは極大イデアルであり,は局所環である.